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新・斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

どんなコラム?
残留農薬分析はこの30年間で急速な進歩をとげたが、まだまだその成果を活かしきれていない。このコラムでは残留農薬分析を中心にその意味するものを伝えたい
プロフィール
愛知県衛研や東海コープ等で食品分析に40年近く従事。2015年度より日本農薬学会レギュラトリーサイエンス研究会にも関わる

モモの皮、むくべきか、むかざるべきか、防かび剤ではそれが問題だ

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2018年10月24日

 平成30年7月3日付厚生労働省大臣官房より「食品衛生法施行規則の一部を改正する省令及び食品、添加物などの規格基準の一部を改正する件について」が通知された。規則の改正は日常茶飯事であり関心のある方しか見ないが、その中に食品添加物として防かび剤プロピコナゾールの記述があった。

●プロピコナゾールとは

 プロピコナゾールはトリアゾール系浸透性殺菌剤として1990年に登録され穀類等に使用されている農薬である。菌類の細胞膜を構成するエルゴステロール生合成を阻害して、殺菌活性を示す。実は、エルゴステロールは紫外線が当たると構造内のB環が解列してビタミンD2となる物質でもある。十分光に当たったシイタケも菌類だから、エルゴステルールを多く含み、ビタミンD2が多いといわれる。

 今回の通知で、もともと農薬として使われているプロピコナゾールが防かび剤に追加された。その背景には、防かび剤を長年使用していると耐性菌の問題が発生し、使用薬剤の変更が必要となることがある。従来使用されているイマザリルも耐性菌などが発生し、フルジオキソニルとプロピコナゾールを併用すると効果が出るという報告もあり、今回の適用が進められてきた。

 しかし、実際のところ、プロピコナゾールは輸入オレンジなどで「フライング」をしている。H28年の神奈川県の調査で米国産オレンジから1.28ppmされ、当時は残留基準(農薬として)が0.05ppmであったので基準違反として回収された。また、昨年9月に南アフリカ産オレンジから輸入者の自主検査で3.6ppm検出され、回収されている。海外ではすでにポストハーベスト農薬として使用されている実態もあり、国内での法整備も急がれていた。

●かんきつ類の基準が0.05ppmから8ppmへ

 今回の法改正により、かんきつ類の基準は0.05ppmから8ppmとなったが、皮をむくミカンは0.05ppmとそのままだ。モモ、おうとうなどは1.0ppmから4ppmとなり、防かび剤対応に改正された。食品添加物として記述は、それぞれ残存量0.008g/kg以下、0.004ℊ/kg以下となる。昔なら基準値を160倍も緩和したら大きな話題になったが、実態が理解されるようになったのか?関心が薄れたのか?(多分後者)、大きな話題にはならなかった。

平成30年7月3日付厚労省通知より抜粋

 防かび剤プロピコナゾール使用基準(添加物なので残留基準という言葉ではない)については、

⑴ プロピコナゾールの使用に当たっては、適切な製造工程管理を行い、食品中で目的とする効果を得る上で必要とされる量を超えないものとすること。

⑵ 今回プロピコナゾールについて使用基準を設定した食品のうち、おうとうについては果梗及び種子を除去した果実全体に、あんず、すもも、ネクタリン及びももについては種子を除去した果実全体に、かんきつ類(みかんを除く。)については果実全体に、それぞれ適用するものとすること。

と記載されている。

●分析部位が農薬と添加物では違う

 ピリメタミルが防かび剤として指定されたときも、「ももでは他の農薬と異なり皮ごと検査という分析部位が変更された」と書いたが、今回のプロピコナゾールでも「種子を除去した果実全体」とあり、同様の分析部位となった。ももでは防かび剤と残留農薬(果皮及び種子を除去)の分析部位は異なるのである。

 当面は防かび剤の検出事例があるかんきつ類は「全果で検査」なので問題はないが、今後、輸入果実などで、ももなどのような検体が来た場合、まずは皮をむいて残留農薬の検査を行い、微量でもプロピコナゾールなどが出た場合は皮ごとの検査で確認するという方法をとるか、最初からむいた皮は別検体として検査するか、担当者泣かせの防かび剤・農薬である。

 分析部位の全体の流れとしては、今年2月リンゴの分析部位が従来は果梗、芯、花落ち部分を除去から果梗だけ除去する形や、9月にはカカオ豆が外皮を取る形などCodex検査部位に近い形での整合性がとられつつある。近い将来、かんきつ類の中でも皮をむくみかんやキウィー、スイカ、メロン等も皮ごとを分析部位とする時代になるかも。

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