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GMOワールド|宗谷 敏

南アフリカの憂鬱〜アフリカ唯一のGM商業化国の表と裏

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2006年6月5日

 GM試験栽培に励む国やらリスクを理由に全面拒否する国やら、アフリカいろいろな訳だが、唯一のGM商業栽培国が南アフリカ共和国だ。整備された関連法規を持ち、ISAAAレポートによれば順調に栽培面積を拡大している。「しかし、・・・」という論説が、種子業界の専門紙「Seed Quest」に掲載された。

参照記事1
TITLE: The communication factor in African biotech crops
SOURCE: Seed Quest, Editorial by Wynand J. van der Walt
DATE: June 2006

 「遺伝子組み換え技術は無害なうちにスタートしたが、まもなく嵐に出くわした。牛乳の低温殺菌が受け入れられるのに100年かかったことは、現代ではほとんど慰めにならない。ひどいコミュニケーション戦略が、積極行動主義者と消費者懸念のための肥沃な温床を産む。

 南アフリカは、1990年のBtワタ試験栽培から始めて、97年にBtワタ、98年に Btトウモロコシ、2000年に除草剤耐性ダイズを商業化し、GM作物で早いスタートを切った国の一つだった。現在では、トウモロコシの29%、ワタの92%、ダイズの52%がGMだ。

 90年以前の最初のバイオセーフティガイドラインは、心配した科学者たちにより起案され、97年のGMO法令のために基礎を提供した。これは、研究施設の登録から商業生産、製品の輸出入にいたるまでGM技術のスペクトルを全てカバーする世界でおそらく最も包括的な GMO 法律だ。

 決定は、国家科学諮問委員会と独立した批評家により推薦された8つの官庁からの公務員により構成されるGMO理事会によってなされる。バイオセーフティと必要手続きは毎年強化された。

 商業利用が認可されているのは、害虫抵抗性のワタとトウモロコシ、除草剤耐性ワタ、トウモロコシおよびダイズとワタの掛け合わせだ。トウモロコシでの掛け合わせは認可過程にある。

 小規模の自作農家と商業農家の両方がGM技術に賛成した結果、GM種子はすぐに市場に受け入れられた。GMトウモロコシは04年の14.5%から05年には29.4%へと倍増し、GM掛け合わせのワタは、05年9月に承認されるとすぐに40%のシェアを得た。

 新しいGM品種として干魃耐性のダイズ、トウモロコシおよびピーナッツ、ウイルス抵抗性サツマイモおよびトウモロコシ、害虫抵抗性ジャガイモなどが、多くは地方の研究所で試験栽培されている。先端的な研究が、林業とサトウキビでもなされている。

 南アフリカは、アフリカ大陸でGM商業作物を増やす唯一の国のままである。ケニヤはGMトウモロコシとサツマイモの試験栽培を開始した。ブルキナファソは Btワタの試験栽培を増やしている。エジプトはいろいろなGM作物を試験している。

 しかし、南部アフリカ開発共同体(SADC)の他のメンバー国は、一時的な反GMの姿勢を維持している。なぜ多くのステークホルダーと政府が、他の者の経験から学ばなかったのか、そして大事な要因の合図を見逃し続けるのかを理解するのは難しいままである:コミュニケーション。

* 98年からバイテク作物が貿易に帰結的意味を持っているだろうという事実を警告されたにも拘わらず、南アフリカ政府はSADCにおいて主導的役割を果たさなかった。03年に子供や一般大衆に焦点を合わせるまで、公共のコミュニケーションが行われなかった。

* 反GMロビイストは、食品恐怖が一部のメディアに受けがよいが、本当のターゲットが政策と法律が作られる議会の政治家であることを知っていた。国会議員との対話に参加する科学者はほとんどいない。結果として、議会で意見は割れたままだ。

* 科学者が、討論やロビー活動の場に見当たらない。科学的・専門的組織は、バイテクについて事実の意見を発表しなかった。皆、忙しすぎるように思える。AfricaBioが、バイテクコミュニケーションのために唯一の声のままだ。地元や多国籍バイテク企業があまり目立たないことを好む。多分、彼らは常に国際化された積極行動主義のターゲットであることを悟らない。

* 意見が一致した GMO意思決定プロセスがあるにもかかわらず、政府は声を揃えて話をしない。環境が、用心から過剰規制を行う傾向にある。上級官僚の間で、不適当な実用的協議が起きる。顕著な例は、他省と相談なしに貿易産業省が、危険物質を扱っている条例に滑り込ませたGM成分表示のための広範な必要条件を含む消費者保護法案を発表したことだ。

* SADCは、地域の普通の市場に入ることを計画するが、バイオセーフティに対するものを含めて、たいていの関連法規がまだ調和させられていない。少数の加盟国を除き、アフリカは、近代農業の実践を採用することについて、立ち往生している唯一の大陸のままだ。

 南アフリカは、02年バイテクに積極的な戦略を採用し、地方毎のバイテク革新センターに約6500万米ドルの立ち上げ資金を提供した。この素晴らしいスタートや規範的法律とGM作物栽培にもかかわらず、この国では有意義な事実のコミュニケーションがまだ不十分だ。

 損害は二倍になるかもしれない:実用性とコストの密接な関わりを考慮することなしに、進行中の規制システムを強化することは、地方への技術の適用を圧殺し、そこの政治家たちが迷っている隣国に入り混じったメッセージを送ることになるだろう。

 おそらく我々のすべては、古いことわざを思い出すべきだ:「もし緊急のことに焦点を合わすなら、重要なことを忘れるだろう」。(抄訳終わり)

 アフリカ諸国では、農業の研究開発と社会の開発ニーズとの間にギャップがあるということがよく指摘される。最先進国の南アフリカでは、それが先鋭的に表出しているのかもしれない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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