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GMOワールド|宗谷 敏

環境リスク<風評被害、だと考えるワケ

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2004年6月28日

 先週のリードでも触れたが、6月16日、EUの専門家パネルはモンサント社の除草剤耐性GMナタネ(GT73)の輸入・販売認可の合意に失敗した。国別の賛否では、注目された新規10加盟国のうち3カ国が賛成、6カ国が反対に回り、1カ国は棄権した。また昨年12月8日のGMトウモロコシ(Bt11)に対する評価では、賛成した英国と反対だったフランスが各々立場を入れ替えた。

参照記事1
TITLE:‘New Europe’Rejects GM Vote
SOURCE: IPS, by Stefania Bianchi
DATE: Jun. 17,2004

 03年のナタネ生産量が177万トンある英国においては、環境放出にかかわる諮問委員会(ACRE)が、GT73についてジーンフロー(遺伝子拡散、交雑により組み換え遺伝子が広まること)のリスクに対する適切な対策・処置計画の提出を開発社(モンサント社)に要求しているという事情から、反対に回ったものである。

 ところで、ナタネの国内生産量がたかだか千トン程度の我が国においても、GMナタネの環境影響問題に対する関心が高まってきているらしい。FOOD・SCIENCEでも松永和紀氏が先月2回(関連記事1、関連記事2)にわたり、この問題に触れている。

 松永氏は、環境影響を6段階に分けた形で問題提起されているので、各々の項目に対する筆者なりの考えを示してみたい。

 (1)運搬中にこぼれるなどして種子が野外に出るか→輸入食用ナタネは全量製油用に使われる。大手製油メーカーの工場は一般的に臨海部に位置し、輸送船が直接工場の岸壁に接岸され、輸入原料ナタネは自社工場内で処理されるので外部へは出ない。

 しかし、一部内陸部の工場などへは港から陸送の必要があるため、積載物の転落もしくは飛散を防ぐため必要な措置を講じることを定めた道路交通法(第71条4項)の規定遵守が厳しくなってはいるものの、こぼれ落ちは否定できない。ただし、農水省が、「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づき行ってきたGM作物の環境安全性確認には、こぼれ落ちのリスクも当然評価対象に含まれている。

 (2)それは、自生、増殖するか→こぼれ落ちた場合、自生する可能性は当然あるだろう。しかし、一般に農作物はヒトが肥料を与えたり、病害虫から保護してやったりしなければまともには育たない。野生種に対して優占化する可能性は極めて低く、従って仮に自生してもそれらが増殖する可能性はほとんどないと考えられる。

 (3)周辺の非組み換えナタネや近縁植物と交雑するか→これらの交雑が起こるとする学術論文は、96年3月7日の「ネイチャー」に掲載されたデンマークの研究をはじめ英国、カナダやオーストラリアなどに存在する。我が国でも97年1月24日の第139回国会において、荒木清寛参議院議員からのGMナタネの交雑に関する質問に対し以下の政府答弁が行われている。

 「遺伝子組換えなたねを開発した事業者等が平成七年に我が国において実施した野外試験においては、当該遺伝子組換えなたねの周囲に人為的に近縁種を植え付けた場合において自然交配により種間雑種が発生する可能性は、当該遺伝子組換えなたねからの距離が五メートルの場合にあっては五パーセント、十メートルの場合にあっては〇パーセントであることが認められている」。

 「また、実際の栽培においては、ほ場及びその周辺に近縁種が除草されずに生育していることはまれであること、交雑によって種間雑種が発生した場合であっても、当該種間雑種が耐性を有するのは当該除草剤に対してのみであり、他の方法により除草が可能であることを考え併せれば、自然交配による種間雑種の発生を通じ、特定の除草剤に対する耐性をなたねに発現させる遺伝子が拡散することはないものと考えている」。

 上記は近縁種に対する影響についてであるが、同じセイヨウナタネ同士であれば距離0メートルの場合14.6%、10メートル離しても0.3%の交雑率となるという開発事業者によるデータもある。ただし、こちらは閉鎖系(虫媒などを防ぐ網掛けの状態)の試験であり、上記と全く同一条件ではない。

 (4)その結果、野外でGMナタネの個体群や遺伝子が安定して存在するか、及び(5)個体群が拡大したり、遺伝子が拡散していくか→(3)に引用した政府答弁書によれば、我が国においてこのようなことはまず起こりえないだろう。また(3)に列挙した諸外国の論文は、すべて人為的に行われた実験の結果であり、栽培目的以外に自然界でGMナタネの個体群が拡大したり、近縁種へ遺伝子が拡散していったりした事例は報告されていない。

 (6)これまであった種に、被害を及ぼすか→気楽に口にされる「環境へ悪影響を及ぼす」ことの最悪のエンドポイントは、従来から存在する種の絶滅であろう。我が国の在来ナタネは、「赤種」「箒種」もしくは「和種」と呼ばれ、東北地方の一部に自生しているらしいブラシカ属のキャンペストリス(B.campestris)系である。

 現在、一般にナタネと呼ばれるものは、キャンペストリス系とブラシカ属オレラセア(B.oleracea)系の交雑により生まれた「黒種」「欧州種」「朝鮮種」「洋種」などと呼ばれるブラシカ属ナプス(B.napus)系のセイヨウナタネである。国内でもこれらのセイヨウナタネが既にして優位を占めており、これはGMとはまた別の問題である。

 なお、輸入されてくる食用のセイヨウナタネはすべて交雑育種によってカナダで開発されたカノーラ種であり、ヒトや家畜に有害とされるエルシン酸(米国と日本では5%以下とされている)とグリコシノレートの含有量を下げてある。我が国では、02年に「キラリボシ」(農林48号)で、初の国産カノーラ種の実用栽培が行われた。02年以前に販売されていた「国産ナタネ使用」と謳ったナタネ油は、いったい何を原料としていたのであろうか?

 さて、こうしてみるとGMナタネがこぼれ落ちても我が国の環境に対し固有の悪影響を与える可能性はほとんどないと考えられるのだが、むしろ警戒すべきは風評被害であろう。自称科学評論家やGMに反対するグループは、ジーンフローなどを実リスク以上に過大に煽り立てるだろう。メディアは、99年2月、テレビ朝日によってもたらされた埼玉県所沢市産野菜の悲劇を二度と繰り返すべきではない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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