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GMOワールド|宗谷 敏

ヨーロッパの有力国は今・・・

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2004年3月15日

 予定通りと言うべきか、英国は先週GM作物の商業栽培に認可を与えた。これを機会にEU有力国の今年に入ってからのGMOに関連するトピックを整理しておきたい。参考として、各専門パネルにおけるBT11(03年12月)及びNK603(04年2月)認可に対する各国投票結果(○賛成、●反対、△棄権)と特定加重多数決(QMV)の持ち票数を付記する。

<○○ 英国 QMV10>
 3月9日、英国政府はGMトウモロコシの国内商業栽培を条件付きで解禁すると公表した。解禁されたのはバイエル社の除草剤耐性トウモロコシT25(Chardon LL)で、用途は家畜飼料用である。GM推進・反対両派のリアクションを含め、本件に関するおびただしい数のニュースが先週ネット上に溢れた。
参照記事
TITLE: British OK GM Maize, Greenpeace Furious
SOURCE: Reuters, by Mike Peacock
DATE: Mar. 9, 2004

 この決定の根拠となっているのは、03年10月16日公表の英国学士院GM作物環境影響調査報告書(FSEs)である。ベケット環境相は、実際に栽培が始まるのは早くても来春になるだろうと述べている。しかし、詳述は避けるが栽培農家や開発メーカーがクリアすべき諸条件にはなかなか厳しいものがある。

 さらにブレア政権は民意をないがしろにしたという環境保護団体などの激怒に加え、GMO栽培にネガティブなウエールズ州やスコットランド州の州政府も徹底抗戦の構えであり、先行きは予断を許さない。

<△● イタリア QMV10>
 EU最大の有機農産物生産国であり、スローフード運動の発祥地でもある。当然ながらGMOに対する拒否感は根強い。行き過ぎたGM禁止措置に対してバイテク企業と係争したり、EUからお目玉を食らったりしているほどである。上述の英国の決定に関しても、真っ先に農業大臣がコンタミネーションに対する懸念を表明した(04.03.10. EU business)。

 有機命!であるイタリア国農相のGMコンタミネーション恐怖は半端ではない。EUのGMと有機・在来作物の共存に関するガイドラインに対しても、妥協案、一時的解決に過ぎないと激しく噛みついている(04.01.21. Reuters )。結局、最終的には各国政府の努力目標化されているこのガイドラインについては、筆者もイタリア農相に同情を禁じ得ないが・・・

 ところでEUの食物安全庁(EFSA)は、誘致合戦に勝利した北イタリアのパルマに置かれている。しかしながら、イタリア自身は日本の食品安全委員会に相当する食品安全に関する専門的組織をいまだに所有していないという泣き言も、この農業大臣は漏らしている(04.03.08. Reuters )。少し、かわいい。有機食品で事故が起きないように祈りたい。

<△△ ドイツ QMV10>
 1月19日付拙稿で触れた通りドイツでは社会民主党と緑の党が組む連立与党が、1月12日にGMOの国内栽培と販売を認可する法案に合意し、2月16日にシュローダー首相はこの法案を成立させた(04.02.16. Deutsche Welle)。この法案は、EUのGMO規制を忠実に反映しており、表示などの厳しい条件と表裏一体になっている。

 法案は整ったものの、ドイツの農業セクターの大部分はGMO栽培にあまり乗り気ではない。この背景には、4月にEUのGMO規制が発効し、GMO食品や飼料への表示が実施されれば、Non-GMO製品に対する需要が増大するだろうという読みがある。

 しかし、ネガティブな動きばかりでもない。奇しくも米国のメンドシノ郡がMeasure H を成立させた3月2日の週、ドイツのバイエルン州議会は臨時立法を可決し、GMO作物の試験栽培を認めることに同意した。有機などとの共存を前提とした責任ある商業栽培に向けた第一歩を踏み出したことになる(04.03.05. Checkbiotech)。

<●○ フランス QMV10>
 イラク問題でも明らかなように米国とは犬猿の仲、常に対立姿勢を明確に打ち出すフランスはGMO問題でもネガティブ派の大将格とのイメージが強い。しかし、この国の基盤を支えるのは華のパリやブランド品ではなく、あくまで農業である。当然、新技術に無関心ではいられない。

 パリ国際農業展示会開幕を翌日に控えた2月27日、農業紙によるシラク大統領へのインタビューは興味深い。「フランスはGMO作物の承認・採用には慎重であるべきだが、世界の貧しい人々に食糧を提供し、新しい製薬の可能性を持つ研究は継続しなければならない」とシラク大統領は強調したと伝えられる(04.02.27. Reuters )。

 この記事によると、あるポール(世論調査)で農家の3分の2がGMO作物に懐疑的で植えないと回答したが、それらの農家のほとんどはGMO作物に関する情報を待たず、環境被害や健康危害を過大に懸念材料にしている。ということは、君子豹変はお得意、合理主義のお国柄、もし政府を中心に啓蒙普及が行われれば大逆転もあり得るかもしれない。

<○○ スペイン QMV8>
現EU域内で唯一のGMO作物商業栽培国である。害虫抵抗性のBtトウモロコシは、害虫であるヨーロッパコーンボーラーに対して目覚ましい効果を上げており、農家に対しても好評である。04年2月16日に、農業大臣は新たにBtトウモロコシの9つのバラエティに輸入・栽培認可を与えた(04.02.24. USDA/FAS Gain Report SP4004)。

 これにより農家は2つのイベント(モンサント社MON810及びシンジェンタ社CG00256-176)に基づく16品種のBtトウモロコシを選択することが可能となった。栽培面積は98年の2万ヘクタールから始まり、03年は3万2000ヘクタールに達し04年には5万0000ヘクタールに増大するものと見込まれている。

 以上有力5カ国について俯瞰してみたが、こうした状況下で04年1月から6月まで<○○ アイルランド QMV3>が議長国を務めるEUは、いよいよ5月1日にGMO商業栽培国を含む10カ国の新規加盟国が加わり、歴史的な拡大を迎えようとしている。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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