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GMOワールド

「フォローアップは大事なことです」

宗谷 敏

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 海外メディアの報道姿勢で常々感心させられるのは、単に事件の報道だけにとどまらず、その後のフォローがきちんとなされていることだ。

 一例を挙げれば、99年5月の「ネイチャー」に、コーネル大学のローシー助教授らによる「(室内実験で)Btコーンの花粉を食ベさせたオオカバマダラチョウの幼虫が死んだ」という論文が発表され、大きな反響を呼んだ。
 しかし、その後行われた複数の野外実験により、オオカバマダラチョウへのリスクは実際の自然界においてほとんどないことが証明されている。海外のメディアはそこまで追って報道している(01.09.08, New York Times, 01.09.10, AP及びReuters、02.02.11,BBC等)ため、グリンピースもこのコーネル大学の実験結果を論拠とするGM作物批判は行わなくなって久しい。
 一方、我が国では最初のコーネル大学のレポートはかなり派手に報道されたが、その後の一般紙によるフォローは全くと言っていいほどなされていない。したがって一部反対派の方々は、相変わらず「チョウが死んだ!」と叫び続け、ホームページなどに延々アップし続けているのである。
 ところで、本コーナーも5カ月にわたり20本ほど掲載してきたが、一度アップしたトピックスをフォローした記事を取り上げたいことも度々ある。今週はそういうフォローアップ的な記事を中心に揃えてみたい。
米国?GM食品全米世論調査
 以前ニューヨーク州民のGM食品に対するポール(世論調査)を紹介したが、こちらは全米の消費者1000人を対象としたPew Initiativeの調査結果である。Pew Initiativeは、第三者的調査機関だが、この調査を継続的に実施(前回は01年3月)しており、信頼性は高い。
 GM食品の認知度、食品市場導入の可否、安全性、FDAの規制のあり方などに関して問うているが、各々なかなか興味深い回答が示されている。認知度は、58%が自分はGM食品を食べたことはないと答え、低い数字に留まっている。安全性は27%しか安全だと考えていないが、既に一般に販売されている食品の80%近くがGM成分を含む可能性があることを説明された後改めて問われると、44%が安全であると答えている。
 また81%が製薬目的で植物の遺伝子を組み換えることに賛成するが、同じ目的に動物を利用することに対しては、58%が支持しない。動物の遺伝子操作に対しては、米国でも一般に根強い抵抗感が存在する。
参照記事
TITLE:Brazil: YAmericans’ knowledge of genetically modified foods remains low and opinions on safety still split
SOURCE:SeedQuest
DATE: Sept. 18, 2003

ブラジル?遂にGMダイズ商業栽培解禁へ
 ブラジルでは、モンサント社のGMダイズの商業作付けを暫定的に許す法案に副大統領が署名した。責任回避なのか、ルーラ大統領はこの間海外出張ヘ。地域的には違法作付けが行われている南部に限定するが、グリンピースをはじめとするGM反対派からは猛反発が起きている。
参照記事
TITLE:Brazil: Yes to GM Soy. No Joy.
SOURCE:Brazil Com, by Gabriela Guerreiro
DATE: Sept. 25, 2003

EU?種子の閾値問題
 EU委員会は、GMOのモラトリアム解除に向けて、GM製品に対する表示やトレーサビリティの新規制を定めた一方、圃場におけるGM農作物と在来作物や有機農産物との共存を図るためのガイドライン案を公表している。
 このガイドライン案は最終的詰めの段階に入っているが、播種用の種子に対するピュリティ(純度)の問題で、各国の意見が激しく対立している。つまり、一般種子にGM種子の混入をどの程度まで認めるかという問題である。EU委員会は、ナタネに0.3%、トウモロコシに0.5%、ダイズに0.7%という閾値を提案したが、全体的合意を得られていない。
参照記事
TITLE:Divided EU to Debate Ways to Grow GMO Crops
SOURCE:Reuters
DATE: Sept. 25, 2003

英国?国民は依然GMOにネガティブ
 今年の6月から7月にかけて、英国全国で延べ600回にわたり開催されたGMOに関するナショナルディベートの公式報告書が公表される。GM食品を食べたい人は2%にすぎず、依然GM技術に懐疑的な国民感情が示された。
参照記事
TITLE:Most Britons ’oppose GM crops’
SOURCE:BBC
DATE: Sept. 24, 2003

フランス?GM研究妨害に研究者が請願
 フランスの研究者1500人が、GM研究施設や試験圃場破壊など頻発する反対派による妨害工作を止めさせるよう政府に請願書を提出した。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)
参照記事
TITLE:French researchers call for an end GM crop sabotage
SOURCE:Cordis News
DATE: Sept. 22, 2003