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GMOワールド|宗谷 敏

ブラジル産ダイズvs.米国産ダイズ

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2003年6月16日

南米全体のダイズ生産量は、今年はじめて米国のそれを追い抜いた。南米躍進の牽引車は、米国に次ぐ世界第2位のダイズ生産国であるブラジルの生産増加である。そのブラジルは、CTNBio(国家バイオ技術安全委員会)がその科学的な安全性は認めたものの、現在に至るまでGMダイズの国内商業栽培を許していない。

しかし、GMダイズを商業生産する隣国アルゼンチンなどからモンサント社のラウンドアップレディダイズの種子が密輸入され、ブラジル国内で非合法に作付けられていることは公然の秘密であった。ブラジルのGMダイズ作付け比率には諸説あるが、南部を中心に既に全体の30%に達するとの推計もある。
そしらぬ顔をしていた政府が苦況に立たされたのは、有望な輸出市場である対中国貿易を巡ってであった。GMダイズ輸入に厳しい規制を敷く中国では、輸入時にGMダイズである旨の申請及び承認手続きが必要とされているからである。
こうして、今年3月にブラジル政府はGMダイズの生産は禁止のままだが、販売は04年4月まで時限で合法化するという極めてご都合主義的な裁定を下した。つまり、これは国内違法栽培の存在を国として認めたことになる。
今度はこれに激怒したのが、ダイズ輸出市場でブラジルと激しく競合する米国のダイズ生産者たちである。今や米国ダイズ栽培面積の80%を占めるラウンドアップレディダイズを正規購入する米国農家は、モンサント社に対してロイヤルティを支払っている。これを払わないブラジル農家は、生産コストがエーカー当たり20ドル有利で、米国農家は不公正な競争を強いられていると主張しだしたのだ。
顧客の声は神の声。モンサント社は、ブラジルからもロイヤルティを徴収するシステムを構築しようとして交渉を開始した。テクニカルな問題は煩瑣にわたるので避けるが、面白いのはこれを直接農家からではなく、輸出業者から徴収しようとしている点である。
思い起こされるのは、低価格を武器にマレーシアからのパーム油対米輸出が増加した1987年、ダイズ油の需要減退に危機感を抱いた同じ米国ダイズ業界が打ち出したアンチ熱帯産油脂キャンペーンである。飽和脂肪酸を多く含有する熱帯産油脂の摂取は心臓病誘発の原因となるかもしれない、とメディアを動員して大々的に宣伝した。この結果、マレーシアからのパーム油輸入は一時劇的に失速した。貿易戦争も、なかなか苛烈である。(宗谷 敏=GMOウォッチャー)

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