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GMOワールド|宗谷 敏

GMOワールドのブラックホール?ブラジル

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2003年12月1日

 ブラジルにおける2003/04年(9?10月ベース)のダイズ作付けは80%が終了し、生産量は5430万トン、昨シーズンの5118万トンを抜いてレコードとなる見込み(03.11.27.

Reuters)である。しかし、GMダイズを巡っての情勢は混沌としており、報道も猫の目状態ではあるが、現状と展望を少し探ってみたい。
 去る9月25日、ブラジル政府は03/04年度に限りGMダイズの作付けを許可する大統領令を発効させた。GMダイズ販売に関しては、先に04年12月31日までの時限で認可されており、これで一応形の上からはGMダイズ生産・販売が併せて認可されたことになる。
 しかし、新たなGMダイズ種子の販売は認められず、現在所有するGMダイズ種子を作付けする農家は登録を行い、出所不詳な種子を買わないという誓約書に署名しなくてはならない。12月9日の登録期限を前に、11月10日の農業省公表では農家からの登録申請は1万1199件に留まり、予想を下回っている(03.11.10. Reuters)。
 主要州ごとの内訳では、リオ・グランデ・ド・スル州1万790件、パラナ州225件、マト・グロッソ州108件であり、従来違法作付けが盛んであったリオ・グランデ・ド・スル州が大部分を占める。注目されるのは、州が作付けを禁止したパラナ州からもエントリーがあることだ。以下、この3州ごとの背景を概観する。
 ダイズ生産量第1位のマト・グロッソ州では、個人のダイズ生産者としてはおそらく世界一の栽培面積(25万ヘクタール)を誇るブライオ・マギー氏が州知事を務める。マギー氏は政策的に同州を非GM地域に留めたい意向もあるが、このためにはEUなどが非GMダイズに対して見合ったプレミアムを支払うのが絶対条件となる。
 またマギー州知事は、政府のGMダイズ政策に対してはおそらく恭順を示すだろう。環境保護団体などからダイズ作付け地域拡大に伴うアマゾン森林伐採について批判を浴びており、この戦いには現政権の協力が不可欠だからである。
 生産量第2位のパラナ州の州議会は、ロベルト・レクイアオ州知事の支持を受けて06年までGMダイズを禁止する法案を10月15日に可決した。北部に隣接するサンタ・カタリーナ州と協力して非GMダイズ地帯を構成しようという政治的判断である。しかし、農家からの支持はあまり得られていないようである。
 この禁止法案に従い、10月下旬から州境では非GM証明書を所持しないダイズ運搬トラックがブロックされたり、州内の主要輸出港であるパラナグア港でもGMダイズ混入を調べるために荷役が一時止まったりする騒ぎが起きた。南側のリオ・グランデ・ド・スル州は、パラナ州の禁止法案に対し訴訟を起こすなど内輪もめに発展している。
 その生産量第3位のリオ・グランデ・ド・スル州は南部に位置し、アルゼンチンからの密輸と国内での再生産によるGMダイズ種子違法栽培が広く行われていた地帯である。既に栽培面積の80%がGMダイズであるとも言われている。
 この絡みでは、モンサント社に対する特許料の問題も依然不透明なままである。ブラジル農家が種子の特許料を支払わないのは、不公正な競争を強いられていることになるという米国農家の突き上げに、モンサント社は5月以来輸出業者から特許料を徴収しようと交渉中だった。今のところ、時限立法と特許料との関係に触れた報道は見当たらない。
 さて、上述のようにほとんどカオス(混沌)状態のブラジルではあるが、GMダイズ普及を止めようとする現在の試みは失敗し貿易を混乱させるだけであり、GMダイズは植えられていくことになるだろうというアナリストの予測が、下記の記事である。
参照記事
TITLE:Brazil will plant GMO soy, like it or not-analyst
SOURCE:Reuters, by Reese Ewing
DATE: Nov. 25, 2003

 筆者もこの見方には大方賛同する。一見GMダイズにネガティブな姿勢に見えるマト・グロッソ州の大豆王マギー知事も、パラナ州の州議会も、そのキーワードは「経済性」にある。ダイズの生産コストに除草剤処理の占める割合は高い。暖かい地方ではより顕著である。パラナ州農協の試算では、GMダイズ導入は除草剤コスト50%以上引き下げる。 EUなどの輸出先国が、この生産コストカットを上回るプレミアムを非GMダイズに支払えない場合、ブラジルの非GMダイズ生産は崩壊する。また仮に、GM・非GMの共存生産が可能としても、米国のような完成した流通システムを持つ国でさえ苦労している分別生産流通管理態勢に、何事にもアバウトなブラジルが直ぐに対応できるとは考えにくいのである。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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