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GMOワールド|宗谷 敏

なぜ、今「ターミネーター」なのか?〜共存への切り札という可能性

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2006年3月27日

 カルタヘナ議定書第3回締約国会議に引き続き、ブラジルのクリティバでは2006年3月20日から31日、生物多様性条約(CBD :Convention on Biological Diversity)第8回締約国会議が開催されている。ここでは「ターミネーター」技術のモラトリアム解除を巡る論議が注目を集めており、久しく火種に飢えていた反対派もその阻止に向けて盛り上がりを見せている。

参照記事1
TITLE: Why Canada should support Coexistence crops
SOURCE: University of Guelph in Ontario by Robert Wager
DATE: March 22, 2006

 「遺伝子組み換え農産物と食物の論争(大分部が仮説)は終わりそうもない。虚偽またはほとんどありそうもない一つの恐怖物語が喧伝されると、すぐに他のメディアに洪水が起きる。疑いなくこれは計画的である。カナダは、バンコクでの国連生物多様性会議で、GM農産物への遺伝子使用制限技術の研究開発に対するモラトリアム終了を要求した(05.2.14. 拙稿稿参照)とき、スズメバチの巣をつついてしまった。最近、いくつかの国がカナダの要求に同調した。

 遺伝子使用制限技術(GURTs)とは、組み換えられたDNAが他の植物に意図しない転送を起こすことを抑止するシステムの総称であり、いくつかの異なった方法ある。しかし、これらのシステムにすべて共通するのは、組み換えられた遺伝子とトレイト(特徴)が他へ移行する可能性を妨げる。

 GURTを導入したGM種子は、例えば発芽しなかったり、花粉が不能になったりする。いずれにしろ、組み換え遺伝子は他の植物体に広がらない。これが、反対者がこれらの技術を「ターミネーター」と呼ぶ理由だ。しかし、隣接する畑同士の交雑の可能性を排除することから、より適切な表現は、「共存作物」という言葉である。これらの技術は、反対者たちによる大規模な恐怖を生み出すキャンペーンの最大の標的だった。

 翌年のための農家の種子採種を妨げることから、反対者は「共存作物」が途上国の農民に脅威だと言う。しかし、「共存作物」は途上国の農民を対象としたものではない。それらは、既にハイブリッドや組み換え種子を毎年購入している先進国の農民のために設計される。これらの種子は高価ではあるが、はるかに良い産出を上げ、生育時に環境を守るか、少ししかコストがかからないから、結局農民は利益を得る。北米で栽培されるトウモロコシは、50%が組み換えでハイブリッドだ。カナダのカノーラも70%以上が組み換えである。殺虫剤の使用削減、毒素菌の汚染が少ないから健康に良いトウモロコシ、飽和脂肪酸フリーのカノーラ油などを含め、利益は証明されている。

 「共存作物」の開発と実用化は、現在の組み換え作物にいくつかの利点を与える。組み換え作物の非合法な栽培と共に、水平方向への遺伝子移動の問題はなくなるだろう。そのため、 組み換え農産物と有機農産物間の交雑問題もなくなるだろう。

 おそらく、これが特定のグループをして「共存作物」の発展に激しく反対している理由だ。実際、組み換え農産物からの花粉が、有機証明の脅威にまったくならない。国際有機農業運動連盟(IFORM)は、異種交雑に一切の閾値を認めていないが、「共存作物」が導入されればもはや有機農産物の地位を脅かさない。IFORMは、組み換え農産物からの交雑のための義務的検査を主張しなくても良くなる。

 「共存作物」は、生物多様性に対する脅威であると提唱されてきた。反対者が、カルタヘナ議定書が「共存作物」を禁止すると主張する。しかし、議定書第2条にはこう述べられている:『締約国は、人の健康に対する危険も考慮して、改変された生物の作成、取扱い、輸送、利用、移送及び放出が生物の多様性に対する危険を防止し又は減少させる方法で行われることを確保する。』(筆者注:環境省訳)

 「共存作物」は、組み換え農産物から他の植物への遺伝子移動を抑止するので、組み換え農産物へのその導入は、生物多様性に関する国際的合意に基づくカルタヘナ議定書と調和している。北米では、毎年約6万品種の種子が販売されている。遺伝子組み換えは約100品種にすぎない。不妊の GURT技術を持つ100の遺伝子組み換え品種が、6万の非組み換え品種に脅威だと主張することは、ほとんどこじつけにすぎないと思われる。

 遺伝子移動を阻止することは、もう一つの農業バイオ工学のエリアでも重要だ。それは、健康と経済に莫大な利益を持つ植物ベースによる製薬である。一投薬毎の薬品開発に100ドルのコストがかかっていたのに、植物体利用では数ペニーでそれが可能である。もちろん、「製薬農作物」を成育させる環境安全性は詳細に考慮されてきた。食品と製薬生産作物との間の分離を保つためには、非常に手の込んだ規則がある。

 「製薬農作物」にGURT 技術を加えることは、近縁種へ花粉が移転する可能性を完全に排除することで、さらに安全性を高めるだろう。

 世界全体がこのような開発から利益を受ける。ワクチンの一部地域への配送を妨げた冷却問題もなくなるだろう。経口ワクチンを含む「製薬農作物」が、それが必要とされる場所で栽培されるだろう。将来的な「製薬農作物」開発には、肝炎とノーウォークウイルス用のワクチンが含まれる。何億もの人々が、農業バイオ工学のこれらの発展から利益を得る立場にある。

 10年に及ぶバイオ工学作物の栽培は、消費による有害性を一切証明することなく、莫大な環境利益、より良い収益とより健康に良い食品を証明した。カナダは、「共存作物」研究開発への科学ベースのアプローチ復活の要求に対し称賛されるべきだ。農業バイオ工学の中に「共存作物」を加えることに多くの利益があることは明確だ。」(抄訳終わり)

 さすがカナダにおけるバイオ工学推進派の牙城的存在であるGuelph大学の研究者らしい主張であるが、なぜ、今GM推進派がこの技術復活に躍起なのかがよく理解できる。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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