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GMOワールド|宗谷 敏

土壇場のオージーGMナタネ大規模試験栽培

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2004年3月22日

 オーストラリアのナタネ生産量は162万トン(03/04年、以下同じ)で、667万トンのカナダを追う世界第二位の輸出国(生産量一位は中国)である。しかし、96年から商業栽培が始まり、既に68%がGMナタネのカナダに対し、オーストラリアにおいては未だにGMナタネは栽培されておらず、この点では際立った対照を示す。

 そのオーストラリアでも、ワタやカーネーションはGMで栽培されており、GMナタネの導入を巡り賛否両論が渦巻いているのは、世界中の農業国の例に漏れない。ただしGMに対するスタンスは各州毎に異なっており、GMナタネについてはニューサウスウエールズ(NSW)州とビクトリア州の動きが注目を集めている。

 連邦政府の遺伝子技術規制局(OGTR: The Office of the Australia’s Gene Technology Regulator)は、バイエル社とモンサント社の除草剤耐性GMナタネ(InvigorとRT-73)に対し、各々03年7月25日と03年12月19日に商業栽培の認可を与えた。

 なお、バイエル社のInvigor は高反収が見込まれるハイブリッドタイプである。ライバルのカナダでは、「GMまたは突然変異技術を利用した除草剤耐性(生産量の90%)+ハイブリッド」種子が既に生産現場ではトレンドであるが、92年の生産量20万トンからスタートした後発のオーストラリアナタネは、ハイブリッド化でも遅れをとっている。

 連邦政府が認可しても、実際にGMを栽培するか否かは各州政府の判断に委ねられており、西オーストラリア州及び南オーストラリア州は栽培禁止、タスマニア州、ビクトリア州及びNSW州はモラトリアム(暫定的に栽培禁止)状態にある(04.02.24. Sydney Morning Herald)。NSW州のGM商業栽培モラトリアムは06年までであるが、ビクトリア州は今年5月にモラトリアムの期限が切れる。

 従来NSW州ではごく小規模(2ヘクタール)でGMナタネの試験栽培が行われてきた。03年11月に、バイエル社とモンサント社は共同でさらに大規模な試験栽培(当初5千ヘクタールを希望したが3500ヘクタールに縮小された模様)を州政府に申請した。

 OGTRにより商業栽培が既に認可されているため、安全性を理由にこの試験栽培を止める手だてはなさそうだが、賛否両陣営の論争には一気に火がついた。引用記事は、オーストラリア最大の農民組織(1万3000人)であるNSW州農民協会が州政府に対し試験栽培を認可するよう要請したというもの。

参照記事
TITLE: Australian farmers back large GMO canola trial
SOURCE: Reuters
DATE: Mar. 16, 2004

 NSW州農民協会が試験栽培認可を求める根拠は、多くの農家がGMナタネを商業栽培すべきかどうかまだ決心がつかず、試験栽培を通じて得られるであろう情報がもっと必要だというもので、生産者の立場からはもっともな主張である。

 もちろん環境保護団体などからの反対の声も根強い。試験栽培を認めるべきか州政府に対し今週中にも答申を出す立場のNSW州GM作物諮問委員会でも、環境保護派委員が審議の途中で退席するなど意見は割れている(04.03.18. ABC)。

 大勢から諮問委員会は認可の方向で今週中に答申する公算が大きい。しかし、その場合でも州農業大臣がGMのコンタミネーションから農家を保護する法的措置がとられるまで最終的認可を保留すると述べており(04.03.19. ABC及び Sydney Morning Herald)、現在のところ事態は流動的だ。

 ところで、オーストラリアはGMなどバイオ工学技術にネガティブとの印象が強いが、研究開発は積極果敢に行われている。特に畜産大国として家畜などを対象としたバイオ工学関連のラインアップを取りまとめたものが下記の記事であるが、目を見張るものがある。

参照記事
TITLE: Australian research round-up
SOURCE: BioScience News & Advocate
DATE: Mar. 21, 2004

 これを眺めながら、最近のわが国における一部地方自治体の過剰とも思われるGM規制が、角を矯めて牛を殺すことにならねば良いがと思う春宵一刻。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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