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GMOワールド|宗谷 敏

GMOは中国を養うのか?

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2003年10月6日

 先週目立ったのは、ブラジルが遺伝子組み換えダイズ商業栽培を時限で認可したことへの関連報道であったが、中国のGMO事情に関するまとまった記事が出たため、そちらを紹介したい。なお、ここで取り上げられている論文の出典は、米国エール大学のグローバリゼーション研究センターである。

参照記事
TITLE:Global anti-GM sentiment slows China’s biotech agenda
SOURCE:SeedQuest
DATE: Sept. 29, 2003

 世界のGM作物栽培状況を継続的に調査している唯一の組織である国際アグリバイオ事業団(ISAAA)によれば、02年に中国は210万ヘクタール(世界の全GM栽培面積の4%)のGM作物を栽培し世界第4位に位置する。中国のGM栽培のほとんどはモンサント社のBtコットンであり、既に全綿花作付けの51%(02年)に達している。ちなみに上位3カ国は、米国3900万ヘクタール(66%)、アルゼンチン1350万ヘクタール(23%)及びカナダ350万ヘクタール(6%)であり、上位4カ国で世界の全GM栽培面積の99%を占める。
 中国政府は、80年代後半から食糧需給政策の一環としてバイオ作物に興味を寄せ、90年代になるとウイルス耐性タバコの商業生産を開始した。99年にはブラジルやインドの10倍に当たる国家予算1億1200万ドルをバイオ作物の研究開発に投入し、さらに05年までに4倍にすることも計画しているという。この結果、02年には141種類のバイオ作物が開発され、そのうちの65種類は既に試験栽培が実施されている。
 このような指導層の積極果敢な研究開発姿勢に反し、EUを中心とするGM作物への安全性懸念やそのような情報に接する中国国民の不安感により、GM作物の大規模商業栽培は遅れるのではないかという見方が提示される。一方、このような受容の障害問題にもかかわらず、政治家や科学者、生産農家はバイオテクノロジーを熱心に支持しており、商業化は「もし」ではなく「いつ」という必然であるとの予測も存在する。
 ところで、筆者は00年と01年にGMO事情調査を行うため、中国を訪れたことがある。日本向け中国産ダイズの主産地である黒龍江省においては、ダイズ生産農家が集団組織を形成していたが、農薬に関し質問したところ「殺虫剤は使うこともあるが、除草剤は使わない。雑草はすべて人手で抜く人海戦術である」という回答に接した。これでは、人件費が高騰するまで除草剤耐性ダイズは売れないのではないかと感じた。
 北京と臨海部である大連、上海の政府機関や官民の研究施設も回ったが、政府関係者はどこへ行っても「GMOの研究開発は積極的に進めるが、商業化については慎重である」という、まるで判で押したように同じコメントを繰り返したのが強く印象に残っている。
 94年にワールドウオッチ研究所のレスター・ブラウン氏が「誰が中国を養うのか」を公表してから10年、90年代後半順調に生産を伸ばしてきたかに見えた中国の穀物生産は、00年以来足踏み状態に陥っており、備蓄の取り崩しに頼っている。一方、所得水準の上昇や肉類の消費拡大は相変わらず右肩上がりで、90年代末から肉類の輸入が急増している。
 12億を超える人口は増加を続け、2030年代にピークを迎えると予測されている。このことは現在商品化されているGMOの仮想リスクに比べれば、実現性という意味ではずっと高い。もちろん、GMOやバイオテクノロジーがすべてを解決するとも思えないが、中国は人口増に対し、今やれることはすべてやっておくべきだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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