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GMOワールド|宗谷 敏

ついに「人体実験」〜GMOのアレルギー誘発性、他

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2005年8月22日

 お盆休みを挟んでの2週間、GMOワールドではあちこちでいろいろ気になる動きがあった。8月8日の郵政解散・衆院選一色の国内紙誌ではほとんど取り上げられていないが、取りあえず注目すべき記事を5本ほど並べてみよう。

(1)8月8日 欧州委員会MON863の飼料への使用を認可

 欧州委員会は、Monsanto社のコーンルートワーム等の鞘翅(コウチュウ)目害虫抵抗性トウモロコシMON863の輸入および飼料への利用を、向こう10年間にわたり認可したと公表した。例の拙稿でも触れたRat Studyでもめていた品種である。

 食品への利用については、9月の農業閣僚会議で検討されるが、例によってまとまる可能性はほとんどない。今回の認可は、Syngenta社のスィートコーンBt11(04年5月)、Monsanto社の除草剤耐性トウモロコシNK603(04年10月)に続くモラトリアム解禁後3番目となるが、いずれもいわば最後の手段である欧州委員会のデフォルトによる認可であるのが辛いところだ。

 加盟国の意見不一致、一部の不服従や消費者の抵抗感にも拘わらず、今後も決定を下すべきモラトリアム期間中の滞貨であるGM作物のアプリケーションは山積み状態である。GM作物の域内栽培についても共存ルールは明確さを欠く。そんなEU政府のジレンマを8月17日のReutersが取り上げている。

(2)8月8日 メキシコのトウモロコシからGM遺伝子発見されず

 米国オハイオ州立大学などの研究者たちによるメキシコ・米国合同チームは、03年から04年にわたりメキシコ南部オアハカ州の18個所に存する125の畑から採取した870のトウモロコシの15万3千粒をPCR検査した結果、GMトウモロコシの痕跡はなかったとthe National Academy of Sciences(全米科学協会)の会報に発表した。

 オアハカ州は、01年11月29日に米カリフォルニア大学バークレー校のIgnacio Chapela氏らが、野生トウモロコシから組換えBtコーンに特有の遺伝子断片を検出したとNature誌に発表、大論争が起き02年4月にNature誌が論文掲載を撤回するという前代未聞の事件に発展したのと同じ場所である。

 もちろんこの調査結果をもって、ジーンフローが過去になかったとか今後起きないとは言えない。しかし、種子管理の徹底や農家を教育する努力等により、リスクは軽減できるという可能性を示すものとして注目される。

(3)8月8日 オーストラリア産農産物に相次ぐGMコンタミ

 ビジネス上の理由から州レベルでGMOの商業栽培モラトリアムを貫いてきたオーストラリアが揺らいでいる。去る5月末、ビクトリア州(東部)からの対日輸出向けNon-GMナタネから0.01%レベルのGMナタネの混入が発見され、フランスの検査機関で確認された結果、Bayer Crop Science社の除草剤グルホシネート耐性ナタネTopas19/2であると7月1日に確認された。

 幸いオーストラリアも日本も安全性確認済み(日本ではHCN92として確認)だったため大事には至らなかった。Topas19/2はオーストラリアにおいて商業栽培はもとより試験栽培も行われていなかったため、原因は不明・調査中だ。

 ところが、今度は西オーストラリア州(西部)でも同じGMナタネTopas19/2の微量コンタミネーション疑惑が持ち上がった(確認検査結果待ち)。同じNon-GM政策を採る隣国ニュージーランドでもトウモロコシからGM成分が検出され、こちらはGMダイズ由来製品(ダイズ粉)からのコンタミと特定された。

 オーストラリアでは、賠償法策定を望む声も起こっており、こういう事態が続くと先々週の拙稿で触れたAPに関する国際的合意形成が急がれる。

(4)8月8日 ジンバブエへの食糧援助物資が立ち往生

 南アフリカ共和国の協会組織がジンバブエに送った食糧など援助物資を載せたトラック3台が、ジンバブエ当局によって国境でブロックされた。トウモロコシ製品にNon-GM証明書が添付されていないというのがその理由である。

 南部アフリカの食糧不足は深刻だ。来年半ばまでに約1千万人の人々が食糧援助を必要とするだろうとの試算もある。ジンバブエは国情・政情がいろいろと難しい国ではあるが、ペーパーワークを理由に人命が危機にさらされることだけは避けてもらいたい。

(5)8月10日 GMトウモロコシとダイズからアレルギー誘発性見つからず

 GM反対派の攻め道具の一つにGM作物(食品)は組み換えられたDNAが発現させるタンパクのアレルギーのリスクが充分調べられていない。動物実験、人体実験がなされていない、というのがある。確立された安全性評価方法は当然存在するが、それだけでは満足できないという論拠である。

 ところが、ポルトガルの医師団により初の「人体実験」が行われた。ボランティアは、アレルギー体質のある1歳から41歳まで(平均年齢12.4歳)の106人(男性48人、女性58人)であり、調査対象とされたGM作物は、いずれもEUで承認済みの害虫抵抗性トウモロコシ Bt11並びにBt176(Syngenta社)、 除草剤耐性トウモロコシT25(Bayer Crop Science社)、害虫抵抗性トウモロコシMON810 および 除草剤抵抗性Roundup Readyダイズ(Monsanto社)であった。

 皮膚へのバッチテストと血清のIgE免疫抗体反応により行われた検査の結果、いずれのGM作物もアレルギー誘発性を示さなかったという。検査を実施した研究者のコメントにもあるとおり、母集団を拡大しなければもちろん完璧とは言えないが、こうまでしてもおそらく納得しないであろう一部反対派の頑迷さにはほとほとあきれる。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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