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GMOワールド|宗谷 敏

東西表示騒動〜インドのGMとEUのオーガニック

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2006年5月29日

 「本日は、残留農薬ポジティブリスト制度施行記念日につき休載!」とはいかないらしい(実は、食品業界周辺に身を置く者の例外ではなく、筆者もこの問題では結構忙しい)ので、インドとEUにおけるGMとオーガニックの表示に関する話題を並べて書く。

 Btワタを巡ってとかくお騒がせのインドだが、1955年制定の不純食品防止法(the Prevention of Food Adulteration Rules: PFA)を改正し、GM食品表示義務化を検討していることは、昨2005年末の同国国内紙の報道などでも伝えられていた。

 この動きに関連し06年4月7日、貿易大臣は、全GM食品輸入に当たっては、遺伝子工学認可委員会(the Genetic Engineering Approval Committee: GEAC)の事前許可が必要になり、違反は刑事罰対象という外国貿易政策を発表する。当然、ダイズ油にもこれが適用されると考えられ、北・南米のGMダイズ栽培・輸出国に緊張が走った。

 この背景には、インドのダイズ油を中心とした植物油脂自給率の低下と、輸入依存の構造がある。政府は、国産振興のため輸入ダイズ油に最大45%の高額関税を課してきており、さらに06年6月には50%に上げたいという計画が、WTOなどで批判を浴びてきた。貿易自由化の流れの中、これに代わる非関税障壁に利用されるのではという懸念だ。

 外圧や貿易業界の反発は激しく、ここからインドの迷走がはじまる。5月に入ると、政府は3カ月後の7月7日まで、この執行を延期すると発表した。ここらあたりから、貿易省の勇み足には環境省の関与があったとか、恥ずべき失政だという国内メディアからの批判報道が見られるようになる。

 肝心のGM食品表示義務化は、5月22日にドラフトが保健・生活保護省から公表されたが、なかなか厳しい表示規則であり、施行は60日後という。そして、手続きは残るものの輸入精製ダイズ油など加工食品はどうやら対象外となるらしいと、5月26日のReutersなどが伝えている。

参照記事1
TITLE: India to ease controls on gene-modified oils
SOURCE: Reuters
DATE: May 26, 2007

 これが事実であれば、「過ちてはあらたむるに憚ることなかれ」とは言いながら、わずか2カ月足らずでかなり恥ずかしい変更だ。行政は実行可能性に乏しい制度を作るべきではない。わが国のポジリス制度就中いわゆる一律基準とやらとか改正駐車違反取締が、こんな道を歩まないよう切望する。

 一方、EUでは5月22日、農業・水産閣僚理事会が開催された。農業関係の議題は「有機農産物生産と有機製品表示」並びに「GM、慣行及び有機作物の共存」の二つである。これが、もめない訳がない。

参照記事2
TITLE: EU nations divided over organic food rules
SOURCE: AP, by Constant Brand
DATE: May 22, 2006

 有機製品にEU共通ロゴマークを貼る案(最終製品の95%が有機原料であることが条件)は、加盟各国の有機表示に慣れた消費者を混乱させるという意見が出たが、大筋合意に達したようだ。より鮮明に対立が現れたのは、有機農産物へのGM農産物の意図しない混入を、0.9%まで許容するという欧州委員会提案だ。

 ベルギー、議長国オーストリア、イタリア、ギリシャなど10カ国あまりが、ゼロトレランスに近い保証をすべきと反対した。これに対し、欧州委員会農業・農村開発担当Mariann Fischer Boel女史(デンマーク)は、閾値の引き下げは有機農家の経費負担を増やし、急成長してきた有機製品の販売を阻害するだろうと現実主義路線で反論する。

 共存問題に関しては、ポーランド、オーストリア、フランス、ルクセンブルグ、ハンガリー、ドイツなどが、明確な規則の欠如(現在はガイドラインのみ)について懸念を表明し、ポーランドやギリシャは、特定地域のGM栽培禁止令を求めた。結論的には、4月の共存会議の流れを受けて、農業閣僚から、共存のための規則策定を推進することが欧州委員会に要求された。

 さらに具体的作業としては、環境担当 Stavros Dimas氏(ギリシャ)に懸案の慣行栽培用種子に対する GMO種子混入閾値案作成が、欧州委員会全体に6月末までに加盟各国の共存規則やガイドラインを収集し評価することが、各々業務依頼された。

 振りかえれば、EUは91年にCodexのガイドラインに則した有機農産物に関する生産基準を導入したが、05年12月に欧州委員会からレビューが提案された。ここで、有機農産物へのGM農産物の意図しない混入を、一般慣行農産物と一切区別しない0.9%という閾値が示され、Friends of the Earth などGM反対派からの猛反発を招いた。

 また、ここにいたる背景には、欧州委員会の02年5月共存農業シナリオ公表および03年7月の共存農業提案と、02年12月の有機食品・農業のための欧州アクション・プラン可能性分析および04年6月の同アクション・プラン提案という大きな流れとフレームが存在している。

 この先成立するかどうか分からないが、有機へのGM閾値0.9%は、インドとは逆に極めて現実的に共存農業を見据えた政策である。キツネやタヌキが跋扈するEUは、なかなかしたたかだ。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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