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GMOワールド|宗谷 敏

他力で2極化〜国連2機関から途上国バイテク報告書

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2005年5月16日

 「バイオテクノロジー」と「発展途上国」をキーワードとする報告書が、2つの国連機関から相次いで公表された。FAO(食糧農業機関)とUNCTAD(国連貿易開発会議)である。米国とEUの代理戦場として、GMOを巡る途上国の悩みは尽きない。

 5月6日公表されたFAOの「途上国における作物バイオテクノロジー研究と応用の現況(予備的査定)」概略は以下の通りである。

 「いくつかの途上国はバイオテクノロジー・プログラムを開発し、その最先端に接近しており、十分な研究能力を持つと査定される。ウイルス抵抗性パパイヤ、サツマイモおよびキャッサバや非生物的ストレス(塩分や乾燥)耐性のコメなどが開発ラインにある。

 これまで途上国で商業化されたGMOの大部分は、先進国から獲得され、トレイトも除草剤耐性と害虫抵抗性に限定された作物(ワタ、ダイズ、トウモロコシ)に集中していた。しかし、いくつかの途上国は、バナナ、キャッサバ、ササゲ、オオバコ、コメおよびソルガムなどの作物に、非生物的ストレス耐性と品質向上のような食糧安全保障に関連したトレイトの研究を行っていた。

 リードしているのはアルゼンチン、ブラジル、中国、キューバ、エジプト、インド、メキシコおよび南アフリカであり、バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、カメルーン、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、チュニジア、ジンバブエ、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドルおよびベネズエラなどがこれらに続くが、他の途上国の研究能力は限定される。

 しかしながら、研究にはいくつかの重要な欠落もある。例えば、莫大な損失が引き起こされているにも拘わらず、線虫抵抗性に関する分野での研究報告がない。また、収穫後に起きる損失に関する研究は基本的だが、無視されている。アフリカ、東ヨーロッパ、ラテンアメリカ、近東の諸国が、GMO技術からの利益を完全に得るのを可能にするためには、バイオセーフティー能力の構築が必要とされる。

 GM以外のバイオテクノロジーは多くが商業利用されているが、その社会・経済学的影響を査定する研究は極めて少ない。それは、すべてのバイオテクノロジーの広範で効率的利用に向けての研究と技術政策及び投資を助成するから、緊急の重要な分野である」

 一方、UNCTADから5月11日公表された「GMOs とGM製品の国際貿易:国家と多国間の法律上のフレームワーク」は、こう述べている。

 「GMOは世界のもっと貧しい国に対し困難な選択を提起する。アグロ・バイオテクノロジーあるいはGMOに基づいた農業は、生産量を上げ、農民のために利益を改善し、国内の食糧欠乏を緩和し、そして新しい品質を持つ製品の生産を容易にするかもしれない。
 しかし、それは同時に途上国の既存の伝統的農業手法を混乱させ、種子の入手経路を限定し、予想不能な環境や健康面での問題を引き起こす潜在的可能性も秘めており、生物多様性に打撃を与え、倫理的・宗教的な懸念をも提起する。
 さらなる懸念として、国際貿易の流れが危機にさらされるかもしれない。先進国が自国内の関心や態度に基づいたGMO政策を採ったので、農産物輸出に依存する途上国は、相手国の要求や期待に迎合するため、自国内のプライオリティを曲げることを強要される場合もあるだろう。

 特にヨーロッパでは、消費者の意向を考慮した企業がNon-GM調達に地道をあげていると感じられる。主にこのようなヨーロッパに対する輸出機会逸失の懸念から、アンゴラ、エチオピア、レソト、マラウイ、スーダン、ザンビアおよびジンバブエを含む多くのアフリカ諸国がGNOに輸入禁止令を課して、一部は食糧援助さえ断ったり条件を付けたりした。

 報告は同じく法律上の紛糾の種を示す。国がどのように自国内的にGMO穫の問題を扱うか決めることが自由であるとしても、国内規則はWTOの規定に従わなければならない。同時に、アグロ・バイオテクノロジーは、個別の法律的手段による多国籍間の規則であるカルタヘナ議定書が合意された分野でもある。この特珠な議定書とWTO 規定との間の相互影響は、すでに複雑なシナリオにさらなる難題を加える」

 FAOは、ちょうど1年前の年次報告書でGMOにポジティブな見解を示し、Greenpeaceなど反対派からの猛反発を招いた。この報告では、GMOのリスクを押さえつつ積極的に利用することを、途上国に示唆する。一方、UNCTADは主に国際貿易上の懸念に立脚した論旨を展開している。

 象徴的なのは、両報告書に例示されている途上国がほとんど重ならないことだ。自国による意志決定ができず、もっぱら米国とヨーロッパの対立的枠組みの反映で外圧・他力による二極化が進むなら、それはどちらの側の途上国にとっても決して喜ばしいことではないだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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