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GMOワールド|宗谷 敏

医食同畑も困るので〜Dowの植物体ワクチン製造をUSDA認可

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2006年2月6日

 USDA(米国農務省)が、Dow AgroSciences社のPMVs(Plant-Made Vaccine:植物体が作るワクチン)製造プロセスに対し初の認可を与えたという1月31日のニュースは、製薬植物の食用農産物への混入が気になる食品業界にとっても、無縁な話題ではないだろう。

参照記事1
TITLE: Dow’s plant-made vaccine wins USDA nod
SOURCE: UPI, by Steve Mitchell
DATE: Jan. 31, 2006

 GMにより植物体をワクチン製造に利用する利点は、製造コストはもとより動物を用いた場合に比べ衛生管理面やアレルギーリスクの低減などのメリットがある。一方、ワクチン製造用の植物体を屋外で栽培した場合には、食用農産物とのコンタミが大きな問題となる。

 Dow AgroSciences社は、ワシントン大学で開発されたthe Concert Plant-Cell-Produced Systemと呼ばれる技術を用いることにより、GM植物を利用するワクチン製造を植物体全体ではなくその細胞(タバコが使われた)に限定して利用した。したがって、圃場や温室を必要とせず、すべてラボ内のステンレス製タンクの中で作業が完結するため、野外における食用植物とのコンタミ懸念から解放される。

 商業化は先のことらしいが、家きんのニューカッスル病予防ワクチンの製造が最初の目標となるようだ。まずは動物用からだが、鳥インフルエンザ用のワクチンなども、当然ターゲットに入ってくるだろう。さらに、ヒト用のPMVs製造にも、このプラットフォームが利用できるのではないかという点も、注目を集めている。

 この分野は、ヒトのインシュリン製造を目論むカナダのSemBioSys Genetics社、ヒトの母乳に含まれるタンパク質ラクトフェリンとリゾチームをGMイネで製造しようとする米国カリフォルニア州のVentria Bioscience社、GMタバコで炭疽病ワクチンや卵巣ガン治療を狙う米国ミズーリ州のChlorogen社などがリードし、多士済々である。

 ヒト用PMVsには、製薬コストを下げ、ハンドリングの容易さや衛生面でリスクのより高い注射などを介せず経口投与が可能な利点があり、開発社にとっても莫大な利益が期待される。しかし、野外での試験栽培や製造には、StarLinkのトラウマを抱える食品製造グループからの猛反発や、これに呼応した当局の規制強化などハードルも高い。

 つい最近も、有機栽培が盛んなカリフォルニア州からミズーリ州への移転を計画したVentria Bioscience社は、地元の食用コメ業界などからの激しい抵抗に遭った(結局資金面で頓挫)。このジレンマは、ターミネーター技術の復活を望む声の一因にもなっているのだが、そのような環境下でDow AgroSciences社から、別のアプローチによるブレークスルーの可能性が示された意味は大きい。

 ところで、ヒト用PMVsに対する一般社会からの受容はどうだろう?この点に関して、米国アリゾナ州民706名を対象としてアリゾナ州立大学が実施したアンケート調査の結果が、昨年のAgBioForum誌に掲載されており興味深い。

参照記事2
TITLE: Social Acceptance of Plant-Made Vaccines: Indications from a Public Survey
SOURCE: AgBioForum, by Dwayne D. Kirk and Kim McIntosh, Arizona State University
DATE: Volume 8, Number 4, 2005

 この論文中にあるPMVs と農業(バイオ)との関連を示す「図−1.」は、非常に分かりやすい。3つの技術分野、即ち「(1)現代農業」、「(2)バイオテクノロジー」および「(3)ファーマシューティカルズ」の交点が示される。

 (1)と(2)の融合により「農業バイオテクノロジー」が誕生し、(2)と(3)の合体により「バイオファーマシューティカルズ」が出来る。(1)と(3)の交差は「医薬植物とサプリメント」を生む。そして、(1)、(2)、(3)の全てが重なるとPMVsのような「プラントメイドファーマシューティカルズ」になる。

 肝心のアンケートは、経口ワクチン(PMVs)と注射ワクチンとの比較において、回答者の意向を調べたものであり、かつ回答者の知見の高低による誤差も含まれるが、回答者の59.8%が経口ワクチンの方を好み、68%が受け入れるとの結果が示された。

 併せて考えなくてはならないのは、回答者の40.9%は、ほとんどのワクチンが既に遺伝子組み換えだと信じていたという誤解だ。実際にはFDA(食品・医薬品局)が認可した35種類のワクチンのうち遺伝子組み換え技術を利用して生産されているのはたった2種類(6%)にすぎない。

 これらの結果をもって、アンケートを実施した研究者たちの言うようにPMVsの将来展望が約束されているとは思わないが、畑における生産をスルーするDow AgroSciences社の取り組みなど、思いがけないアプローチから道が開ける可能性は当然あるだろう。

 なお、先週取り上げたロシアIrina Ermakova博士のRat Studyに対し、2月3日カナダのCBCに新しい反論が掲載されたので紹介しておく。

参照記事3
TITLE: Don’t swallow genetically modified statistics
SOURCE: CBC, by Stephen Strauss
DATE: Feb. 03, 2006

 「統計数字のみを鵜呑みにするな」「この研究はpeer reviewを絶対にパスしない」などとかなり手厳しい論旨である。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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