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GMOワールド|宗谷 敏

インドのヒツジ大量死はBtワタが原因ってホント?〜GEACの議論

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2006年6月26日

 インドの一地方でBtコットンの葉を食したヒツジが大量死したというNGOの告発に対して、インド政府からのリアクションが出た。日本国内には、箸にも棒にも、いや楊枝にさえもかからぬロシアのRat Studyと抱き合わせで騒ぐ動きもあるようなので、今週はこれを検証してみよう。

参照記事1
TITLE: Mortality in sheep, goat after grazing on Bt cotton fields
SOURCE: The Hindu
DATE: May 21, 2006

 アンドラ・プラデシュ州内の一地域11の村を現地調査した結果、全体の25%、4つの村では収穫後のBtワタ畑に放牧されたヒツジとヤギの1500匹(以後の報道で1600から1800匹まで増大)が死んでいると2006年5月21日発表したのは、インドのNGO持続可能農業センター(the Centre for Sustainable Agriculture: CSA)である。

 地元大学での剖検の結果は、腸や肝臓などの内蔵に異常が見いだされるが、菌性の伝染病ではなく原因は不明とのことだった。CSAはBtワタが怪しいと主張する。これに対し、Monsanto-Mahyco社は、Btワタの家畜への飼養試験は行われており、飼料安全性に疑義はないと反論し、大量死が事実なら原因は殺虫剤の残留などではないかと推論する。

 6月中旬には、Btナスの商業化認可に反対していたGreenpeaceが格好の材料と飛びつき、政府にヒツジ大量死の原因解明を迫る(06.06.16. The Hindu)。しかし、これに先立ち5月22日に開催された第67回遺伝子工学承認委員会(the Genetic Engineering Approval Committee: GEAC)では、議題1-7で既にこの問題が取り上げられている。

参照記事2
TITLE: Decisions taken in the 67th Meeting of the Genetic Engineering Approval Committee held on 22.05.2006.
SOURCE: India’s Genetic Engineering Approval Committee (GEAC)
DATE: May 22, 2006

1.(遺伝子工学承認)委員会は、詳細にCSAの陳情を検討したが、この報告は科学的事実より噂を根拠としており、非常に誇張されているように思われるという意見が大勢を占めた。承認されたBtワタは、インドにおいて家畜飼料用途を含むバイオセーフティデータが評価されており、有害性は示されていない。

2.マウスに対し、Btタンパク経口投与した毒性試験においても、ネガティブな結果は示されていない。

3.同じく、Cry1Acをヤギに置き換えれば不可能なほどマウスに大量摂取させても結果は変わらない。

4.本件は、遺伝子組み換えレビュー委員会(Review Committee on Genetic Modification: RCGM)でも論じられており、科学技術省バイオテクノロジー局(Department of Biotechnology: DBT)に地元の獣医を支援することが勧められた。委員会は、NGOの主張に論理的結論が与えられるよう葉の毒性研究などを含む研究の促進をDBTに対し要請した。

 DBTの支援を受けたかどうかまでは書いていないが、地元州政府の獣医たちは、どうやら殺虫剤中毒の可能性が高いという結論に達した(疑われる農薬名も挙げられている)らしく、6月15日付のBiospectrumindiaは俄然元気がいい。珍しく米国も含む科学者たちからの厳しい積極行動主義者批判が目立つ内容だ。

参照記事3
TITLE: BT is not the culprit
SOURCE: Biospectrumindia
DATE: June 15, 2006

 「CSAのレポートは、ヒツジの死亡率のみでBtワタのタンパク質が原因であることを示唆する科学的証拠を持たない。CSAがそのレポートを予備だと称する間に、一般大衆を怖がらせることに対する良心の呵責を持っていない(既にお気づきだろうが、これはロシアのRat Studyと見事にまったく同じ構図である)。

 Bt農産物が家畜やヒトには無害であるという研究結果が世界中に多数存在するのに、CSAの主張には突っ込みどころが多数ある。例えば、この状況はなぜアンドラ・プラデシュ州に限定的なのか(筆者注:インド以外にもBtワタは8カ国で利用されている)? 反GM積極行動主義者は、彼らのイデオロギーのために、健康や環境に重要な利益を持つ農作物から人々を怖がらせて追い払うために局所的な無知を利用する。

 このような、理性がない宣伝を退けることは簡単だが、不幸にも彼らは恐れを一般大衆や政策当局に押しつけることが容易であると知っている。偽りを流布して、近代的な技術の利用を阻止することにより、彼らはインドの農民に大きな損害を与えている。」(部分抄訳終わり)

 本日の教訓:こと安全性に関して、科学者は概して口が重い。しかし、ホントに怒らせるとすごく怖い!(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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