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GMOワールド|宗谷 敏

“政府クン”の成績は「可」だが宿題も山盛り〜NASレポート

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2004年8月2日

 7月27日、NAS(National Academy of Science、全米科学アカデミー)が公表した「遺伝子工学食品の安全性–意図しない健康影響評価へのアプローチ」(要約)は、遺伝子組み換え食品に対し、現在米国政府が行っている安全性評価方法に対する検証と提言である。

参照記事
TITLE: Composition of Altered Food Products, Not Method Used to Create Them, Should Be Basis for Federal Safety Assessment
SOURCE: For Immediate Release, The National Academies
DATE: July 27, 2004

 14名のパネルメンバーが18カ月間にわたり検討してきた、256ページもあるこの報告書を、幾つかのキーワードから眺めてみる。

 「ケースバイケース」と「プロダクトベース」:遺伝子工学は本質的に危険なプロセスではないが、他の方法と同様に、作り出された食品に挿入された遺伝子が毒素やアレルゲンを作らないかどうか、商品化以前にケースバイケースで調べられるべきだ。

 遺伝子の転送なども考慮するなら他の単純な方法より予期せぬ変化が起こる可能性は高いが、それらは放射能や化学物質を用いる方法より低度である。交雑育種のような伝統的な方法であっても予期せぬ変化を起こす可能性はあり、各々の安全性評価の範囲は単に食品を変えるために使われるテクニックに基づくべきではない。その代わりに、個々の食物製品中の成分・物質の品質や分量が意図しない健康影響を起こさないかどうかを精査すべきだ。

 「現在の安全性評価」:遺伝子組み換え食品を販売する前に用いられている現在の安全性評価は、個別に異なった成分を識別するために遺伝子組み換え食品をその従来からある食品のカウンターパートと比較する。

 この比較には伝統的な分析的テクニックが使われる。そして作物の物理的特徴の比較には、同じく農学が用いられる。動物飼養試験が健康影響を検出するために使われる。従来のカウンターパートと等しくない、あるいは栄養成分などが極端に変えられた食品に対しては、上市後も安全性評価が継続されるかもしれないが、新しい食品の安全性評価のためにもっとも適切な時間は上市以前の期間にある。

 「アフターモニタリング」と「トレーサビリティ」:予期せぬ変化を起こすかどうかを予測する現在の科学者の能力は限定されているため、より多くの研究がこのエリアでは必要である。場合によっては、プロダクトが上市された後も評価は継続されるべきだ。

 しかし、このモニタリングには市場で食品を追跡したり、それらを食べた消費者を識別したりする方法に欠けるという障壁が存在する。政府機関は、遺伝的組み換え食品を購入する消費者の傾向を把握する能力を向上させ、これらの食品のトレーサビリティを可能にするべきである。同時にヒトの健康上の変化を検出できるより良い疫学的な調査ツールも開発されるべきだ。

 「クローン動物由来食品」:クローン動物からの食品の安全評価も、作出プロセスよりプロダクトに集中すべきであり、非クローン動物からの食品をクローン動物から作られたそれらと比較するべきだ。現在まで、クローン動物由来の食品がより高いリスクを消費者に与えるという証拠はない。しかしながら、製薬目的で計画されるクローン動物が食物連鎖に入ることは厳格に阻止されなければならない。

 以上が「遺伝子工学食品の安全性–意図しない健康影響評価へのアプローチ」の要約(の要約)であるが、現在米国政府が行っている遺伝子組み換え食品に対する安全性評価システムを基本的に肯定しながら、さらにそれを発展させたフレームワークを提示している点が注目される。

 繰り返しになるが、「決して作出技術ではなく製品ベースで安全性を評価しろ」という指摘は最も重要である。また、評価内容では、タンパク質が毒素やアレルゲンを発現しないかという部分が最重点項目であり、そのためのデータベース構築も勧告されている。

 この報告書は、新たな提案実行に伴うコストに関しては一切触れていない。報告書の性格上もちろんそれはそれでいいのだが、どのような規制も実施やそれをクリアするためには必ずコストが伴うものであり、その意味からも過剰な規制は技術の発展を阻害する。当然ながら安全性は最重要であるが、ここのバランスは極めて難しい。

 本報告は米国の農務省(USDA)、食品医薬品局(FDA)および環境庁(EPA)がスポンサーとなっている。遺伝子組み換え食品規制を担当する3政府機関の通信簿は「可」であるものの、かなり大変な夏休みの宿題をもらってしまったようでもある。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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