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GMOワールド|宗谷 敏

7年後の逆転〜中国でBtワタ栽培農家の農薬使用量が増加

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2006年7月31日

 2006年7月25日、米国カリフォルニア州で開催されたthe American Agricultural Economics Association(アメリカ農業経済学協会)年次大会で、米国Cornell大学の研究者から、Btワタを栽培する中国の農家が、標的外害虫に対する農薬コストの増加と高価な種子価格により、Btワタ導入により当初得られていた経済的メリットを失いつつあるという調査結果が発表された。

 Btワタの長期にわたる農業経済に与える影響を調査しているのは、the Center for Chinese Agricultural Policy(中国農業政策センター)、the Chinese Academy of Science(中国科学アカデミー)とCornell大学の共同チームで、この研究は06年7月25日のNature誌にも掲載された。

参照記事1
TITLE: Transgenic cotton drives insect boom
SOURCE: nature.com
DATE: July 25, 2006

参照記事2
TITLE: Joint study shows genetically modified cotton less profitable in China
SOURCE: Xinhua
DATE: July 26, 2006

 遺伝子組み換えによりCotton Bollworm(オオタバコガ)に耐性を持たせたBtワタが中国に導入されたのは97年、米国に次いで早い採用であった。3年目の99年の調査では、Btワタ導入農家では、劇的に生産量が増加し、殺虫剤もスプレー回数が20回から7回に減った。その結果、71%に相当する1ヘクタール当たり43.3kgの殺虫剤削減が記録され、36%の農家収益増加となった(現在中国では370万ha、ワタ栽培面積の60%にBtワタが栽培されている)。

 ところが、7年後の04年、5つの州のワタ栽培農家481名への営農コストと農薬使用に関するインタビュー調査の結果、意外な事実が判明した。Btワタ標的外害虫、特にカスミカメムシ(mirids)の数が増加し、Btワタ導入農家でも殺虫剤のスプレー回数が18.22回なった。Btワタ導入以前は、オオタバコガを含め適用範囲の広い殺虫剤が使用されていたため、カスミカメムシの発生も押さえられていた。

 Btワタ栽培農家は、通常のワタ栽培農家に比べ標的害虫オオタバコガへの農薬は46%カットされるが、非標的害虫のために40%の農薬を使うのでこの優位はほぼ相殺され、さらにBtワタの種子価格は通常の種子より3倍高価なため、ネットの収入は通常のワタ栽培農家よりBtワタ栽培農家の方が8%少なくなってしまったという。

 しかし、データを提出した中国側の研究者からは、単年のデータに基づく結論を疑問視する声もある。04年は冷夏と多雨のため、ワタ以外の農作物でもカスミカメムシの異常発生を招いた。05年、06年には、Cornell大学が調査した同じワタの圃場でもカスミカメムシの数はずっと少なかったとコメントしている。

参照記事3
TITLE: China’s GM cotton profits are short-lived, says study
SOURCE: SciDev.Net
DATE: July 26, 2006

 殺虫剤使用の減少が標的外害虫の増加を招くことは確実視されていたが、栽培国、地域で害虫の種類や数などが異なるため影響の予測は難しかった。研究者たちも、この結果だけをもってBtワタに対し否定的な訳ではなく、むしろ農家がBtワタの栽培を止めてしまうことを懸念している。Btワタは、オオタバコガに対し依然極めて有効であるからだ。

 Btワタは中国以外にも、米国(4280万ha)、インド、アルゼンチン、インド及び南アフリカで栽培され世界のワタ生産の35%を占めており、研究者たちは注意深いモニタリングを呼びかけると共に、標的外害虫増加に対する予防策も示している。

 それらは、標的外害虫への天敵生物の利用、広い適用性を持つ第二世代Btワタの開発(Monsanto社からは、既にオオタバコガに加えアオムシ、ヨトウムシ類への耐性を併せ持つBollgard IIが販売されている)、米国で実施されている待避ゾーンの設置などである。

 Btコーンでも同じ問題が起きる可能性はあるし、ラウンドアップレディーダイズにも耐性雑草問題が南北アメリカで時々報じられる。モノカルチャー化のリスクは予想されても、目先の経済性が優先され無視されてしまう場合が多い。

 完全無欠な技術はないから、ベネフィットを長く享受するためには予見されるリスクに必要な予防対策を講じつつ持続的に利用されるべきであり、無警戒な乱用に対し警鐘を鳴らした今回の発表は意義があるだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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