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GMOワールド|宗谷 敏

国際政治のツールとしてのGMO

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2003年6月30日

日本の国内紙ではあまり報道されていないが、今週は米国を中心としてGMOワールドの今後を占う上で重要なイベントが並んだ。

農業科学技術閣僚会合
6月23日〜25日、カリフォルニア州のサクラメントでUSDA(米国農務省)の主催により開催されたこの会合には、EU諸国を除く120カ国から400名以上の政府代表者や研究者が参加した。開催地付近には、もう一つのシリコンバレーとも言うべき先端バイオ研究と醸造学で名高いUCデービスが、デモンストレーション用に控える。
ホステス役のベネマン米農務長官は、第三世界の飢餓を救う農業バイオ技術を強調した。パブリシティには大義に基づく単純明快なメッセージを繰り返すことが有効であり、後述のワシントンにおけるブッシュ大統領のスピーチとも呼応している。
このイベントは、途上国にGM食品を押しつけ、ブッシュ政権の有力な支持母体であるバイオ産業への利益誘導を図るものだとする反対派も当地に結集して抗議活動を展開した。ここに焦点を当てたメディアも多い。参照記事TITLE:Biotech is hot topic of meetingSOURCE:Sacrament Bee, by Mick LeeDATE:June 23, 2003参照記事へ

BIO 2003年次総会
サクラメントと時を同じくして6月23日には、ワシントンD.C.においてBIO(バイオ技術産業団体)の年次総会が開催された。臨席したブッシュ大統領は、科学的根拠のない怖れに基づくEUのGMO禁輸措置が、アフリカ諸国のバイオ投資を遅らせており、飢餓を助長する一因となっていると激しくEUを批判するスピーチを行った。バイオ技術を国内基幹産業の一つとして推進しようとする米国の政治的思惑が、色濃く垣間見られる内容でもある。参照記事TITLE:Bio 2003:Back to the futureSOURCE:Business Week, by Amy TsaoDATE:June 26, 2003参照記事へ

米国・EUサミット
ワシントンD.C.においては、引き続き6月25日から米国・EUサミットが開催された。他分野での合意はあったものの、GMOを巡る交渉では国内外で一挙に攻勢に転じた米国に対して鼻白んだEUという構図で、両陣営の溝は深まったとの評価がもっぱらである。参照記事TITLE:US-EU rift over biotech foods widensSOURCE:AFPDATE:June 25, 2003参照記事へ

折しも米国・EUサミットの最中の6月26日、ルクセンブルクで開催されていたEU農相理事会が、懸案であった農業補助金削減を中心とするCAP(共通農業政策)の見直しに合意したとのニュースが伝えられた。進行中のWTO農業自由化交渉で、EUと組んできた日本にとっても、今後に重大な影響を及ぼす決定でもある。
04年5月には東欧圏など10カ国が加盟し25カ国体制となるEUでは、現在の半年交替の議長国制から、求心力強化のため2年半任期の大統領制への移行も検討されている。
一方、04年の大統領選挙での再選を目指してパワープレーに徹するブッシュ大統領は、7月にアフリカ5カ国を歴訪する。GMOやバイオのキーメッセージとして飢餓救済を選択したことにより、ブッシュ政権にとってアフリカ政策の比重は増す。愛憎半ばする旧宗主国としてEU諸国を持つアフリカ諸国に対する米国の干渉は、中東とはまた異なる意味を持つようにも思われる。
米国・EU二大勢力の対立を軸に、国際政治のツールとしてGMOを主体とするバイオ技術を眺めると、スーパーに氾濫する非組み換え表示とはまた違った世界が見えてくる。(宗谷 敏=GMOウォッチャー)

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