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GMOワールド|宗谷 敏

チャイナ・ジレンマ〜中国はGMコメの商業栽培を認可するか?

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2004年11月22日

 今年は、国連が定めた国際コメ年であった。これを記念して、日本でもIRRI(国際イネ研究所: International Rice Research Institute)と農水省の共催による「世界イネ研究会議」が、11月4日から7日までつくば市で開催された。また、GMイネに対するメディアの関心も高まった1年でもあった。それらの中から、最近のものを2本紹介する。

参照記事
TITLE:Soya on rice to go-Brazil and China are set to legalise genetically modified crops
SOURCE:The Economist
DATE: Nov. 18, 2004

 ヨーロッパの消費者からのプレッシャーにもかかわらず、ブラジルではGM大豆の禁止令を撤廃し種々の制約を取り除く準備が整い、GMワタを商業栽培している中国も、GMコメ商業栽培に向けて同じようにGM規制緩和を進めつつある、と英国のThe Economist誌が述べている。

 コムギは全生産量の20%程度が国際貿易されるため、主に輸入国からの反対に遭いGMコムギの商業化は頓挫気味だ。一方、コメは精米換算で約4億トンの世界生産量に占める貿易量が2500万t(6%)のみという自国内消費型作物である。3400万haもの水田を有し、世界生産量の約30%(世界第1位)を産出する中国でも事情は同じだ。仮に輸出先国の日本や韓国からGMコメ生産への反対があっても、自国内の生産者と消費者にベネフィットがあれば、そちらが優先される。

 中国のコメ改良技術はハイブリッド品種の開発と普及で有名だが、GMにおいても技術面での準備は万全だ。既に3年にわたり除草剤耐性、耐病性のGMコメの試験栽培が行われてきており、農薬減・反収増など目覚ましい効果を上げたと伝えられている。特に80%農薬が減らせたというデータは魅力らしい。

 もともと飛行機からの空中散布が利用できる先進国に比べ、中国の農家は農薬曝露のリスクが高い。消費者も農薬残留をより強く警戒するため、価格が同じなら80%がGMコメを受け容れるという先進諸国が目を剥くような調査結果もある。

 もちろん障害がない訳ではない。環境省は環境リスクに懸念を抱いており、Greenpeaceなど環境保護団体の反対運動も健在である。しかしそれにもかかわらず、実質的に国家的決定と目されるバイオ安全委員会のGMコメ商業化認可は間近いだろう、その結果来年には商業栽培が始まるのではないか、とThe Economist誌は予想する。

 そこから起こりうるリアクションとして、興味深いシナリオが提示されている。ハイブリッドコメ普及により中国の農家は毎年種子を購入することに慣れており、やっかいな種子の自家採取問題を気にする必要がない米Monsanto社(GMワタで既に販売実績を持つ)の参入や、中国に遅れまいとしてもう1つの人口・農業大国インド(GMワタを商業栽培)が、GMコメ認可を急ぐかもしれないというのだ。IRRIが本拠を置くフィリピンと共に、インドでも既にGMコメの試験栽培が行われている。

参照記事
TITLE:China cooks up a rice storm
SOURCE:Asia Times, by Chee Yoke Heong
DATE: Nov. 5, 2000

 さて、もう1本のAsia Times誌であるが、こちらも主役は中国である。国内の穀物生産量と農家収入を引き上げる必要に迫られた北京は、来年までにGMコメの商業栽培を認可するかもしれないというReutersの見方が示されている。しかし、IRRIはGMコメの商業化は少なくとも3年先と予測しており、ISAAA(国際アグリバイオ事業団)も現在研究パイプライン上にあるGMコメは、いずれも商業化までに5〜8年を要するだろうと述べる。

 次に並べられているGMコメのショーケースはなかなか多彩だ。短期に商業化が可能なものは、除草剤耐性(米国ではBayer社のグルホシネート耐性GMコメが既に認可されているが、商業栽培は行われていない)、Bt(害虫抵抗性)及び白葉枯病抵抗性である。他に開発の諸段階にあるのが、いわゆる「ゴールデンライス」などのベータカロチンや鉄分・亜鉛など栄養成分を強化したもの、様々な耐病性、白葉枯病バクテリアなどの病原体抵抗性、かんばつ、塩分や冠水などの環境ストレス耐性、ピラミッディングやスタッキングにより様々なトレイトを組み合わせたマルチトレイトなどがある。

 記事は、「ゴールデンライス論争」にも触れている。途上国のビタミンA欠乏症解決の鍵を握ると推進派は主張する。しかし、英国で教鞭を執るかたわらISIS(the Institute of Science in Society)を設立し、学識も備えた女性GM反対活動家として著名なMae-Wan Ho博士やGreenpeaceはその効果を疑問視している。

 世界のコメの90%以上を供給するアジアには14万種の品種が存在すると推測され、ほとんどが小規模な農家により栽培されている。これらの背景事情から、GM導入による環境リスクや特許権を握る巨大企業による種子支配が起きないかと、反対派は気が気でない。しかし、背に腹は代えられない人口・食糧問題を抱える中国、ジレンマは続く。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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