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GMOワールド|宗谷 敏

「GMっていいかも」

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2003年10月27日

 先週は、前週の英国学士院のGM作物環境影響報告に続き、ABARE(the

Australian Bureau of Agricultural and Resource Economics )から公表された豪州などへのGM作物導入可否を、経済的得失という見地から論じたレポートが注目を集めた。
参照記事
TITLE:GM ban could cost region $2.8b, says Australian report
SOURCE:The New Zealand Herald, by Liam Dann and Anne Beston
DATE: Oct. 22, 2003

 しかし、ここでは英国の週刊誌The Spectatorに掲載されたジャーナリストRoss Clark氏の論文を少し詳しく紹介したい。“GM may be good for you”というタイトルのこの論文で、同氏はGM食品に対する環境団体などのヒステリーは無視すべきだと主張している。事例別に概要を整理してみたが、なるべくオリジナルを読んで頂きたい。
<事例1.英国政府の遺伝子組換え食品環境影響報告>
 環境保護団体は、GMナタネとGMサトウダイコンの畑で、小鳥、蜜蜂、蝶が少なかったことを理由にGM作物を禁止しろと主張する。しかし、報告書は、いかなる野生生物に対してもGM食品の直接的な実害を一切見いだしてはいない。
 GMフィールドで動物が少なかった理由は、そこに雑草がより少なかったからであり、もし農作物を栽培しなければ、土地を完全に雑草だけにできるから、いかなる農業形態であっても野生生物には良くないとも言える。自然保護は気高い目的だが、あらゆる農業の改良を拒否できると考えるのは行き過ぎだ。高反収GM作物は、自然保護のために使える土地を増やすかもしれない。
<事例2.プシュタイ博士の実験>
 遺伝子組み換えジャガイモを食べたネズミが免疫機能を傷つけられたと主張したアーパド・プシュタイ博士による有名な実験を再現する試みが、ことごとく失敗した。対照群に与える非組み換えのジャガイモを含めて、ネズミが生のジャガイモを嫌って食べないため、実験の途中ですべてのネズミが餓死しそうになることが判明し、プシュタイ博士の実験設計の基本的部分も揺らいだ。
 仮にプシュタイ博士が、このジャガイモが人間の健康に有害だという明白な証拠を提出しえたとしても、この特定のブランドのジャガイモ一例のみをもって、あらゆるGM食品が危険で違法だとする議論にはならない。
 従来の育種技術を用いたものであっても、既存食品であっても、新奇な食品というものは市場や食生活に入ってきている。潜在的に致命的なアレルギーが発見されたキウィフルーツのように、時には健康上の問題を引き起こすこともある。相違は、GM食品は上市前にアレルギーと他の悪影響の可能性について検査されるのに対し、既存の食物には法律的検査の手順が存在しない。
<事例3.シュマイザー氏の裁判>
 カナダ人の農民パーシー・シュマイザー氏は、2000年に、彼の畑でGMカノーラ(ナタネ)が成育しているのを発見された後、特許権侵害のためにモンサントから告訴された。彼は常に種子を自家採取しており、GMカノーラは風媒によってもたらされたと抗弁した。
 この訴訟は「ダビデ対ゴリアテの闘い」だと説明するシュマイザー氏のお陰で、今や世界中の農民が、ナタネのすべての他品種を自社のものと置き換えるために、トラックからGM種子を撒き散らすモンサントの黒い陰謀について噂話をしている。
 しかしながら、シュマイザー氏の畑のナタネは95から98%がGMカノーラであり、これは風媒によって起きうる割合をはるかに超えていることが発見され、シュマイザー氏はカナダの法廷で敗訴(最高裁判所へ控訴中)した。またモンサントは黒い陰謀どころか、むしろGMナタネの風媒を防ぐため努力していたという近隣の複数農家からの証言もあった。
<事例4.ターミネーター技術とスーパー雑草>
 将来のGM作物がターミネーター遺伝子を持てば、シュマイザー氏のような訴訟問題は起きないだろう。この技術は永久に汚染騒ぎを終わらせる力があるが、反対派集団はターミネーター遺伝子が他の種子に移行して、植物の再生を妨げる結果、地球上のすべて植物が抹殺されてしまうから、これはエコロジー的な中性子爆弾だと批判する。
 しかし、もし植物が不妊の種子を生産するなら、植物生命体の他のいかなる形態ともその遺伝子を共有することができないから、これはナンセンスな主張だ。ターミネーター遺伝子を持たないGMプラントでさえ、ただ近縁種と交配することができるだけだから、スーパー雑草理論も、また同じくサイエンスフィクションの世界に属する話である。
<事例5.モンサント神話>
 モンサントが世界の貧しい人たちを飢えさせるという告発は、単なるラディズム(産業革命期の機械破壊運動)だ。産業革命によって何が達成されたかが証明された2世紀も後で、機械化の賢明さを依然問題にしている人々が存在するのは驚くべきことだ。積極行動主義者たちは、第三世界の住民たちが産業革命以前の小作農階層の状態に生きることを期待しているのか?
 GM食品に関する議論としてまかり通る騒動の悲劇は、その大部分が競合の問題であるという本質を見落としていることだ。一社がGM農作物の開発を独占支配することは明らかに良くない。他社が参入していれば、モンサントはこの技術における独占的地位を簡単には築けなかったろう。
 しかし、数々の中傷を積み上げられ、グローバルな資本主義を憎むすべての象徴に祭り上げられたモンサントを見たら、他社はこの論争への参入をためらうだろう。反対派が圃場破壊に履いていく長靴は、単にモンサントを踏み潰すだけでなく、競合原理をも踏み潰すのだ。
参照記事
TITLE:GM may be good for you
SOURCE:The Spectator
DATE: Oct. 25, 2003

 まとめはこれまで。なお、筆者はClark氏の論旨の大部分に首肯するが、掲載誌のThe Spectatorは、英国の支配者層(という言葉が適当かどうかは置くとして)寄りのメディアであり、かなり政治色の濃い主張を展開し、時には国際政治にまで影響を与えたことは断っておくべきだろう。(GMOウォッチャー 宗谷 敏)

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