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虫愛でる爺|池田 二三高

どんなコラム?
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
プロフィール
1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

スギタニモンキリガ ツバキの花を食害する害虫

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2012年1月17日
Sugitania lepida imago

スギタニモンキリガの成虫

Sugitania lepida egg

ヤブツバキの蕾に産み付けられた卵

Sugitania lepida larva

ヤブツバキの花を食べる幼虫

Camellia japonica

雄しべ雌しべが発達していないヤブツバキの園芸品種。スギタニモンキリガの食害を受けにくい

 新年を迎えると、春を告げる花の開くのが待たれますが、代表的な花の一つにヤブツバキがあります。本来のヤブツバキの花弁は一重で赤く、内側には黄色の大きな葯を持った雄しべがあります。しかし、改良された多くの園芸品種も身近に見られるようになりました。

 このヤブツバキの花を好んで食べる害虫にスギタニモンキリガがいます。幼虫は主に雄しべと雌しべを食べ、時に花弁もわずかに食べますが、葉を食べることは全くありません。このため園芸品種にありがちな、雄しべが貧弱な花や八重咲きの花には発生しません。

 昆虫の餌はほとんどが植物ですが、花を食べる種類は稀です。花弁には幼虫の生育に適する栄養が不足しているのでしょうか、あまり食べません。食べたとしても一時的で、ふつうは雄しべや雌しべのほかに、その後伸びた莢や新芽も食べて大きくなります。ツバキの花だけで成熟するスギタニモンキリガは、食性から考えると非常に珍しい種類と言うことができます。

 さらに珍しい性質は、多くの生き物達が冬の寒さに成長を止めている時期に、幼虫が成長することです。成虫は1年に1回、初冬に発生し膨らみ始めたヤブツバキの蕾付近に1粒ずつ産卵します。孵化した幼虫は直ちに蕾の中へ中へと潜り食害を始めます。

 蕾は日に日に大きくなっていく時期のため内部はかなりの高温になっていると思われ、中に入った幼虫は花弁に包まれ、外部の低温から逃れて暖かく暮らすことができます。その後、開花とともに急激に伸びた雄しべと雌しべを食べて成熟すると、地中に潜りそのまま夏を越します。秋に蛹化した後、12月に羽化をします。

 ヤブツバキの蕾に潜り、それを食べるという方法で冬の寒さを逃れて成長する、スギタニモンキリガのしたたかさに敬服です。

(写真をクリックすると、大きな写真が見られます)

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