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虫愛でる爺|池田 二三高

どんなコラム?
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
プロフィール
1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

カンザワハダニ 鮮やかな朱色に変わり越冬

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2012年2月2日
Tetranychus kanzawai Kishida colony

増殖中のカンザワハダニ。成虫の体色は濃い赤色。周りには卵や幼虫がいる

Tetranychus kanzawai Kishida

休眠中のカンザワハダニ。成虫の体色は朱色。周りには卵や幼虫がいない

Tetranychus kanzawai Kishida strawberry

甚大な被害を受けたイチゴ。葉一面に発生して幼虫の吐いた糸で蜘蛛の巣状になる

Tetranychus kanzawai Kishida watermelon

被害を受けたスイカの葉。葉裏から吸汁された部分は退色する

 日頃家庭菜園にいそしんでいる知人が、年末に変なハダニが発生していると言ってイチゴの葉を持ってきました。イチゴは家庭菜園の露地栽培ではほとんど収穫できませんが、スーパーの店頭からイチゴが消えた頃、たった一粒でも収穫できると、味はどうあれ知人は大満足だそうです。生産コストは計り知れないものになりますが、家庭菜園ならではの一品になっているようです。

 そこで持ち込まれた越冬中の葉裏を見ると、明るい朱色の綺麗なハダニがじっとしています。これは、カンザワハダニの越冬成虫です。
 増殖中の成虫の体色は濃い赤色で、えんじ色と言った方が良いかもしれません。12月に入ると、露地のイチゴで発生している成虫や幼虫、卵は低温の影響を受けて徐々に死んでしまいます。しかし、この低温期に上手く成長した一部の成虫だけが、休眠して越冬します。

 この休眠成虫の体色が鮮やかな朱色になり、増殖中の体色とは全く異なるため別種のように見えるのです。休眠個体は葉を吸汁することもなく成長を休んでいるので、周りには幼虫も卵も見られません。じっと静止して気温の高くなるのを待ち続けます。

 知人が変なハダニと見間違えても不思議ではありませんが、この休眠個体に気づいたことは家庭菜園にも力が入っている証拠と思われました。知人は話のタネができたと喜んでいましたが、春からの防除対策は、悩みのタネになりそうです。

 カンザワハダニは、ナミハダニとともにイチゴのほか多くの農作物の主要害虫で、暖地ではどちらかが必ず発生します。ナミハダニは成虫も淡緑色で暖地では普通は休眠をしません。しかし、両種の増殖中の発生生態や被害様相は全く同じです。
 葉色が変色や退色して、生育が阻害されます。成虫や幼虫が多発生すると糸を引いて歩き回るので、葉は蜘蛛の巣状態になりますが、こうなったらイチゴの栽培は終わりです。こうなる前に、殺ダニ剤を散布するしか防除法はありません。

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