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GMOワールド|宗谷 敏

ニュートリゲノミクス〜「どっちの料理ショー」もやがて究極の選択?

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2004年2月9日

 遺伝子科学の研究は、機能性食品の分野でも注目を浴びている。先週もNutrigenomics(栄養遺伝子学)関連のニュースが、海外の一般紙を賑わした。最近の我が国でも週刊誌ネタになるほど脂質栄養学はいまだに決定論がなく論争が絶えないようだが、オメガ-3不飽和脂肪酸の重要性は広く認識されつつある。

 オメガ-3系脂肪酸は、血圧を下げたり動脈硬化を予防したりして心臓病を抑止すると共に、発ガンリスクやさらには脳開発などにも関与しアルツハイマー病のリスクまでも減らすのではないかと言われている。しかし、多くの人々が専門家から推奨されるレベルの量を摂取していない

 なぜなら現代の西欧型食生活ではオメガ-6系脂肪酸が過剰摂取され、αリノレン酸、EPA、DHAなどのオメガ-3系を多く含むやや特殊な植物性油脂(アマニ油、シソ油)や青魚(イワシ、アジ、サバ、カツオ、マグロ、サケ)、海草類などは不足しており、これらの栄養補助食品も高価である。

 このような背景の下、2月5日付「ネーチャー」誌に米国のハーバード・メディカル・スクールの研究者らが、本来オメガ-3系を持たない哺乳動物であるマウスの体内にオメガ-3系脂肪酸を発現させたというニュースが発表され、米国を中心に一般紙が広くこれをカバーした。

参照記事
TITLE:Designer mice make heart-friendly nutrients
SOURCE: Nature
DATE: Feb. 5, 2004

 研究者たちは、線形動物である土壌中の回虫の一種C.エレガンス(roundworm Caenorhabditis elegans) から取り出したfat-1遺伝子をマウスに挿入して、体内のオメガ-6系をオメガ-3系に変換させることに成功したと言う。
 そして現在、マサチューセッツ総合病院では、オメガ-3を含む卵を生ませるべく遺伝子操作したニワトリの開発も進められている。さらに家畜へのこの技術の応用は、家畜自身をより健康的に保つことができるため「ダブルボーナス」だと研究者は主張する。
 ここまで来ればオメガ?3を含む牛乳や食肉の開発もそれほど困難ではないと予想されるため、米国の一般紙の多くが注目し「ヘルシーステーキが食べられるかも!」と盛り上がった。これらは、肥満や心臓疾患に悩む食肉社会ならではの反応と言えるのかもしれない。

 ところで、オメガ-3を畜産製品から供給しようとするアプローチは遺伝子操作技術だけではない。たまたま同じ日に、こんな記事も見られた。オーストラリアシドニーの大学チームは、乳牛の飼料に魚油を添加することによりオメガ-3に富んだ牛乳を作り出した。食味も普通の牛乳と変わりがないという。

参照記事
TITLE:Feed supplements boost omega-3 fats in milk
SOURCE: Food Navigator.com
DATE: Feb. 5, 2004

 つまり、農家が魚油や魚粉を飼料として恒常的に家畜に与えるならば、農場からの肉や牛乳にオメガ-3を含ませられるというのだ。しかしながらこの方法はコストがかかり、欠乏に瀕する海洋資源の浪費につながりかねない。

 一方、遺伝子操作によりオメガ-3に富む家畜実験が成功しても、それらの肉や乳製品が商業販売されるまでは、相当時間がかかるだろうという予想もある。FDA(米国医薬食品局)は、これまで人の食用に供せられる遺伝子改変動物を認可しておらず、製薬用動物に対しても大規模な安全性試験を要求しているからである。

 技術的問題をクリアし、厳しい食品安全性審査も認可され、商業的な実用性が保証されても、おそらく倫理的問題は残る。同じ遺伝子操作でも、植物に比べて動物の場合は消費者に倫理的抵抗感がより強く、社会的受容は議論が分かれるところであろう。

 食生活に魚が豊富な日本から見れば、なにを大げさなことをという気もするし「サケでも食べろよ」と言いたいところだが、PCBなどの化学物質による養殖魚の汚染は既に米国においても深刻な問題だ。そして、野生のサケも大西洋では激減している状況にある。

 本日の「どっちの料理ショー」、ビーフステーキとサーモンステーキ対決。特選素材は遺伝子操作された牛肉と養殖されたサケ、さてあなたがオメガ-3を採りたいとして、今夜のご注文はどっち?(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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