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松永和紀のアグリ話

雑誌の格付けが面白い!

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2007年3月7日

 科学者でつくる非営利団体、「米国保健科学協議会」(AMERICAN COUNCIL ON SCIENCE AND HEALTH=ACSH)がまた、非常に興味深いレポートを出している。一般向けの21の雑誌を、栄養関係の記事の質で格付けをしているのだ。老舗雑誌の「Reader’s Digest」、主婦が読むであろう「Good Housekeeping」、若い女性向けの「Glamour」、男性向きの「Muscle and Fitness」など、実に幅広い雑誌を取り上げていて、とにかく面白い。

 ACSHによれば、米国の雑誌における食関係の情報の比率はとても高く、2005年は編集記事(広告宣伝記事を除いたもの)の6.7%が、食品や栄養についてのもの。the International Food Information Councilの昨年の調査では、回答者の42%がそれ以前の半年の間に、雑誌に載っていた情報を基に食生活を変えたと答えており、その影響力は甚大だ。

 そのため、ACSHは1982年から雑誌の栄養情報の信頼度について調査し、2、3年おきに公表している。この2月28日に公表されたリポートは、2004-2005年における調査結果。次の3つの角度から、検討している。

・事実に基づく正確さ(記事に書かれている情報は、科学的に根拠がある健全なものか? 情報源を明確にしているか?)
・表現方法(記事は客観的か? 見出しと内容が一致しているか? 結論が論理的か?)
・提案している内容(記事は現実的な提案をしているか? 提案している内容は、記事中の情報によって立証されているか? それらは、正当だと認められている栄養学を根拠としているか?)

 ジャッジは4人の専門家が行うが、極めて厳正のようだ。1つの雑誌からアトランダムに10の栄養関連記事を選び出す。今回は、21の雑誌が対象なので、210の記事が集められた。そして、どの雑誌に掲載されたものか、だれが筆者なのか、などの情報は伏せられ、内容だけが審査される。

 記事の1つひとつが5段階で評価され、10の記事の評価を合わせたものがその雑誌の評価結果となって、「EXCELLENT」「GOOD」「 FAIR」「 POOR 」に分けられる。
 さて、結果は—-。今回EXCELLENTに位置づけられたのは「Consumer Reports」の1誌のみ。GOODは、Glamour/Ladies’ Home Journal /Shape/Child/Parents/Cooking Light/Fitness/Woman’s Day/Good Housekeeping/Redbook/Self/Health/Runner’s World/Better Homes and Gardens/Prevention—-の15誌だった。FAIRはMen’s Health/Reader’s Digest/Cosmopolitan/Muscle and Fitness、POORは Men’s Fitnessの1誌だった。

 ACSHはこの結果について、次の4つの総括を行っている。
1.Consumer magazine(消費者に商品情報を届けるタイプの雑誌)は概して、健全な情報を提供している
2. 今回の調査(2004〜2005年)結果は、前回(2000〜2002年)の結果に比べて改善されてはいない
3. 男性向けの健康とフィットネス関連の雑誌は、相変わらず質が低い
4. 雑誌に載っている栄養関連の記事は常に信頼できるというわけではないので、読者は記事を読んで食習慣を変えることに対しては慎重であるべきだ

 日本の科学者もぜひ、こういう活動をしてほしい。例えば、「週刊現代」「週刊文春」「AERA」「日経ビジネス」「anan」「暮しの手帖」……。目も当てられない結果になる雑誌が続出しそうだ。こうした格付けはなにより、消費者、一般市民に役立つ点に大きな価値がある。

 日本の消費者は今、グルメ情報と粗食・伝統食賛美情報が代わるがわる登場するような報道に、もうどうしてよいものやら分からなくなってきている。残念ながら、メディアの側には自主的な改善能力はもうないかもしれない。あまりにも勉強不足だと、自分がいかにダメであるかにも気づけない。なんとも恥ずかしい事態になってしまっている。

 ACSHが作成したリポートの最後には、「記事を読んで食習慣を変えようと考えているのなら、次の4つの事柄を検討した方がいいですよ」というアドバイスが書かれている。日本の読者にも十分に役立つ内容なので、最後にご覧いただきたい。

1.情報のソースを探せ!(食生活ガイドラインのような科学的にコンセンサスのある情報が根拠になっているか、あるいはたった1つの研究成果か。動物実験か、培養細胞実験か、ヒトでの実験か。もし、ソースがまったく書かれていなければ、ご注意を)

2.記事の長さに注意!(短い記事は、重要な情報が削られているおそれがある。例えば、サプリメントの効果をうたう記事では、特定のグループにおいては安全ではないという重要情報は無視されているかもしれない)

3.その情報は、既に認められている栄養学に合致しているのか確かめろ!(栄養学の基礎を少し学びなさい。そうすれば、良い情報と悪い情報の区別がより楽にできるようになりますよ)

4.もし食生活を変えたければ、かかりつけの医師や公認栄養士に相談を!(治療中であったり、子どもの食生活を変えようと考える場合は、特に重要。サプリメントが治療に有害な影響を及ぼす場合もある)
(サイエンスライター 松永和紀)

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