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松永和紀のアグリ話

ビタミンC単独よりもオレンジジュースが効く?

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2007年4月25日

 Nature誌に面白い記事が出ている。ビタミンCのサプリメントを単独で摂取するよりも、オレンジジュースとして飲んだ方が、身体をより若く健康に保つ抗酸化作用が発揮されやすい、というのだ。記事の基になった論文を書いた研究者は、オレンジに含まれるビタミンCとほかの化学物質が相互作用して、効果を高めていると推測している。数カ月前には、紅茶とミルクの相互作用を検討した論文も発表された。最近、食品中の成分の複合影響研究が加速しているようだ。

 Nature誌に出ている記事は、「Fruit proves better than vitamin C alone」(論文のPubmedのIDは、17349075)。ミラノ大のGuarnieriらの研究で、被験者にそれぞれ、ブラッドオレンジジュース、ビタミンC強化水(両方共に150mgのビタミンCを含有)、砂糖水を飲ませた後、血液を採取した。オレンジジュースやビタミンC強化水摂取後の血液は共に、ビタミンCレベルが上昇していたが、過酸化水素水に暴露させた時のDNAのダメージの程度は異なり、オレンジジュースを飲んだ被験者の血液の方がダメージが顕著に少なかったという。砂糖水摂取後の血液には、ダメージを防ぐ効果はなかった。
 研究者は、被験者に2週間おきにランダムに別の飲み物を飲ませて実験を繰り返しており、これはプラセボ効果や特定の個人に固有の現象ではなさそうだ。
 ビタミンC単独の大量投与による抗酸化作用を明らかにしている論文も以前に出ているのだが、Guarnieriは Nature誌のインタビューに対して「もっと複雑そうだ」と回 答。オレンジに含まれるほかの「ファイトケミカル」がビタミンCと相互作用しているのではないか、と論文に書いている。 Nature誌の記事は、ビタミンCと砂糖との相互作用が抗酸 化作用を生みだしているというほかの研究者の説も紹介している。
 そこで思い出すのが、この1月に出たミルクティに関する論文だ(AAASのEurekalertに、分かりやすい記事があり、論文にもリンクしている)。紅茶にある血管拡張作用が、ミルクティーにするとなくなってしまうという。いくつかの実験から、ミルクに含まれるたんぱく質、カゼインがお茶の中のカテキンと複合体を形成してしまうため、と推測している。
 私たちは、漠然とおいしいもの、好きなものを食べたり飲んだりしているだけなのだが、食品という多成分の集合体を摂取する中で、いろいろな複合影響が起きているということなのだろう。人にとって好ましい結果であったり、がっかりするような内容であったり。今後さまざまな研究が明らかになっていくはずだ。
 結局言えることは、一成分を抽出して大量投与するような実験を基に、食品について「抗酸化作用がある」とか「ない」とか「体によい」とか「悪い」などと決めつけてはいけない、ということだ。複合影響は複雑で、その組み合わせは限りなくある。
 さらに付け加えれば、食品に後から添加される残留農薬や食品添加物の扱いも同じであろう。最近盛んに、残留農薬や食品添加物の複合毒性を問題にする人たちがいる。マスメディアも「複合毒性は分からないから気をつけろ」と警鐘を鳴らす。
 でも、残留農薬同士や食品添加物同士の複合毒性が分からないのと同様に、農薬と食品中の天然成分、添加物と食品中の天然成分、食品中の天然成分同士も、相互作用はほとんど分かっていないのだ。
 食品中の天然成分の中には、残留農薬や添加物と比較にならないほど大量に含まれている化学物質も多い。それらの天然成分同士が反応して発がん物質を生みだしている場合もあるというのに、ごく微量の残留農薬や食品添加物の複合毒性だけを問題にするのは、心配する気持ちはよく分かるけれども矛盾している、と私には思える。
 不必要な農薬や添加物を摂取するのは避けたいが、複合影響は落ち着いてとらえたい。天然物であれ人工物であれ化学物質に変わりはなく、人にとって好ましい現象も悪い現象も両方、起きているのだ。(サイエンスライター 松永和紀)

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