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GMOワールド|宗谷 敏

難航する18条2項(a)〜カルタヘナ議定書第2回締約国会議

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2005年6月13日

 モントリオールにおいて、5月30日から6月3日まで開催されたカルタヘナ議定書第2回締約国会議(COP/MOP-2)には、118カ国とEUから約800名が参加した。しかし、注目の第18条第2項(a)に関するimplementation(実行手段)については、またもまとまった結論を得られなかった。

 カルタヘナ議定書の第18条とは「(遺伝子組み換え生物等の)取扱、輸送、包装、表示」であり、その第2項(a)とは「食料もしくは飼料として直接利用し又は加工することを目的とする改変された生物(FFPいわゆるコモディティ)に添付する文書」である。

 これらを巡る論点については、04年2月にクアラルンプールで開催された第1回締約国会議に関する拙稿を、また今回の前哨戦については、先月の拙稿を参照願いたい。

 今回の結果を一言で要約してしまえば、環境省がホームページに6月7日アップした「カルタヘナ議定書第2回締約国会議の結果について」に尽きる。曰く「食料、飼料及び加工用のLMOの輸出に際して添付する文書の内容については、議定書において発効の日から2年以内にその詳細な要件を定めることとされており、本年3月に開催された専門家グループによる検討を踏まえ議論されたが、次回締約国会議において継続して審議されることとされた。」要するに、何も決められずに先送りされた!?

 UNEP(United Nations Environment Programme:国連環境計画)の6月6日付プレスリリースは、内容的にもう少し詳しいが、結論が変わる訳でもない。詳細な会議ログもあるのだが、かなりマニアックな世界に突入してしまう。

 という訳で、ここでは今回の会合を巡るより下世話な?トピックをいくつか挙げておこう。先ず、先月の拙稿で扱ったカナダ政府のエチオピアTewolde Berhan Gebre Egziabher博士に対するビザ発給拒否事件であるが、最終的にビザは発給された。しかし、Egziabher博士以外にも、ビザを拒否された途上国メンバーが存在し、途上国グループに拭いされない不信感を抱かせる結果になった。カナダ国内でも、GM食品反対派が団結するなど、運動の激化が懸念されている。

 議場において途上国グループと対立するのが、輸出国側が形成するマイアミグループ(アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、チリ、ウルグアイおよび米国)だが、今回の18条2項(a)討議を脱線させた主犯格は、ニュージーランドとブラジルだと途上国グループは名指しで非難している。ニュージーランドでは、国内政治問題にまで発展した。ブラジルは、次回第3回締約国会議(06年3月)の開催地でもあり、動静が注目される。

 第2回締約国会議直前に、突如カルタヘナ議定書を批准した中国については、面白い分析がある。EUからの武器輸入を米国からの圧力で妨害された中国が、EUのご機嫌取りに議定書を批准したというものだ。真偽の程は分からぬが、中国の批准に至った動きは、かなり唐突なものであったことは事実である。

 最後に日本であるが、5月30日の本会議においてGreenpeaceが、日本国内のGMナタネこぼれ落ちなどを理由にLMOの国際的モラトリアムを求めるスピーチを行った。しかし、いつもの極論だけに特に大きな話題とはならなかった。従って、日本の代表団も直接相手にはしなかった。

 なお、日本国内においては、4月末にこのこぼれ落ち報告のために張り切りすぎたNGOが、サンプル採取を理由に企業の私有地に不法侵入し、とがめられるという事態も起きたようだ。GM反対運動も、行き過ぎると社会常識を欠くという見本か。

 という訳で、周辺に数々のエピソードを振りまき、その割に本舞台はアンチクライマックスのまま、カルタヘナ狂詩曲2楽章も閉幕した。18条2項(a)に関する今回の結末は、3月の専門家会合の頓挫からもある程度予想はされていたが、このままではいつまでたってもまとまらないのではないかという危惧は、現実味を帯びてきた。

 真剣に議論された800余人の方たちには申し訳ないが、本来環境を問題とすべき議定書が、「環境への放出を意図しないFFP」について最大難航することは、ある意味マンガチックでもある。主に政治的理由からこのまま停滞が続けば、せっかくの議定書自体の基本構造や、最悪の場合には存在理由まで問われかねないだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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