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新・斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

どんなコラム?
残留農薬分析はこの30年間で急速な進歩をとげたが、まだまだその成果を活かしきれていない。このコラムでは残留農薬分析を中心にその意味するものを伝えたい
プロフィール
愛知県衛研や東海コープ等で食品分析に40年近く従事。2015年度より日本農薬学会レギュラトリーサイエンス研究会にも関わる

マルハニチロの冷凍食品4種から高濃度の殺虫剤マラチオン検出

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2013年12月30日

 12月29日夕、マルハニチロホールディングスの子会社、アクリフーズの販売した冷凍食品4品5検体から殺虫剤マラチオン(商品名マラソン)が最大で15,000ppm(1.5%)検出され、子会社のアグリフーズ群馬工場で生産された90品目630万袋を回収するというニュースが流れた。15,000ppmが検出されたのはコーンクリームコロッケである。
 マルハニチロホールディングスもプレスリリースを出した。

 毎日新聞の報道によれば、最初11月13日にミックスピザを食べた消費者から「石油・機械油のようなにおいがする」と苦情が寄せられ外部機関に検査を依頼。アグリフーズは9月に設備改修工事をしたので、ペンキ類が混入したとみていて、農薬検査が遅れ、最初の苦情から発表まで1か月半かかったとのこと。

 原因は調査中で、意図的混入もありうると認めたうえで群馬県警にも相談中で、原材料に農薬が残留していた可能性も含め慎重に調査する考えとのこと。
 毒性の専門家の内藤裕史・筑波大名誉教授、吉田武美・昭和大名誉教授も、材料に残留していたのではなく、加工や輸送、販売などの過程で人為的に混入させられた可能性が高い、中国製冷凍餃子事件を彷彿とさせるとのコメントを出されている。毒性学の専門家ではないが、そうではないかと私も思う。

 現時点でそう判断する理由としては、
1.食品中に残留する農薬の検査結果で、有機リン系殺虫剤そのものの検出事例がかなり下がっており、マラチオンも同様な検出傾向にある。ちなみに今は、検出される殺虫剤はネオニコチノイド系農薬の時代である。

2.マラチオン乳剤50%を1000倍希釈して作物に散布したとすると、500ppmが散布濃度であり、15,000ppm(1.5%)のものを散布すると、作物に薬害が出てしまう。1.5%という濃度は原液が食材で希釈されたくらいの濃度であり、原材料の異なる食品から検出されており、原材料の残留農薬の可能性はない。

3.家庭園芸では有機リン系殺虫剤は安価でもありスミチオンと並んでマラチオン(マラソン)は身近な薬剤でもある。

4.幸いなことに今回は、冷凍餃子のようにニラなど硫黄成分が多い食材ではなく、ミックスピザなどの食品で問題となった。これらの食品で高濃度にマラチオンが存在した場合、構造の中に2つの硫黄原子を含むマラチオンはそれなりに臭いもするので、溶剤の臭いも含め苦情として上がってきやすかったのだろう。

 新聞記事にもあるが、ありえないことが発生するとどうしても、その直接のお申し出である「石油・機械油のようなにおいがする」に関心がいき、外部機関に依頼分析を頼む場合、その項目の検査を依頼する。頼まれた方はそれ以外のことは余り考えないので、その検査項目に集中した特化した検査となる。その結果、農薬にたどり着くのがかなり遅れる。

 食べられた方に中毒症状が出ていれば、また変わった対応をしたかもしれないが。冷凍餃子事件の時、危機管理として、ある程度の広がりをもって調査することを教訓として学んだはずだが、残念ながらなかなか共有できていない状況を実感させられた。

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