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虫愛でる爺|池田 二三高

どんなコラム?
定年退職後も静岡県を中心に各地で害虫防除を指導している筆者が、虫の発生や生態、被害を受けた作物を見事にとらえた写真でつづる虫エッセイ
プロフィール
1941年静岡県生まれ。65~2001年、静岡県農業試験場、病害虫防除所などで農作物害虫の発生生態や防除法の研究に従事

行きずりのアブラムシ ウイルスの運び屋が隠れている

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2012年8月25日
green peach aphid

モモアカアブラムシの無翅虫:普通はハネのない個体のみで増殖する


green peach aphid-winged

モモアカアブラムシの有翅虫:コロニーが大きくなったり、植物の状態が悪くなると成虫にはハネが生えて他の植物へ移動して行く


Yellow2

黄色粘着板を置くと多くの有翅虫が付着する。行きずりのアブラムシの量を把握するにはもっとも良い方法である


radish

モザイク病の大根。葉は濃淡のモザイク症状になり生育不良になる

 アブラムシの口は針状で、これを新芽や新梢など植物の柔らかい部分に差し込み汁液を吸って育ちます。普通は、成虫になっても無翅虫(ハネがない個体)ばかりで増えていきますが、大きなコロニーになるとその中には有翅虫(ハネがある個体)が見られるようになります。

 この有翅虫はそのコロニーから飛び出し別の新芽へ移っていきます。たどり着いた有翅虫は、まず口針をその植物に刺して自分の好みの植物(寄主植物)かどうかを判断します。植物が不適の時は口針を抜いて、また新たな植物を求めて飛び立っていきます。有翅虫は再三、味見のような行動を繰り返し、寄主植物を探しています。

 アブラムシは野菜などのモザイク病のウイルス(CMVなど)を媒介することが知られています。有翅虫がモザイク病の植物を吸汁すると、口針の周りには大量のウイルスが付着します。そのアブラムシが別の植物に口針を刺すたびに、植物にウイルスが残されてゆきます。不思議なことですが、ウイルスはアブラムシの唾液には含まれず口針に付着しています。これが、アブラムシがウイルスを媒介する方法です。

 アブラムシの発生がないと思われる作物畑に黄色の粘着板を置くと、非常に多くのアブラムシが誘引されます。畑には絶えず大量のアブラムシが飛び回っていることになります。
 これらのアブラムシの全てが、その後作物で増える種類ではありませんが、味見をすることは間違いありません。もし、この中にウイルスを持ったアブラムシがいたら大変なことになりますが、一見しただけではどれが保毒虫かはわかりません。また、有翅虫が害虫かかどうか分類することは非常に難しく、私も出来ません。

 病害虫の防除技術に大きな実績を上げた、元奈良県農業試験場の杉浦哲也さんは、どこからともなく飛来してくるこれらの有翅虫を「行きずりのアブラムシ」と呼びました。お聞きしたところ、杉浦さん達が野菜のアブラムシの発生予察を検討していた1969年から使い始めた言葉だそうですが、今も防除指導者の中では使われています。行きずりのアブラムシの絶対量が多ければ、ウイルスを持った保毒虫も多くなるはずです。

 畑で種子が発芽したり、苗を植えたりすると、直ぐに行きずりのアブラムシが飛来してきます。特に野菜や花はモザイク病に弱いので、どのテキストにも、アブラムシ対策は播種前、定植前から始めようと書いてあるのはこうした理由です。行きずりのアブラムシを甘く見てはいけません。
(写真をクリックすると、大きな写真が見られます)

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