ホーム >  FoodScience過去記事 > GMOワールド > 記事
こちらのページは以前、日経BP社 FoodScienceに掲載されていた記事になります。
当サイトから新規に投稿された記事については、こちらよりご覧ください。

GMOワールド|宗谷 敏

BASF社の挑戦とVentria社の漂流〜GMコムギとGM製薬イネ

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2006年6月19日

 米国Monsanto社、スイスSyngenta社に続きドイツBASF Plant Science社も、オーストラリアにおいてGMコムギ開発に参入した。一方、米国ではバイテクの巨人たちの咆吼をよそに、製薬イネ開発を目論むベンチャー企業Ventria Bioscience社の彷徨が続く。

参照記事1
TITLE: BASF Plant Science and Molecular Plant Breeding CRC agreement
SOURCE: Jobwerx
DATE: June 8, 2006

 2006年6月8日、BASF Plant Science社は、オーストラリアの分子植物育種協同研究センター(MPBCRC:The Molecular Plant Breeding Cooperative Research Centre)との共同研究開発プログラムを拡充し、干ばつ抵抗性と菌性の病気に抵抗性を持つコムギ品種の開発に取り組むと発表した。

 総予算規模は2800万豪州ドル(約1700万ユーロ)、期間は7年間を予定しており、BASF Plant Science社の持つ豊富な遺伝子情報と、MPBCRCが特許を持つGM技術が合体することになる。

 Monsanto社の除草剤耐性GMコムギは、激しい抵抗に遭い04年あえなく挫折した。Syngenta社は、フザリウム病に耐性を持つGMコムギでMonsanto社製より市場の受け入れに見込みがあると評され、スイスでの試験栽培に成功し、米国の市場調査を現在行っている(06.2.24. The Motley Fool)。

 菌抵抗性はSyngenta社とかぶるが、BASF-MPBCRC の干ばつ抵抗性は、先行する2社に比べさらに有望と考えられる。乾燥地帯であるオーストラリアの干ばつ被害は長期化しており、ヨーロッパでもコムギ生産に2桁台のパーセンテージで損失をもたらしている。さらに今年は米国も安泰ではない。国土の半分が干ばつ・異常乾燥状態にある(06.6.15. Agriculture Online)という。

参照記事2
TITLE: ‘Biopharmed’ Rice Reaps Resistance
SOURCE: AP, by Paul Elias
DATE: June 6, 2006

 もともとは母乳に含まれ、幼児の下痢疾患を止める2種類のヒトたんぱく質をGMイネで作る事業に取り組んでいるのは、カリフォルニア州サクラメントに本社を置く従業員数20名以下のVentria Bioscience社だ。

 過去2年にわたり、同社のこのプロジェクトは論争の的だった。カリフォルニア州は、日本などの輸出先の顔色を見て、Ventria社の州内試験栽培を拒否する。試験圃場のミズーリ州移転計画は、コメ産業大手のAnheuser-Busch社やRiceland Foods社からの強い抵抗と圧力に遭い、州政府の調停も入ったが結局頓挫する。

 しかし、Ventria社は屈しない。USDA(米国農務省)から、コメの商業生産がないノースカロライナ州での小規模試験栽培の認可を勝ち取る。さらにFDA(医薬食品局)へは、このGMコメを医薬品よりは認可申請手順が簡単な食品としての上市の認可を申請する。

 ノースカロライナ州の試験栽培も、無風ではなかった。Ventria社は、イネが自家受粉植物であり、収穫後の処理にも安全性に万全の注意を払うと主張したが、ETCグループなど環境保護団体からリスキービジネスと目の仇にされている。

 四面楚歌のVentria社だが、コメ産業を持たないカンザス州から救いの手が伸びた、と最近のニュースは伝えている。カンザス州政府の経済発展機構が誘致を持ちかけたのだ。

参照記事3
TITLE: Kansas opens arms to Ventria’s biotech rice
SOURCE: Sacramento Bee, by Jim Downing
DATE: June 13, 2006

 この誘致話が成功するかどうかはまだ分からない。しかし、これだけの激しい抵抗に遭いながら頑張るVentria社には、企業利益追求以外にも、固い信念があるとしか思えない。WHO(国連世界保健機構)によれば、途上国では年間約200万人の子供が下痢疾患で死んでいるのだ。

 BASF Plant Science社の耐干ばつ性GMコムギも、必要になったらいざ開発では間に合わない。GMイヤだ、農薬ダメだ、と言っていられたのは供給過剰時代の話だった、という時代が来るかもしれない。筆者は、“Semper paratus”という米国コーストガードのラテン語のモットーが好きである。英訳は“Always ready”、直訳は「備えあれば憂いなし」だが、意訳すれば「治に居て乱を忘れず」だろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

⇒ GMOワールド記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。

お知らせ

FOOCOM会員、執筆者がかかわる催し、講演(10/17)
<FOOCOM事務局よりのお願い> 「FOOCOM.NET」にアクセスいただきありがとうございます。私たちは201…【全文を読む】
FOOCOM.NET 会員募集 科学的根拠に基づく食情報を消費者に提供するために、ご協力ください。