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松永和紀のアグリ話

GM議論の落とし所は適切な時期の草刈りかも

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2004年10月13日

 鹿島港周辺での遺伝子組み換えナタネの自生確認は記憶に新しいが、千葉県でも自生していることが10月上旬、新たに分かった。国立環境研究所による調査によるものだ。

 6月30日のコラムで、鹿島港周辺の遺伝子組み換え(GM)ナタネの自生について取り上げた。その後、7月7日に、国立環境研究所の中嶋信美総合研究官が、環境省の公募事業「遺伝子組換え植物の輸入による組換え遺伝子の拡散に関する予備的研究」により、鹿島港や周辺の国道、河川敷の調査を行うことを紹介した。今回の千葉県での自生確認は、中嶋さんの研究の途中経過による。

 7月上旬から8月上旬にかけて、群馬、茨城、千葉の4つの国道区間を自動車で走行しながらセイヨウナタネを探した。確認した個体の前後5m以内に生えている個体の種子をまとめて採取し、種をまいて発芽させた後、除草剤ラウンドアップハイロードを散布して耐性を見た。耐性があれば、遺伝子組み換えによるものと予想される。

 が、植物はまれにではあるが、突然変異によって自然に除草剤耐性を示す場合もある。しかし、組み換えによって導入されたcp4 epsps遺伝子と、その遺伝子からできるCP4 EPSPSというたんぱく質があることが分かれば、その個体はまぎれもなく遺伝子組み換えということになる。そこで、発芽試験で耐性を持つ個体については、ELISA法というたんぱく質を調べる方法や遺伝子分析も行った。

 4つの国道区間の45地点で種子を採取し調べた結果、3つの国道区間では耐性種子は見つからなかった。しかし、国道51号の千葉県佐原市から成田市間で採取した15地点のうち8地点でサンプリングしたものが、発芽試験でラウンドアップに耐性を示し、ELISA法でCP4 EPSPSタンパク質があることも確認された。

 遺伝子分析では、1地点については実験試料調製がうまくいかず遺伝子を確認できなかったものの、7地点の試料で組み換えによって導入されたcp4 epsps遺伝子があることを確認した。GMナタネには、ラウンドアップ耐性のほかもう一つ、バスタという除草剤耐性を持つ種類もある。バスタ耐性を持つナタネの有無については、これから分析を行うという。

 中嶋さんは、「鹿島港で組み換えナタネが自生していたので、検出されるだろうとは思っていた」と言う。バスタ耐性の分析はこれからで、確たることは言えない、としながらも、現時点で以下のような考察をしている。

 ・個体が全体に小さかった。前年以前にタネがこぼれ繁殖して世代交代している個体であれば、この時期はもっと個体が大きいと考えられ、今年新たにこぼれたタネから発芽しているのかもしれない。しかし、こぼれダネが原因と特定はできない。
・国道はよく管理されている。8月の終わりに調査した時には除草、すなわち草刈りが済んでおり、ナタネを全く確認できなかった。除草作業がきちんと行われている限り、GMナタネが道路の外へ広がっていくことはないだろう
・しかし、河川敷のナタネやカラシナなどと近い道路もある。場所によっては、交雑可能な植物が周囲にどの程度あるか、交雑はしていないか、監視していく必要がある。

 中嶋さんは、「ポイントは草刈りではないか」と言う。草刈りなんてなんと原始的な、と思われるかもしれない。しかし、GMナタネの種子がこぼれて花を咲かせ、近縁野生種と交雑するなどして生態系へ影響することを食い止めるには、花を咲かせる前に刈り取って花粉が飛ぶのを防ぐのが最善の策だ。

 鹿島港でGMナタネが多く生えていた地域は、市道だそうだ。国道では頻繁に草刈りが行われてきれいなのに対して、県道、市道となるにつれて整備が不十分になることは、だれもが感じていることだろう。中嶋さんはこう話す。「来春、ナタネが花開き花粉を飛ばす前に草刈りすれば効果的です」。各自治体が来年度の予算検討時に、考慮すればよいのだ。

 以前にお伝えした通り、GMナタネは、こぼれて環境中で生育することも織り込み済みで安全性確認が行われたもの。GMの環境影響については、新たにカルタヘナ法ができているが、GMナタネは経過措置が適用されている。茨城県で見つかろうが千葉県で見つかろうが、法的には何の問題もない。また、人や農業に影響することもまずない。

 一方で、GMは絶対に認められない、という人もいる。彼らは、交雑による遺伝子拡散を恐れ、GM禁止を訴える。中には、自主調査を進めているグループもあり、四日市港で自生のGMナタネが見つかったと報告している(ただし、彼らがナタネを運ぶトラックとして掲載している写真はナタネ運搬用ではなく誤り。関係者に確認したところ、スターチ会社に運ぶトウモロコシが積まれていたという)。

 残念ながら、「何の問題もない」「絶対にダメ」という両極端の議論は、何の進展も生まない。また、ナタネの国内自給率1%以下という現実を前にしては、「遺伝子組み換え禁止」という主張は、ただ絵空事を述べているに過ぎないように、私には思える。しかし、絶対に嫌という人が遺伝子組み換え食品を食べなくてもすむ権利、彼らの畑に組み換え植物が入り込むことを防ぐ権利は保証されるべきだろう(もちろん、確率ゼロにはならないが)。

 遺伝子組み換えには、減農薬、省力化など大きなメリットがある。利用したい人、反対する人が共存するには、いかなる手立てがあるか。その答えの一つが、適切な時期の草刈りかもしれない。研究結果を基盤にして現実策を見出してほしい、と思う。(サイエンスライター 松永和紀)

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