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松永和紀のアグリ話

赤福の“製造力”は評価したいが、ウソはいけない

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2007年10月24日

 ちょっと恥ずかしいが、正直に書こう。「赤福」問題に、どうにも関心が持てない。このコラムでは極力、タイムリーな話題を取り上げようと努力してきた。この1週間で赤福の悪質さが明らかとなり、19日には三重県から営業禁止処分を受けた以上、今週のネタはこれ、だろう。だが、誤解を恐れずに言えば、私にとってはつまらない。なぜならばこれはたぶん、「食の安全」という科学の問題ではなく、「ウソをついてはいけません」という子どもでも分かる倫理の話に過ぎないからだ。

 赤福は当初、「製造したが店頭に並ばなかった商品を冷凍保管し、解凍した日を製造日にして消費期限を設定し出荷する『まき直し』をしていた」と説明し、詫びた。

 だが、その後に出るわ出るわ。店頭で売れ残った商品を、そのまま翌日、包装し直し消費期限を替えて出荷/売れ残りを冷凍保管し、解凍後に再包装し、消費期限も替えて出荷/売れ残りの返品を餡と餅に分け「むき餡」「むき餅」として再利用–などなど、さまざまな方法で、売れ残り処分を図っていた。

 ここまでしてもなんの事故も起こさず、客は「餅が堅い」とか「味がいつもと違う」などと気付くこともなかったのだからすごいなあ、などと感心すらしたくなる。だが、冬期は餅が硬くなるのを防ぐために、糖類加工品(砂糖、植物性たんぱく質およびトレハロースの加工品)を添加していたのに表示していなかったのだから、やっぱりがっかりだ。

 すべてが、「製造したその日限りの販売なので作りたて」「昔ながらの材料」(砂糖、小豆、もち米)という商品イメージを守るための方策だ。だが、ウソだけでイメージを保ち続けたわけではないだろう。品質向上のためのまっとうな研究も十分に行われたはずだ。

 30年前に冷凍技術を取り入れたというのは先進的。返品利用でもびくともしない品質管理技術もたいしたものだ。それに、再出荷品は社員が当日製造分と混同しないように、包装紙に押される消費期限の日付の横に小さなしるしを入れ、確実にさばける売り場に持って行ったというのも綿密な話だ。

 社をあげて、商品の質を上げそれを保ち、無駄を省いて売る努力をした。その技術力、管理力を誇り冷凍を公言して在庫管理すればよかった。ずいぶんと楽になったはずだ。解凍して作りたての味を楽しむ和菓子など、今時いくらでもあるではないか。

 なのに、冷凍を隠蔽し「つきたて」のイメージを売り物にして組織ぐるみでウソをつきまくった。それほど儲けたかったのか。それとも、最新の科学技術に裏打ちされた本当の姿を見せてしまうのが怖かったのか。

 赤福は販売地域がかなり広い商品だった。伊勢だけでなく、名古屋駅でも新大阪駅でも常に山積みだった。あれだけ手広く売り、しかも、お手頃価格。おかしい。各売り場で一日で売り尽くす「昔ながらの材料、製法の生もの」というのは、やっぱり成立しない。

 そういう意味では、ほうぼうで目にしながら「変だなあ」と思わなかった私もうかつだ。おそらく、食品業界の中ではうすうす気付いている人が多かったに違いない。

 というわけで、まんまと騙された私はつい数カ月前、三重に仕事で行った折、伊勢神宮に寄りわざわざ近くにある「おかげ横丁」へ行って、赤福を食べて帰ってきた。古い日本家屋の店に座ると、流れ作業のように赤福とほうじ茶が出てきて、食べ終わると押し出された。

 「おかげ横丁」は、江戸末期から明治初期の風情をテーマに、伊勢路の代表的な建築物を移築、再現した商店街で、1993年にスタートしている。赤福の浜田典保社長が企画したそうだ。私が会った三重の人たちは、「おかげ横丁ができて良かった。とても人気がありますよ」と喜んでいた。海産物や真珠なども売られ、観光客でたいへんにぎわっていた。

 人気とは、イメージとはなんだろう? 私は、あの価格であのレベルの商品に仕上げていた赤福の“製造力”を評価したい。テーマパーク風の商店街を作り伊勢一帯に観光客を呼び込む「企画力」も素晴らしい。でも、ウソをついてはいけないのだ。

 「すべて私の責任」と頭を下げる工場長と「知らなかった」という浜田社長。製造年月日の横に印までつけておいて、その社長の言い分は通らない。「知らなかった」と社長が言い張れば言い張るほど、老舗の復活は遠くなる。(サイエンスライター 松永和紀)

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