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GMOワールド|宗谷 敏

一見矛盾するが〜英国FSEsとBrightのGM環境影響評価報告

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2005年1月24日

 昨年11月、Natureにも掲載された英国のThe Bright Link project報告書が、英国学士院から公表された。4年間にわたり実施された野外栽培実験の結果、春播きの除草剤耐性GMサトウダイコン栽培は、その管理方法に留意するなら小鳥などの野生生物に対し悪影響を与えず、むしろベネフィットがあるとの結論である。

参照記事1
TITLE: GM beet ’can benefit environment’
SOURCE: BBC, by Alex Kirby
DATE: Jan. 19, 2005
 これは、03年10月に発表された政府主導のFSEs(農場規模評価)報告書とは、一見矛盾するように思える。FSEsでは、GMと非組み換え作物との対照栽培試験をトウモロコシ、ナタネおよびサトウダイコンについて行った結果、GMトウモロコシのみが非組み換えに比べ、環境負荷が少ないという結論を導き出しているからだ。
 しかし、研究目的や実験設計を少し詳しく見れば、この二つの結果は対立関係にはなく、相互補完的なものだと気づかされる。FSEsが、GMを英国農業に採り入れたならどのような影響を及ぼすかを、単一シーズンごとに非組み換え作物と比較した連続の記録だったのに対し、Bright は、特定された個々の区画において輪作という実農業体系に加えられたGM作物栽培がどのように反映されたかを、作物管理法の相違をふまえて検証している。
 Brightの研究チームは、除草剤をスプレーするタイミングを早めにして1回に限定した結果、秋における雑草種子(生物多様性の一つ目安であり、小鳥のエサとなる)有効性は在来農法に比べ最高16倍に達したと主張する。この点は昨年も強調しておいたが、「環境への影響は(GM)作物自体によるものではなく、作物を栽培する手法によるものだ」という結論の論拠となっている。
 もし異なった作物管理が行われるなら、環境へはまた異なった結果が現れる。研究者たちの、単一のGM作物や農薬を切り離して単純に良し悪しと即断するのではなく、作物管理を複合的に考えて、生物多様性影響評価へは全体的なアプローチをとるべきだとする主張は傾聴すべきだろう。
 さて、ここからはGM反対派である環境保護団体Friends of the Earthなどの主張(05.1.19. Independentなど)も聞いてみよう。まずは01年および02年の研究が、農業バイオ関連企業のコンソーシアム(ABC)から資金提供を受けているという批判(こういうことをまず言いだすのは、自身が不利な場合に多い)。Bright研究チームは、この事実を否定せず、結論や仮定に一切の制限や干渉を排除する条件で、補助を受けたと反論している。
 この研究はバイオ産業から資金を受けて、GMサトウダイコン栽培は農地の野生生物に悲惨な影響を与えることを示している政府の研究(FSEs)に対抗する窮余の試みにすぎない(上述した通り、片方がもう一方の結果を否定することにはなっていないので、これは理解不足またはメディア向け対策の発言)。それは長期的展望を持たず、農家は複雑な農業テクニックを拒絶するだろう(であるなら、あまり心配して騒ぐことはないとも思うが)。
 ところで、高邁な環境論争はここまでにし、この問題の経済的側面を考察している部分(昨年1月公表)も見てみよう。まず、上述の管理方法で除草剤散布が一回で済むなら農家の除草剤コストセーブは当然で、最高80%カットとある。研究チームは、コストセーブと環境保護のダブル・ボーナスと言いたそうだ。

参照記事2
TITLE: Economic consequences for UK farmers of growing GM herbicide tolerant sugar beet
SOURCE: Broom’s Barn Research Station, by M. J. May
DATE: Jan. 21, 2004
 英国における春播きサトウダイコンの位置は、オオムギやコムギの輪作を区分けする中間作物である。作物毎に支持価格を定めている現在のEUのCAP(共通農業政策)は06年で終わるから、サトウダイコンも市場価格が下がり、収益性の減少に伴い生産量低下の影響を受ける可能性がある。
 除草剤耐性GMサトウダイコンが持つ可能性は、英国のサトウダイコン産業の未来の競争力にとって重大でありうる。それは、地方経済を引き上げ、英国におけるエタノールベースのバイオ燃料工業の設立と経済効果に対して重要であろう。これは英国が、京都議定書の温室効果ガス排出削減の協定を遵守するのに有益だ。
 再び高邁な環境問題に戻ってきてしまったが、このようないわばマイナークロップまで、グランドデザインを描いて真剣に将来的国益を論じているのが、ヨーロッパのとある島国の実態である。一方、アジアのとある島国は、目先のこぼれ落ちとやらに狂奔している。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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