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新・斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

どんなコラム?
残留農薬分析はこの30年間で急速な進歩をとげたが、まだまだその成果を活かしきれていない。このコラムでは残留農薬分析を中心にその意味するものを伝えたい
プロフィール
愛知県衛研や東海コープ等で食品分析に40年近く従事。2015年度より日本農薬学会レギュラトリーサイエンス研究会にも関わる

新聞報道で伝えてほしいこと

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2012年6月4日

 少し前の3月の話になるが、アサリ原料を使用したアサリ水煮缶、殻付きあさり、佃煮などから農薬プロメトリンが基準値を超えて検出されたので回収返金するとい言う報道があった。回収・返金した大手メーカーは多かったが、一度に報道され、それ以降の報道はされなかったので記憶に残っていない方もいると思う。
 中国産アサリから除草剤のプロメトリンが基準値(一律基準0.01ppm)を超えて最大0.075ppm、自主検査で検出されたため、回収返金するというものであった。
日本生活協同組合連合会プレスリリース)

 2000年5月に中国から輸入されたハモから、除草剤のトロフルラリンが基準値(一律基準ではなくEUの基準の0.001ppmが適用)を超えて2回、0.007ppmと0.008ppm検出されたため、命令検査になった事例がある。同年11月には、ベトナムから輸入されたエビからトリフルラリンが検出され違反となる事例も発生した。原因は養殖池(湾)で藻の除去に使用されたとのことであった。

 日本国内でも06年、宍道湖のシジミに周辺の水田で使用された除草剤ベンチオカーブが残留して出荷できない事件があり、その後一律基準ではない新たな基準が設定され運用されている。このように、環境汚染を含め、魚介類は除草剤とは無関係という認識ではやっていけない状況に来ている。

 では、どうして中国産アサリから除草剤プロメトリンが検出されたのか?
 本当の原因はよくわからない。だが、私の知る限り、大手商社が絡んでいるため、プロセス管理はできている。したがって、どの段階での混入かは絞られ、アサリの砂抜き工程で使用する場所からプロメトリンが微量検出されていることから、捕獲から砂抜きの段階で原料アサリがプロメトリンを取り込んだらしいことが推測されている。

 除草剤は、作物栽培の場合には通常、栽培初期の雑草処理を目的に使用されるため、収穫後の商品の段階での残留農薬としての問題発生は少ない。そのため、作物の残留農薬検査の多くは殺虫剤、殺菌剤が中心に分析されている。
 しかし、池の藻の除去に使われたり、周辺圃場からの流入などの恐れはある。今回の回収は、栽培や養殖などの環境管理が一層大切なことを教えてくれている。そのことを学ばないと、アサリ水煮缶詰をいくら回収して捨てても、何の御利益もないのである。

 それにしても、私の見る限り、今回の問題の報道は一回限りで、関心を持たれた記者は少なかったらしく、そのまま終わってしまった。新聞報道ってこれで良いのだろうか。

 今の世の中は、基準値を超えた超えないだけが話題となる。だが、どうしてそういったことが起こっているのか、起こってきているのか、その背景を読み解く力を私たちがもたなければ、何の反省もなく、また時がたつと同じ事を繰り返す。愚挙の負のスパイラルから抜け出せない。そのためにも、当事者ではない新聞などは、背景を読み解き今後どうしたら改善に結びつくかを念頭に置きながら記事を書いていただけたら、良い読者を育てるOJT(実地訓練)になると思う。

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