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松永和紀のアグリ話

“天然”添加志向は見直し?〜「アカネ色素」使用自粛

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2004年6月23日

 厚生労働省が、セイヨウアカネ由来の食品添加物「アカネ色素」や、これを使った食品の製造販売輸入の自粛を要請した。消費者に対しても摂取しないように呼び掛けた(厚生労働省6月18日付けプレスリリース)。農業の話題とは少しずれるのだが、植物つながりということでお許しいただき、今回は、天然物から抽出した添加物(既存添加物)は要注意ですよ、というお話だ。

 アカネ色素は、セイヨウアカネの根から抽出された物質で、食品に黄色や赤紫色がつき、かまぼこや菓子などに使われる。国立医薬品食品衛生研究所のラットを用いた試験で、腎臓の尿細管に悪性腫瘍が発生したという。現在は、厚生労働省が食品安全委員会にアカネ色素の食品健康影響評価を依頼した上で、国民にも注意を呼び掛けたという段階。人への健康影響もまだ分からない。だが早晩、事実上の使用禁止となるだろう。

 アカネ色素は、消費者好みの“自然派”色素だったわけだが、同様に、天然物から抽出された食品添加物は数多い。既存添加物と呼ばれており、現在は計489品目がリストに記載されている。

 既存とはまた妙な言葉だが、これは食品添加物制度の大変更が原因だ。1995年の食品衛生法改正により、添加物の指定の範囲が従来の化学合成品から、天然物由来のものにも広げられた。それまで、化学合成された添加物は安全性評価試験が行われた上で認可されていたが、天然物はほとんど野放し状態。そこで、こちらも科学的に検討していこう、ということになったのだ。

 だが、たった一つの添加物の安全性評価でも数年の歳月と1億円近い費用がかかる。新たに申請される物質については、合成、天然にかかわらず安全性評価を行った後に認可することになったが、既に使用実績がある約500の天然物については、とりあえず引き続き使用を認め、おいおい安全性評価を進めていくことになった。これが、既存添加物だ。

 厚生労働省は96年と99年に、「既存添加物の安全性評価に関する調査研究」をまとめている。FAO/WHO合同食品添加物専門家会議の安全性評価や、米欧の許認可状況、学術論文などを整理したものだ。それによると、489品目のうち159品目は国際的な評価により安全が確認されていた。55品目は入手した試験成績の評価により、150品目はその基原や製法などにより、それぞれ安全性を早急に検討する必要がないとされた。残り125品目は、迅速かつ効率的に安全性を確認すべき「グレーゾーン」と結論付けられた。ところが、今回問題となったアカネ色素は、グレーゾーンの物質ではなく、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないとされた55品目の中に含まれていたのだ。

 この調査研究を詳しく見ると、アカネ色素は細菌を用いた突然変異試験が陽性となっている。細胞のがん化はDNAの突然変異から始まるため、発がん物質は変異原性を持つが、変異原性があるからといって必ずがんを引き起こすとは限らない。調査研究では、変異原生は確認されたものの、多臓器中期発がん性試験で発がん作用がないとする論文が1つあったことなどから、「大丈夫」としていた。その後の国立医薬品食品衛生研究所の試験で、結論が覆ったようだ。

参考ページ
既存添加物の安全性評価に関する調査研究(平成8年度調査)
既存添加物の安全性評価に関する調査研究(平成11年度調査)
 天然物は、長年の食経験があるので安全だとよく言われる。だが、天然物にも毒があることは、フグ毒やトリカブトなどを考えても自明のこと。さらに、既存添加物をよくよく見れば、「確かに天然物だけど、こんなもの、誰も食べてこなかったよ」というようなものも多い。(既存添加物リストは、武庫川女子大の松浦寿喜助教授のウェブサイトが、とても分かりやすくまとまっている)

 厚生労働省は、リストに記載されている489品目のうち既にコウジ酸も、発がん性を持つ可能性があるとして事実上の使用禁止としており、ほかの物質についても安全性確認を急いでいる。今後も、アカネ色素のような問題物質が出てくるのではないか。

 最近では、コンビニなどでも無添加が売り物になっているが、安さや長期保存性、品質の良さを求められる現在の食品製造には、やっぱり添加物は欠かせない。確かに、合成添加物は消費者に評判が悪いが、科学的な性質がはっきりしない既存添加物でなくあえて、データが揃っている合成品を使うのも、企業の一つの見識であり、回収などを避ける危機管理術とも思えるのだが、いかがだろうか。(サイエンスライター 松永和紀)

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