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欧州委員会、矢継ぎ早のGMO認可〜Monsanto社のGT73

宗谷 敏

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 2005年8月31日、欧州委員会はMonsanto社の除草剤(グリフォサート)耐性ナタネであるGT73の輸入および飼料・工業分野への利用を、今後10年間にわたり認可したと発表した。去る8月8日の同社の害虫抵抗性トウモロコシMON863に続く今月二回目の認可だ。

参照記事1
TITLE: EU Office OKs Monsanto Rapeseed Oil Use
SOURCE: AP
DATE: Aug. 31, 2005

参照記事2
TITLE: Commission authorises import of GM-oilseed rape for use in animal feed
SOURCE: Press Release, EU
DATE: Aug. 31, 2005

 GT73(国によってはRT73と表記されるが同じものである)は、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、フィリピンなどで広く食品などへの利用が認められており、米国、カナダ、オーストラリアおよび日本(カルタヘナ法による再審査中)では栽培が認可されている。

 EUにおいては、03年1月にオランダで輸入および飼料・工業利用のアプリケーションが、新環境放出指令Directive 2001/18/ECに基づきMonsanto社より提出された。なお、GT73から得られた製品である精製ナタネ油は、すでに97年の時点でEUにおいて食品使用のために承認されている(こうしておかないと原料にナタネ油を含む加工食品などが輸入できなくなる)。また、GT73は抗生物質耐性マーカー遺伝子を含んでいない。

 オランダ政府当局とEFSA(欧州食品安全庁)により各々安全性が確認されたが、04年6月に開催された専門委員会は合意に達せず、付託された04年12月20日の環境大臣閣僚会議においても可決に必要な規定の票数を得られなかった。従って、いつもの通り欧州委員会が自らの決定を採用したものである。

 今回の認可は、Monsanto社の除草剤耐性トウモロコシNK603(04年10月)および害虫抵抗性トウモロコシMON863(05年8月)に続き、新環境放出指令Directive 2001/18/ECに基づく3番目の認可であり、Syngenta社のスィートコーンBt11製品(04年5月)を含めて、モラトリアム解禁後としては4番目の認可となる。

 ところで、EUにおいてナタネはヒマワリと共に重要な油糧種子資源であり、04年には域内25カ国合わせて約1,500万トン(因みにヒマワリは400万トン)の記録的生産量を達成した。特に食用以外への用途も昔から堅調であり、最近では余剰ナタネ油をバイオディーゼル燃料として利用することが、ドイツなどを中心に脚光を浴びている。

参照記事3
TITLE: Oilseeds Report 2005
SOURCE: FAS/USDA
DATE: Aug. 31, 2005

 だからといって、この先栽培が認可されてもGT73が域内でどんどん栽培されるかといえば、Friend of the EarthやGreenpeaceなど環境保護団体の抵抗運動が依然根強く、そう簡単にことは運ばない。政府がGMOに対してポジティブな姿勢を取り、ナタネ生産国でもある英国でさえ、GT73に対しては環境放出にかかわる諮問委員会からジーンフローへの抑止対策が開発メーカーに求められている。

 しかし、生産効率や国際競争力も含めた経済性を考えればGMナタネは捨てがたい。欧州委員会としては、来る10月に決定が下されると目されている米国などからのWTO提訴に向けて、モラトリアムで滞貨となっている承認作業を少しでも前へ進めておきたい意向もあるが、同時に将来を見通した布石でもあることにも注目すべきだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)