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GMOワールド|宗谷 敏

あちら立てればこちら立たず〜WTOとバイオセーフティ議定書

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2004年9月27日

 WTOとバイオセーフティ議定書は、グローバリゼーションや自由貿易の推進と環境の生物多様性の保護を目的とする二つの国際的フレームワークである。そして、GMOに関するそれらの思想的対立、内容の相克や妥協を巡る諸問題は、論者にとってなかなか魅力的なテーマであり、我が国も含め今までにも数多くの論考が発表されてきた。

 それらの大部分は高度に専門的なことが難点であるが、米国のThe Pew Initiative on Food and Biotechnologyの論文(要約)は、むしろレポートといった扱いで問題点の絞り込み方が巧みであり、取り敢えず背景知識がなくても面白く読める内容になっている。
参照記事1
TITLE: International Agreements: The WTO and the Biosafety Protocol
SOURCE: AgBiotech Buzz: World of Food (Volume 4 Issue 3)
DATE: Sep. 22, 2004
 バイオセーフティ議定書の成立に当たっては、その対象となるLMOs(Living Modified Organism、改変された生物)の範囲を巡り米国・輸出国グループとEU・途上国グループの間で激しい論戦があった。LMOsを輸出しようとする国は、まず輸入国の事前合意を得なければならない(AIA手続き)とされたからである。
 LMOsの例として、遺伝子組み換えされた魚、昆虫、木、植物、環境放出を意図された微生物と家畜などがカバーされる。しかし、2003年11月に、(1)食品、飼料、あるいは加工処理の目的(コモディティ、FFPなどと称される)(2)隔離された研究施設内などでの使用(3)ヒトのための製薬目的(4)最終目的地のために国境を通過するだけの場合にはAIA手続きの対象外とする妥協が計られた。
 コモディティとしての食用または飼料用のトウモロコシは、船積書類にLMOsを含むかもしれないと記載すれば輸出が可能になる。しかし、そのトウモロコシは潜在的に種子としても使えるという矛盾があり、そこから新たな争点が生まれた。
 大量のコモディティの貿易に不必要な抑止を避けるためとして妥協を引き出した米国が、なおも警戒しているのがバイオセーフティ議定書に盛りこまれた予防原則の概念である。予防原則に訴えさえすれば、輸入国側に科学的なジャスティフィケーションなしでLMOsの輸入を禁止する権利が生ずると解釈する専門家は多い。
 これは明らかにWTOと矛盾する。94年のガット・ウルグアイラウンドで成立したSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)とTBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)がWTOの拠り所であり、健康と安全性を守る目的のために国が貿易上の制限を課すのは、その制限が科学に基づいている限りにおいてのみこれを許すとされているからだ。
 食品の安全性に関する科学的論争を解決するために、WTO はコーデックス委員会に助けを求める。42年の歴史を持つコーデックス委員会は、食品に見いだされるあらゆる成分・物質に対しベースラインの安全基準を設定する。それらすべての標準は最新の科学的知見に基づき、そしてまた周期的に更新される。
 コーデックスは法的強制力こそ持たないが、既にしてデファクトスタンダードである。国際貿易論争プロセスへのコーデックスの重要性は、米国政府とビジネスグループがプロセスに「科学的ではない」要因を導入するかもしれないいくつかのコーデックスへの提案についてなぜ懸念しているのかを説明する。
 それらは、EUによって提唱されたGM食品のための義務表示とトレーサビリティの必要条件であり、コーデックスのフレームワークでリスク分析に「予防原則」の使用を促進しようとした動きである。米国政府とビジネスグループは、コーデックススタンダードが危険ベースの科学的分析に基づいている必要があるとしてこれらに反対した。
 米国のBIO(バイオ工学産業組織)は、科学的ではない文化的な、政治的な、社会を考慮したイントロダクションは消費者への利益なしに貿易を制限し、WTO 協定に違反することなく「EUがバイオ工学を利用した食品に対して貿易障壁を確立する方法を可能にするだろう」と述べている。
 以上が要約だが、GMOワールドのバランスとねじれを最も大きいくくりで概観するとこういうことになる。当然であるが、上記の重要な争点のいくつかはいまだに結論が出てない。
 さて、先週と先々週で目立ったトピックを上げておこう。ブラジル議会はGMダイズ作付けと販売を許す法案の法令化に定数不足で失敗、議決は10月へ延期(9月16日)。EUはMonsanto社のGMトウモロコシMON863の輸入認可を延期(9月20日)、MON863に関してはGreenpeaceなどが安全性審査データは不十分などと主張しており、既にMON863を承認済みのオーストラリア・ニュージーランドにも波紋が広がっている。米国の環境保護庁(EPA)の科学者が、GMベントグラス(芝)が風媒により試験栽培地から21キロも離れた非GM芝と交雑していたのを確認したと発表(9月20日)。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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