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GMOワールド|宗谷 敏

パンになっても愛してくれますか?〜GMコムギ再び

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2006年2月27日

 2004年5月、顧客の反発を懸念した小麦業界の猛反対に押された形でMonsanto社は、除草剤耐性GMコムギの商業化を延期する経営判断を強いられた。あれから2年、このところGMコムギを巡る話題が復活している。しかし、その主役の座にあるのはMonsanto社ではない。

 再挑戦しそうなのはMonsanto社とはライバル関係にあるSyngenta Seeds社だ。同社のGMコムギは試験栽培が実施されている段階であり、米国政府に対する安全性承認申請はまだ行われていない。

 それにもかかわらず、全米小麦生産業者連盟(NAWG)、米国小麦連盟(UWA)および小麦輸出貿易育成委員(WETEC)の小麦業界団体御三家は、テキサス州サンアントニオで2月初旬に開催された穀物産業会議において、既にこのGMコムギに対するサポートを合同決議している。

参照記事1
TITLE: U.S. wheat groups working to bring back GM wheat
SOURCE: Reuters, by Carey Gillam
DATE: Feb. 6, 2007

 あれほど顧客先の意向を気にしていた米国小麦業界に、なにが原因で心変わりが起こったのかは、かなり興味深い。一貫してこのテーマを追っているのがReutersのCarey Gillam記者だ。

参照記事2
TITLE: Syngenta seeking assurances on GMO wheat project
SOURCE: Reuters, by Carey Gillam
DATE: Feb. 22, 2006

 その理由は大きく分けて二つある。まずトレイトの違いがあげられる。Monsanto社が除草剤耐性だったのに対し、Syngenta Seeds社のGMコムギは土壌真菌のフサリウムに対する抵抗性を持つ。根から侵入し葉を枯らすフサリウム菌はコムギ生産の難敵であり、最近でも米国小麦農家が蒙る被害や対策費用は何百万ドルにも達する。

 二番目の理由は、コムギ栽培面積の下落傾向だ。農家はリスク回避から複数の作物を栽培するが、経済収益性の高い作物がより好まれ、比率は高くなる。コムギは、最近ダイズやトウモロコシにその栽培面積を奪われる傾向にある。理由は明白だ。GM技術を利用したラウンドアップレディーダイズとBtトウモロコシ群の収益性がGMを持たないコムギに勝り、農家の人気を勝ち得ているからに他ならない。

 Syngenta Seeds社のGMコムギに並々ならぬ関心を寄せるのは米国だけではない。隣国カナダでもこの事情は同じだ。カナダでは、農家の作物選択でコムギが直接競合するのはナタネになるが、GMを中心とした除草剤耐性と高反収のハイブリッドを組み合わせたカノーラの品種が最近農家に人気である。

 さらにナタネは、EU諸国を中心にバイオディーゼル特需が期待できる作物だ。既にオーストラリアはこの恩恵に浴し始めている。現在、カナダナタネはGMを理由にEU向け輸出の途が閉ざされているが、カナダ政府は非食用バイオディーゼル向けナタネ輸出の可能性をEUに打診していると聞く。仮にこれが認められれば、カナダナタネの栽培面積はさらに拡大して、コムギの作付面積を圧迫する可能性がある。

 危機感を抱くカナダ小麦業界は、GMコムギに対しより慎重ながら米国の動向を無視し得ない。2月中旬、これまで保守的な姿勢でとかく批判を浴びてきたカナダ小麦局(CWB)が、GMコムギの有用性をさらに研究することに前向きの姿勢を示したと伝えられている。

参照記事3
TITLE: Canadian Wheat Board agrees that further research on GM Wheat useful
SOURCE: Resource News International, by Phil Franz-Warkentin
DATE: Feb. 17, 2006

 記事の最後に言及されているように、BASF Canada社がGMを使わずに得意の化学薬品による突然変異技法を用いて開発したCLEARFIELDトレイトの除草剤耐性コムギは、既にカナダの種子登録を受け商業化されている。

 Monsanto社の挫折を目の当たりにして、商業化には慎重姿勢を崩さないSyngenta Seeds社だが、北米小麦業界の置かれた上述の状況から、数年のうちに案外あっさり商業化される可能性も否定しえない。ただし、それを植えるかどうかは、あくまで経済収益性に鋭敏な農家の選択である。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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