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GMOワールド|宗谷 敏

意外に高い「バカの壁」

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2003年8月4日

とうとう日本でも、遺伝子組み換え食品反対派による犯罪事件が起きてしまった。何ら違法性はなくオープンに行われていた他人のGMダイズの試験栽培圃場に、無断でトラクターを乗り入れてすき込むのは、当然ながら不法侵入と器物損壊に当たる。

圃場破壊を行ったグループは、「花粉が飛び、自然の大豆と交配する恐れがある」とパニックに陥った果てに犯行に及んだらしい。前日、このグループも参加して東京で行われた行政との話し合いでは「緩衝地帯はどれだけとるように指導しているのか、商業栽培の米国でさえ緩衝地帯を設けることを義務付けている」との質問があったようだ。しかし、これはトウモロコシなどBt作物に関しての話と混同しており、米国においてもGMダイズ栽培に対するこの種の規制はない。
参照記事
TITLE:<遺伝子組み換え>試験栽培妨害で被害届ける 茨城・谷和原村
SOURCE:毎日新聞(土屋渓)
DATE: July 27,2003

そもそもダイズは自家受粉する植物で、花粉が飛ぶ開花前につぼみの状態で受粉が終わり、従ってほとんど交雑しないことが植物学的に確かめられている。先の質問に続いて「開花させれば花粉が飛び、交雑のリスクが生まれる。日本はダイズの原産地といっていいほど多種多様のダイズ品種がある。交雑を防ぐ指導はどのようにしているのか」との発言もあったらしいが、語るに落ちるとはこのことであろう。
なぜなら、それらの「多種多様のダイズ品種」は、花粉飛散による交雑をどのようにして防いできたのか?おそらくなにも特別なことはなされてはいない。であっても、それらの品種がぐちゃぐちゃに交雑してしまった!という事故はないのである。ないからこそ「多種多様のダイズ品種」が、ちゃんと存在する。このことは「交雑のリスク」はゼロではないかもしれないが、それは無視しうるリスクであることを雄弁に物語っている。
ダイズを組み換えたことにより花粉がより強力に飛ぶということはないのだから、GMダイズにおいてもリスクの程度は同じことである。それよりもそこまで花粉飛散を怖れるのなら、圃場破壊に使用したトラクターはその場で焼却処分にしたり、充分に洗浄したりしたのだろうか?圃場破壊行為は、GMダイズがそのまま圃場にあるよりも、むしろその花粉を周囲に盛大に飛ばしてしまう可能性が高いことに、冷静に気がつく心の余裕はなかったのだろうか?
実行犯グループのチラシも見たが、GMダイズ開発メーカーに対する何の証拠もない誹謗中傷が掲載されている。出所は、古くてもはや不正確な情報を延々アップし続け、新しい情報は妄想で脚色してしまう癖があるGM食品反対オバチャンのサイトらしい。そしてチラシの主義主張は、ダイズの花粉をスカラー波とやらに置き換えてみると、白装束で道路を封鎖していた方たちにかなり近い。しかし、自らは花粉飛散の風評被害におののきながら、他者に対しては不確実な誹謗中傷を平気で書き散らす神経も良く理解できない。
GM反対派の総本山ともいうべきキャンペーン組織は、この破壊犯罪行為を「花粉飛散予防の措置がとられた」と言い換えて支持するがごとき声明を出しているが、今後とも違法行為を組織として是認するということなのだろうか?また、ろくに勉強もせずに実行犯グループらに乗せられてそのお先棒を担いでいる議員先生も、早いとこ「あっしにはかかわりのないことで」にしないとお仲間の犯罪行為を容認することになり、それでは所属する良識の府が泣こうというものだ。
百万部に迫ろうという養老孟司氏のベストセラー「バカの壁」には、自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまうのがバカの壁の一種だと述べられている。この事件の周囲を見渡してみると、意外に高い「バカの壁」の林立に驚ろかされる。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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