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GMOワールド|宗谷 敏

慎重姿勢だが中味は濃い〜英国DEFRA共存の協議ペーパー

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2006年7月24日

 2006年7月20日、英国の環境・食品・農村地域省:DEFRA(Department for Environment, Food and Rural Affairs)は、GM作物と非GM作物栽培の共存に関する提案を公表、10月20日までの予定で意見公募などによる協議を開始した。

参照記事1
TITLE: Government opens GM crops consultation
SOURCE: DEFRA
DATE: Jul. 21, 2006

 共存法のためのフレームワーク策定に向けて第一歩を踏み出した訳だが、以下のIan Pearson環境大臣の発言に象徴されるように内容は慎重姿勢が目立つ。「09年以前に英国でGM作物が商業栽培されることはないだろう。なぜならEUの安全性評価(栽培)を終えたGM作物(英国では被害がない害虫抵抗性トウモロコシ)には、英国の必要条件に適したものがないからだ。この提案はGM作物への青信号ではない。

 しかし、もし英国の安全性基準を満たすGM作物が将来開発され栽培されるなら、完全な準備をしておく責任が我々にはある。厳密な隔離距離が必要とされる理由は、有機と在来作物栽培農家が財政的に損害を受けることなく、かつ人々がGMと非GM食品を選択できるようするためだ。」

 英国の各メディアがこぞって注目したのも、具体的数値が挙げられているGMと非GM作物との最低隔離距離だ。それらは、ナタネ35メートル、飼料用トウモロコシ80メートル、食品用トウモロコシ(スィートコーン)110メートルとされている。

 この数字の意味するところは、圃場におけるGM作物の交雑を0.3%以下に留めることだと説明されている。EUのGM食品表示規則は閾値0.9%までGMOの意図せざる混入を許す。種子や輸送段階でのコンタミネーションも考慮し、農家栽培段階での交雑を0.3%以下に押さえれば、非GM作物農家の産物は最終製品に対するGM食品表示を免れるだろうという計算だ。

 FSEs(農場規模評価)など長期にわたるGMOの環境影響を調査したDEFRAは、隔離距離と交雑率の関係にはかなり自信があるのだろう。しかし、以下に示すその他の重要な関連問題に対しては意見を求める形を取り、政府からの明確な方向性は示されていない。

1. GMと有機農作物の共存のために特別な規則が適用されるべきか
 有機農業の牙城であるThe Soil Association(英国土壌協会)は、圃場での交雑はゼロ、最終製品へのGM混入を0.1%にせよと主張して譲らない。政府は0.5%あたりを検討しているようだが、有機を特別扱いしない一律0.9%閾値のEU規則が存在するので、どのような数値であっても欧州委員会の承認が必要となる。

2. 非GM農家がGMの混入のために直面するかもしれない経済的損失補償のオプション
 政府補助、GM農家の互助的積み立て、保険などのオプションを含み、どの国でも共存論議の中心的論点である。一部のGM反対派はGM開発メーカーに対し損害賠償責任を求めている。

3. 共存に関係するすべてのGM作物の栽培場所を示す公共の記録が必要か
 今回の提案では、GM栽培農家は隔離距離を遵守し、必要なら近隣非GM農家に申し出るという義務事項(違反は最高英5000ポンド=約106万円の罰金)しか示されていない。GM圃場の公開は反対派の破壊活動を招くし、将来的に政府が全てのGM圃場を把握するのは不可能だろうというDEFRAの姿勢が見え隠れする。

4. 自発的なGMフリー地域の農民に対する指導
 欧州委員会は、法的な根拠を欠いても特定の地域の農家が自発的にGMフリーを採用することを決めるなら、GMフリー地域が可能であると確認している。しかし、現実的な実施に当たっては、本当にメリットがあるかどうかについて多角的に考察すべきだとDEFRAは問題提起している。

 姿勢は慎重ながら、PDFファイルで92ページに達するDEFRAの協議ペーパーは、なかなかの力作である。GMOに関する複雑なEUの法規制やフレームワークから、加盟国の共存政策の必要性までをキチンと解説した上で、英国において共存を実施するための様々な条件や選択肢、論点を提示した上で意見を求めている。

 この協議をDEFRAが意図したレベルに保つためには、意見を提出する側にもかなり高度な知識や学習が必要だろう。現実的にGM農産物のゼロトレランスはあり得ず、交雑を予防的、科学的に最少に押さえようという協議の目的自体を、GM開発企業に利する行為と警戒するGM反対派も多い。3カ月後の協議の結果が注目される。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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