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松永和紀のアグリ話

食品安全関係者必見!お役立ちブログ

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2005年1月26日

 皆さんに広く知っていただきたい。でも、私の重要な情報源の1つなので、正直に言ってあまりネタバラシはしたくない。とはいえ、役立つのでやっぱり読んでいただきたい。そんな素晴らしいブログがある。先日、筆者とじっくりお目にかかることができたのでご紹介しよう。食品安全blogである。

 とにかく一度見てほしい。世界各国の行政機関、研究機関のプレスリリース、学術雑誌に載っている論文などのエッセンスが紹介され、リンクが張ってある。筆者は、食品安全の情報収集のプロ。厚生労働省系の「国立医薬品食品衛生研究所」安全情報部の主任研究官、畝山智香子さんだ。

 安全情報部は、医薬品・食品・化学物質の安全性に関する情報の収集、解析、評価及び提供を行う部署で、2003年4月にスタートした。食品情報の担当職員は5人。国内の情報収集は当然、本省が懸命にやっているので、主に国外の最新情報を取り扱っている。5人が収集した中から、行政活動に役立つものや、国内でも問題化しつつある情報などは、「食品安全情報」として隔週発行されている。

 しかし、ここには選ばれなくても、面白いもの、勉強になるもの、どこか頭の隅に止めておいたほうがよい情報は多いものだ。そこで、畝山さんが考えたのが、個人としてブログを利用することだった。

 現在は、畝山さんが業務の中で集めた情報はすべて、その日のうちにアップロードされている。中身はかなり専門的、学術的。しかし、畝山さんが日本語で短く的確な紹介文を付けているので、概要がつかめるようになっている。

 畝山さんはこう話す。「残念ながら、食品安全について日本語で検索すると、ウソの情報が多いのです。しかも、それらが検索の上位に上がってきてしまう。『○○は悪い』と書きながら、情報のソースが何かをはっきりさせていなかったり、怪しげなドクターを登場させたり。でも、検索の上位にあるサイトにある情報だから、と信用されてしまう。そこで、ソースがはっきりした学術的な情報を、日本語でもどこかに残しておいて、必要に応じて読んでもらえるようにしなければ、と思いました」。

 「公務員の業務として情報収集しています。税金で雇われているのですから、得た情報は全部、一般の人たちに提供していきたい」「確かに、普通の人は読んでみて最初は難しいなあ、と思うかもしれませんね。でも、ずっと続けて読んでみてほしい。食の安全に対する見方がなんとなく培われていくのではないかと思います。学術的なレベルは落とさずに、でも分かりやすくなるように、いろいろと工夫しています。blogという情報提供の形態も、私なりの実験の一つです」。

 私と同年代のせいか、いちいち共感する話が多く、その努力には感銘を受けた。特に学校教育におけるインターネットの使用の問題点については、一児の母同士、話が盛り上がった。最近、学校で「インターネットで調べてリポートにまとめなさい」という課題が出ることがとても多い。とりわけ食の安全は、子どもに身近で取り上げやすいテーマらしい。

 そこで、子どもは農薬や食品添加物などの言葉で検索し、上位に上がってきたサイトを見て、コピー&ペーストしてリポートにまとめてしまう。そして、先生に「よく出来ました」と褒められて帰ってくる。しかし、リポートを見ると「遺伝子組み換えは危険」「外で売っている食べ物の中には、食品添加物が山ほど入っている」「農薬は悪いものであることが分かりました」等々、でたらめである。

 こんな子どもたちが成長して、日本の食の安全をどう考えるのか? コストを無視し、周囲の迷惑も顧みずにいたずらにゼロリスクを欲してしまうのではないか? 我が子を見ながらかねがね恐ろしく思い、その都度教えてきたのだが、畝山さんも同じ状況らしい。

 畝山さんがブログに出しているような学術的に高度な情報は以前、一部の役人や研究者に独占されていた。しかし、今は各国の行政機関とも、情報をインターネットで公開するのが当たり前。学術誌も要約は無料で読めるものが多い。あとは、日本語でないという障壁をどうクリアするか、という問題と、大量の情報からいかによいものを選び出すか、という腕がものを言う。

 私たち一般人は、畝山さんという国立研究機関の研究者をガイド兼インタープリター(通訳者)に、情報の大海を泳ぎ出した、というわけだ。個人的には、韓国の話題が面白い。日本と同じように中国製食品の対応に苦慮したり、健康食品ブームに湧いたりしている。韓国食品医薬品安全庁(KFDA)の取り組みは全般に速いので、日本企業がKFDAの動きを見て他社に先駆けて手を打ち、日本の厚生労働省の動きに備える、などということもできそうだ。得られた情報をどのように自分たちの暮しや仕事に活かすか。それは、私たちの問題意識と努力次第なのだ。

 畝山さんのような公務員は、まだ多くはない。なにせ、その業績は目に見えにくく、評価されにくい。しかし、社会を確実に変えていくのは、このような地道な努力だと思う。最近、農水省のサイトなどでも、「よく頑張っているなあ、工夫しているなあ」というページが見られるようになってきた。こうした公務員が増えてほしい、頑張ってほしい。

 畝山さんは言う。「客観的に見て、日本ほど安全でバラエティに富んだおいしい食べ物を食べている国はないでしょう。こんなによい国に生まれたことを、幸せに感じ感謝しなければならないのに、多くの人がそう思っていない。バチがあたりますよ」。この言葉の重みをかみしめつつ、問題点を改善していける「大人の社会」を作りたい。(サイエンスライター 松永和紀)

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