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GMOワールド

EU域内でのGM商業栽培と試験栽培〜フランスとスイスの場合

宗谷 敏

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 EUというのは面白いところだ。GM試験圃場破壊の嵐が吹き荒れるフランスでは、農家がさっさっとGMトウモロコシの商業栽培を始めている。一方、GMモラトリアムなどなんでも直ぐに国民投票に持ち込むスイスでも、とかくセンシティブなGMコムギの野外試験栽培に成功したと伝えられる。

参照記事1
TITLE: French farmers head for gene maize harvest
SOURCE: Reuters
DATE: Sep. 6, 2005

 9月6日付フランスのEigaro紙が、国内において既に1000ヘクタールのGMトウモロコシ(Btコーン)が栽培されていると報じたことに関するReutersのフォローが上記である。主な取材先はAGPM(トウモロコシ栽培者連合)。なお、フランスのトウモロコシ全栽培面積は、170万ヘクタールに達する。

 AGPMは、情報源が不明であるEigaro紙の1000ヘクタール説を否定した上で、確認しているBtコーンの栽培面積は500ヘクタールであり、半分以上が商業目的の栽培であると述べた。内訳として、商業栽培目的が200ヘクタール、種子生産が140ヘクタール、試験栽培が80ヘクタール、残りの80ヘクタールは環境査定プログラムの一環だが、結局は商業販売されるだろうとのことだ。

 反収をヘクタール当たり10トンとすると、2800トンが商業ルートに乗ることになる。これらの全量はスペインに輸出され、動物飼料として消費される見込みだという。スペインでは、04年に6万ヘクタール(全栽培面積の12%)とBtコーンが既に大規模に商業生産されている。

 商業栽培された品種に関しての記述は記事にないが、フランスおよびスペイン両国で現在商業栽培されているBtコーンは、Monsanto社のMON810系統のみと推測される(Syngenta社のEvent 176系統も法規制上は栽培可能だが、抗生物質耐性マーカーを含むため自粛されているようだ)。

 フランスは域内屈指の農業国でありながら、GM共存農業を担保する国内法策定では遅れを取っている。拘束力のない独自のガイドラインを有するAGPMも、その限界を認めており、今後は共存法制定に向けた議論が活発化するものと思われる。

 その共存法関係では、ガイドラインを各国に丸投げして批判を招いていたEU政府も、ようやく重い腰を上げたようだ。来年の4月までにEU共存法立案の可否を決めるだろうというMariann Fischer Boel農業委員長のコメントを9月11日付のReutersが伝えている。

参照記事2
TITLE: EU to consider GMO crop-growing laws after April
SOURCE: Reuters by Jeremy Smith
DATE: Sep. 11, 2005

 スイスのチューリッヒにあるスイス連邦工科大学(ETH Zurich : Eidgenossische TechnischeHochschule Zurich、Allbert Einstein博士の母校として有名)において、04年3月から実施されていたGM病原菌抵抗性コムギの試験栽培が成功のうちに終了したと公表された。

参照記事3
TITLE: Swiss GM crop trial yields positive results
SOURCE: Swissinfo, by Matthew Allen
DATE: Sep. 8, 2005

参照記事4
TITLE: Successful field experiment with transgenic wheat by the Swiss Federal Institute of Technology Zurich
SOURCE: SeedQuest
DATE: Sep. 9, 2005

 この実験は、商業化などを目的とはしない基礎研究であり、コムギに寄生する黒サビ病菌などクロボキン目(Ustilaginales)の菌類に対して抵抗性を持つGMコムギのプロトタイプについて、その効果とヒトの健康や環境への影響が調査された。

 実験は、ラボから温室、そして隔離野外圃場という順番で進められたが、野外での試験により、導入されたKP4 遺伝子がコムギの菌類に対する抵抗を10%改善したことが示された。従来からある同種の抵抗性遺伝子は、10%以下であるという。花粉の飛散や土壌分析の結果は、ヒトや環境に対する新たなリスクの増加を示さなかった。

 野外試験の重要性を強調する科学者は、それに反対するGreenpeaceなど環境保護団体への対応のために、プロジェクトの予算が約3倍も超過し28万米ドルに達したと嘆いている。「政治的反対は重要な実験を止めるのに十分な理由にはならない。自分は化学物質を削減するGM植物を正当に評価する。」(GMOウオッチャー 宗谷 敏)