ホーム >  FoodScience過去記事 > GMOワールド > 記事
こちらのページは以前、日経BP社 FoodScienceに掲載されていた記事になります。
当サイトから新規に投稿された記事については、こちらよりご覧ください。

GMOワールド|宗谷 敏

女王の研究室〜Florence Wambugu博士の理想と意見

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2005年10月24日

 このところFlorence Wambugu博士のメディアへの露出が目立つ。彼女は、ケニアにあるAfrica Harvest Biotech Foundation International(AHBFI)の創設者であり現CEOである。米誌Forbesにより’reinvent the future’(「未来を作りかえる」)世界の15人の一人にも選ばれた博士の主張に、今週は耳を傾けてみよう。

 Wambugu博士とAHBFIについては、2年前の拙稿で、また博士が関係するソルガム栄養改善プロジェクトについても今夏紹介した。GM推進派をして「Wambugu博士のクローンが欲しい」とまで言わしめ、いまやGMOワールドにおける「アフリカの女王」の地位にあるのが彼女だ。

 先ず、南アフリカ共和国で開催されたバイオ工学会議における10月18日の発言から。「一部のアフリカ諸国によるGM栽培禁止や抵抗の多くは、適切とは思えない技術を導入している外国企業に対してあった。貧しい人々に利益をもたらす地元のプロジェクトが出現するにつれ、GM作物はアフリカでより広く受け入れられる可能性がある。

 アフリカ諸国は自前で開発したGM作物を持たない。我々は社会の関心と貧困を扱うのを保証するアフリカンモデルを必要とする。ソルガム栄養改善プロジェクト(この説明は上述の拙稿と重複するので避ける)は、その良いモデルだ。このようなアフリカ主導型のプロジェクトが増えれば、GM農産物の一般への受け入れが進むだろう。」

 次は、ソルガム栄養改善プロジェクトを取り上げた10月12日の記事から。「アフリカで栽培された農産物により食物の栄養を改善することは、結核やエイズを含む健康問題に対する解決の一環であり、Bill and Melinda Gates財団がソルガム栄養改善プロジェクトに資金提供している理由だ。

 草の根レベルで健康状態を改善することは、アフリカの経済的発展を加速させる持続可能性のサイクルをスタートさせるだろう。生産性向上は設備投資を呼び、やがて余剰生産物を販売できるようになる。

 アフリカの8億人のうち、2億人が1日に1ドル以下で暮らす。住民の4分の1が、1日1回以下しか食事を採れず、飢えに悩む。2億人の10%が、完全に食糧援助に依存している。国連などは2015年までに飢えを半減させることを目標としているが、それさえ容易なゴールではない。

 食糧援助に感謝はするが、それは飢えに対する真の解決ではない。援助で暮らせば、人々は人間の尊厳を失う。我々は今、ここで考える必要がある。彼らは何を知るべきかから始めて、持続可能性のある生産に彼らが到達できるよう手を貸すべきだ。」

 最後に、9月19日付のThe Standard紙の長いインタビュー記事から。「農業バイオ工学には、古くからの発酵プロセスや組織培養もある。組織培養されたバナナはケニアで50万人以上の農民に利益をもたらし助けた。我々はまだGM農産物は商業化していないが、複数の研究が継続している。

 ケニアの農民がGM作物へのアクセスを持てば、他の国々で証明されたと同じ利益をあげられると我々は信じる。しかし、GM技術はケニアの食糧保全への挑戦のすべてを解決するわけではない。GM技術は触媒だと見なす必要がある。

 バイオ工学が、科学的に数量化された利益をすでに証明したことは強調されるべきだ。しかし、環境、人あるいは動物に対するリスクは、証明されない「可能性があるリスク」にすぎない。

 ヨーロッパ諸国はバイオ工学を拒絶したというのは本当ではないし、必ずしもGM農産物に反対ではない。背景に米国との複雑な貿易戦争があることを理解すべきだ。EUが、食物余剰問題を持つことに注意すべきだ。だから、生産を増やす技術を望まない。ケニアは反GM活動家たちのキャンペーンに、無批判に耳を傾けるべきではない。」

 洋の東西、国を問わず出る杭は打たれる。それにこれだけハッキリした批判をすれば、嫌がらせとしか思えぬ訴訟こそ起こさぬものの、反GM活動家たちも黙ってはいない。英国の反GM運動NGOであり、情報収集能力にも優れるGM Watchは、Wambugu博士を目の敵にする。

 GM Watchは、時にGreenpeaceなどより過激で、たとえば、先週紹介したGMOに温室ガス抑制効果があるとするPG Economics社のレポートを「風変りな主張」とクソミソにけなしている。彼らのWambugu博士攻撃は、彼女の組織培養によるバナナの成功物語はでっち上げの誇大宣伝だというものだ。

 研究者でありながら、同時にアフリカンバイオ広告塔の役割も背負ってしまったことはWambugu博士の宿命である。先進国から多額の寄付を引き出し、お互い様とは思うがDupont社などの多国籍企業を利用する彼女の政治的手腕は抜きんでている。それ故に、Cleopatraの悲劇的運命を辿らないことを祈る。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

⇒ GMOワールド記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。

お知らせ

FOOCOMが「第1回食生活ジャーナリスト大賞」を頂くことに決まりました(3/28)
FOOCOMはこのほど、食生活ジャーナリストの会(JFJ)の「第1回食生活ジャーナリスト大賞(ジャーナリズム部門)」…【全文を読む】