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GMOワールド|宗谷 敏

GM作物の環境負荷低減や経済効果は真実か?〜英国PG Economics社報告書

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2005年10月17日

 GM作物の本格商業化から10年、栽培面積拡大は事実だが、推進派の喧伝する環境負荷の低減や経済的効果は真実なのか?各論はよく目にするものの、世界規模の視点で全体像を捉えた数量的データは存在しなかっただけに興味深いテーマである。英国の調査会社がこれらの分析に挑戦した。

 調査を行ったのはロンドンのPG Economics社である。なお、同社は独立系コンサルタントだが、一部の調査費用や基礎データをMonsanto社に負っていることは、最初に断っておくべきだろう。環境負荷の低減効果を数値化することは難しそうだが、エコロジカル・フットプリント(「生態系の足跡」、以下EFPと略記)という産業経済活動と地球生態系の持続可能性とを比較するツールが用いられている。

 EFPは、カナダBritish Columbia大学の研究者たちにより1993年に開発された。ある地域のヒトによる自然資源の消費量と自然の生産能力を測定比較し、必要とされる土地面積(自然環境への依存度を示す)で指標化(ヘクタール/人で表す)したものである。食糧や木材、化石燃料と森林などから水資源まで環境学の様々な分野で、国連をはじめ各国・地方政府、NGOがこのツールを政策立案などに利用している。

 たとえば、WWF(世界自然保護基金)は、96年からこの計算式を用いた各国のEFPを公表している。ちなみに、96年時点ですでに世界の産業経済活動は地球の環境容量(持続可能であるための環境負荷の最大値)の約1.3倍に達し限界を超えている。「Living Planet Report 2004」では、日本のEFPは4.3 ha/人、米国は9.5 ha/人と公表されたが、世界合計(公平割当面積)は1.8 ha/人なので、世界中の人々が日本人や米国人と同じ暮らしをするためには、地球が各々2.4個または5.3個必要になるという。

 さて、前振りがいささか長くなってしまったが、話をPG Economics社の報告書「GM作物:栽培開始から9年間(96年〜04年)のグローバルな社会経済と環境への影響」に戻そう。同社のGraham Brookes理事は、GM作物が今や国際的問題である温室効果ガス排出削減と、農薬使用量低減に重要な貢献をしたことは明確であり、その結果EFPを引き下げたのだと主張する。

参照記事1
TITLE: Biotech Crops Reduce Pesticide Use, Greenhouse Gas Emissions
SOURCE: PG Economics Limited
DATE: Oct. 11, 2005

 「9年間にわたり18カ国がGM農産物を栽培した結果、約18億リットルの化石燃料消費節減と不耕起栽培採用に伴う大気中への二酸化炭素放出抑止効果により、04年には100億キロ以上の二酸化炭素が環境中から除去された。これは英国の自動車登録台数の5分の1に相当する500万台を1年間撤去した場合と同等になる。

 同時に農薬の使用量にも96年以来6%、約1億7250万キロ相当分の減少をもたらし、これは農薬の主成分を鉄道貨車1514輌分削減したことになる。04年における世界の農薬使用削減率はヨーロッパの耕地作物に使用される全農薬主成分の3分の1に匹敵する。

 農薬削減に伴う効果はEFPを14%減らし、この効果が顕著な作物は、GMダイズとGMワタにおいてであり各々19%と17%のEFPを減少させた。国別では、先進国の米国とカナダを筆頭に中国、南アフリカ、アルゼンチンなどの途上国群がEFPを大きく減らした。

 GM作物は環境効果に加えて、農場レベルでの純経済利益向上にも貢献している。96年以後、生産性向上と効率化利益により世界の農業所得は累計270億ドル増加した。この増加分は、主要GM作物4種(ダイズ、トウモロコシ、ワタおよびナタネ)の世界生産額への付加3〜4%に相当する。

 GMダイズは170億ドルの収入増を記録し、最大の増加を示した。一方、GMワタ生産者も9年間で収入の65億ドルを改善した。米国とアルゼンチンの農家は、過去9年間に各々約100億ドルを獲得し、最も大きな恩恵に何度も浴した。中国のGMワタ生産者は40億ドルの収入増を記録した。

 GM作物導入は、数値化するのが困難な間接的利益ももたらす。それらには、営農管理の柔軟性拡大、不耕起栽培の促進、生産リスクの低減、作物の品質向上などが含まれる。ISAAA(国際アグリバイオ事業団)によれば、世界の18カ国で825万人以上の農民がGM作物を採用し、そのうち90%はリソースの不足に悩む途上国の生産者である。」(筆者注:バイオ(作物)、除草剤耐性(ダイズ)の訳語は、すべてGMに統一してある。)

 04年度におけるバイテク農作物の全商業栽培面積は、世界の耕作地面積の約5%だが、もしこれだけのベネフィットがあるなら「EUはこのような環境的・経済的恩恵を逸失しており、環境と農業収益を改善する機会を拒んでいるのはEU国民として理解に苦しむ」というBrookes氏の他紙のインタビューにおける発言ももっともだと感じられる。

 GM作物毎と国別のさらに詳細な分析結果を含む本報告書全文は、PG Economics 社のホームページで閲覧できる。また、10月18日からはアブストラクトの翻訳文が、日本モンサント社のホームページに掲載される。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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