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松永和紀のアグリ話

GMO食品利用へ向けて情報収集を

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2008年3月5日

 日本が偽装だ、ギョーザだと大騒ぎしている間に、世界の穀物事情は大変なことになっている。シカゴ商品取引所では約3年前、トウモロコシが1ブッシェル2ドル程度だったのに、現在は5ドルを超えた。ダイズも15ドル近い。韓国はついに、組み換えトウモロコシの食用としての輸入を開始したという。日本の食品関係者も「もうそろそろ使わざるを得ないのでは」などと言うようになった。でも一番乗りはしたくないので、他社見合いの神経戦。ならば、情報収集は怠りなく…。

 韓国の食用輸入は、アメリカ穀物協会が先月末、プレスリリースした。韓国トウモロコシ加工協会が4月から8月の間、計69万7000トンを輸入するという。1トンあたりの価格は318.23から337.33ドルだ。

 今後の高値を懸念して手当したものだが、同協会は、自分たちの開いた会議で韓国の業界関係者が遺伝子組み換え作物の安全性について学んだ結果だ、などと胸を張っている。

 日本でも「もうそろそろ」という声が聞こえてくる。米国で組み換えの割合が上がっているため、非組み換えトウモロコシの組み換え混入率を5%以下に抑えるのがだんだん大変になってきた、という話も聞く。

 でも、「一番乗りして、グリーンピースに乗り込まれるのはいやだ」というのがどの企業も本音だろう。「生協が使用に踏み切れば面白いな」などと個人的には思っていたのだが、今の生協はイメージダウンにつながるのを恐れて、使用できそうにない。だが、私は日本も韓国に追随せざるを得なくなるだろうと思う。

 というわけで、情報収集が重要だ。「国が認可しているから使います」ではなく、企業として主体的に、「消費者や生産者にこういう利益があり、リスクはこのようにして抑えられているので、使うことに決めました」と公表してほしい。

 最近の私のもっとも重要な情報源は、独立行政法人「農業環境技術研究所」が毎月発行している「情報:農業と環境」である。連載「GMO情報」がすごい。

 既に、GMOワールド07年10月15日付で紹介されているのだが、どうもまだ、多くの人が気づいていない気配なので、再度紹介したい。食品関係者必読の連載だ。

 今月取り上げられているのは、「害虫抵抗性のワタが、インドの生産者にどのような影響を及ぼしているか」という話題である。昨年は「組み換えワタの種子が高価なのに思うように収穫が伸びないせいで、ワタ農家数万人が自殺している」などという報道が目立った。私は、インドに詳しい研究者に尋ねてみたのだが、「自殺は多いけれど、組み換えワタのせいなんてそんな単純な話のわけがない」と否定された。

 実際のところはどうなの、ということで、2007年に公表された学術論文が紹介されている。読むと、生産者に一定の利益があることが分かる。

 このGMO情報がいいのは、それだけで終わらないところ。この論文が02年から04年に実施された調査に基づくことを明確にし、「栽培面積が急増した05年以降の生産者利益に関しては、1年から2年後に発表されるであろう研究論文を待ちたい」と結ばれている。

 遺伝子組み換えは、反対派が都合の良い調査結果だけをアピールする姿勢が目に余る。そのためか、推進側の人たちもともすると、自分たちに有利な調査や研究結果だけを言いつのってしまう。反対派に対抗しなければ、という意識がそうさせるのだろう。

 GMO情報は、そうした感情を極力排除し、実験や調査で出てきたデータに「真理」を語らせようとしているようだ。

 先月のタイトルは「オオカバマダラ再び —都合の良い科学的根拠の引用法」だった。都合の良い論文だけを紹介して、組み換え作物の生態系へのリスクを強調する研究者のモラルを問題視している。また、組み換え作物の利点だけをあげる側にも異議を唱えている。

 このことは、遺伝子組み換えだけでなく、さまざまな食品に関する研究、報道にも当てはまることだろう。とにかく毎号面白く、考えさせられることが多々ある連載だ。ぜひぜひ、多くの方々に読んでもらいたい。

 筆者は、農環研の研究者、白井洋一さん。研究者でも、ここまで書ける。農水省は遺伝子組み換えのリスクコミュニケーションに最近、とても力を入れている。白井さんのような取り組みもまた、リスコミの最前 線の意義深い成果であり、消費者や食品事業者を育てるものだと、私は思っている。(サイエンスライター 松永和紀)

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