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GMOワールド

マイ☆クリスマス☆ストーリー

宗谷 敏

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 この時節欧米の善き風習の一つに、作家たちがクリスマスに因んだ作品を書くというお約束があるそうだ。今年最後の配信となる今週は、その下手な真似事に挑戦してみたいと思うのだが、「GM七面鳥が逃げた!」というようなニュースが都合良くあるハズもない。困ったな・・・。

参照記事
TITLE:Zooming in to Expand Mind
SOURCE:Columbian Com., by Amy McFall Prince
DATE: Dec. 16, 2003

 「ミミズの解剖は高校での生物学授業の典型だが、遺伝子組み換え食品を食べさせたら腸管が損傷するかどうかを調べるためにミミズを解剖することはハイテク科学に相違ない。そして、それが米国ワシントン州バンクーバー高校で実際に行われている」と、この地方紙の記事は伝えている。

 この男子高校生は、有機堆肥と、遺伝子組み換え食品から作られた堆肥を食べさせた2匹のミミズの腸管を、電子顕微鏡を用いて比較しようと試みている。彼がこの実験を志した動機は、遺伝子組み換えポテトを食べさせたマウスが内蔵器官に損傷を起こしたとする(プシュタイ博士の)実験について、読んで知ったからである。

 彼が実験に用いる電子顕微鏡は1000万ドル以上もする高額な機器であるため普通大学レベルのものであり、東部諸州の高校ではごくわずか、西部のワシントン州近辺でもワシントン高校に1台しか設備されていない。しかし、シアトルにあるノースウエスト・フィッシェリーズ・サイエンス・センターが30年落ちの中古機をバンクーバー高校に寄贈した。

 記事の後半は、米国においても深刻になりつつあるらしい低学年レベルの科学・技術教育への熱意や興味の衰退と、子供たちに早くから科学・技術に触れされることの重要さが、現場教師などの口から語られている。

 この話のどこがクリスマスなのかって?電子顕微鏡がクリスマスプレゼントだったらとても都合良かったのだが、気になるミミズの腸管実験の結果と共にそんなことは書いてない。でも、もう少しお付き合いください。

 筆者の子供時代、当然「少年サンデー」や「少年マガジン」は愛読書だったが、誠文堂新光社の「子供の科学」や「模型とラジオ」にも胸躍らせたものである。簡単なトランジスタラジオを組み立てて、音が出た時の感動は今でも忘れられない。

 もっともそれが、難易度の高いコンピュータゲームをクリアしたときの感動とどう違うのか、などと現代っ子たちから問われればオジサンは返事に窮するのみだが。

 「サイアス」が廃刊に追い込まれるという大衆向け科学系雑誌冬の時代、あれらの子供向け科学雑誌はどうなっているのかネット検索してみた。「子供の科学」は総合科学雑誌としてやや性格を変え、今も健在だった。

 「子科」最新刊の特集は「地震大国、日本」だし、「めざせプログラマ!Windowsプログラミングに挑戦」などという連載には時代の流れを感じる。「モラ」の方は「MJ無線と実験」に衣更えしたのか、見当たらなかった。

 子供の理科離れ、大人の科学離れは我が国でもしばしば話題となり、様々な方面から繰り返し警鐘が鳴らされている。興味のないところに、理解しようとする姿勢は生まれる訳がない。

 遺伝子組み換え食品に対する各方面からの拒否の姿勢も、それが正しい科学的知識に基づく判断であれば仕方ないと思うが、現実は決してそうではないところが残念である。

 サンタクロースが届ける夢があるように、正しく育まれれば科学にも人類が共有できる美しい夢があるし、なくてはならないと筆者は思う。そう言えば、マイケル・ファラディーの科学入門の名著「蝋燭の科学」(岩波文庫、青帯)は、子供向けクリスマス講演集である。

 今年の聖夜は、そんなことを語り合って過ごされては如何でしょうか?クリスチャンではない私、宗谷はケーキの代わりにそろそろ届くであろうA‐HITBioの遺伝子組み換え納豆を楽しみにしています。それでは皆様、良いお年をお迎え下さい。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)