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GMOワールド|宗谷 敏

それぞれの秋〜LLRICE601が与えたアジア稲作国への影響

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2006年11月6日

 2006年8月の米国におけるBayer CropScience社未承認GMコメLLRICE601の流出事故は、EUを中心とするコメ輸入国からの拒否反応を引き起こした。そして、それらはアジアのコメ輸出国に直接・間接的に影響を与えている。最近の報道からインド、タイ、中国の状況を眺めてみよう。

 もっとも過激な形で影響が表れているのはインドだ。06年10月29日、ハリアナ州では過激派農民組織the Bharatiya Kishan Union(BKU)に所属する農民約400名が、土壌を汚染し、既存のイネの品種に影響を与えるかもしれないと、害虫抵抗性GMイネ試験圃場を焼き払った。

 焼き討ちされた圃場では、政府の正式認可を得てMonsanto社の現地法人Mahyco社が、Bt Cry1Ac遺伝子を導入した短粒種のイネを試験栽培していた。同社は、7つの州の12のサイトで試験栽培が行っているという。ハリアナ州では、半分ほど進行していた実験成果が文字通り灰燼に帰したと同社担当者は嘆く。

 インドの輸出主力は05/06年に115万トン、6億7300万米ドルを占め、一般種より約3倍高価な長粒種のBasmati種であるが、EU、中東向けを中心に年間450〜500万トンのコメを輸出している。生産者のみならず輸出業者も当然GMコメにはナーバスだ。

 10月30日には、All-India Rice Exporters’ Association(AIREA)と代表的輸出業者が、BKUやGreenpeaceなどと同席してMahyco社のGMイネ試験栽培の全面凍結を求めるという異例の会見が開かれた。

 輸出業者とAIREAは、こう述べる。「我々はGMコメの0.06%という極少レベルが米国のコメ輸出ビジネスに停滞をもたらしたことにショックを受けた。我々はGM農産物についてのイデオロギーは持たないし、GMに対して反対でもない。しかし、実態経済では、1万に6粒の穀物の混入が輸出を破壊させることができるということだ」「インドのコメは今日GMフリーだが、インドの農産物に対するどんな疑いでも将来輸出と何百万もの農民に悲惨な影響を与えるかもしれない」

 世界一のコメ輸出国であるタイでも、輸出業者の反応は早かった。10月17日には、政府に対し、タイのコメに対する国際的信頼を維持するため、GMフリーであることを確認し、証明するよう要請する。政府がこれに失敗すれば、輸出市場を失う懸念があるというのだ。この裏には、輸出業者に対するEUからの圧力があった。

 この要請に対し、10月30日当局はタイ米がGMフリーだと断言する。その甲斐あってかタイの06年1月〜10月のコメ輸出は610万トン、20億6000万米ドルに達し、12月までに750万トン、23億4000万米ドルに届く勢いであるという。

 さて、9月5日、GreenpeaceとFriend of the Earthから、未承認害虫抵抗性GMコメ製品がヨーロッパで発見されたと告発された中国は、不気味に静かだ。Greenpeaceらもその後本件に関してはすっかり鳴りをひそめてしまった。
 そんな中で、政府に対しGMイネ商業化を認めるよう6年にわたって運動を続けている科学者の記事が目を引いた。GMワタの場合在来品種に対し農家はヘクタール当たり225ドル多くの利潤を得ており、GMイネも殺虫剤削減によってヘクタール当たり85ドルの増収が期待できるという。

 彼は、Greenpeaceの中国人の殆どがGM食品に反対するという世論調査結果は誤っていると批判する。GM食品を欲しがらないのは都市の一部富裕層であり、貧しい人々は価格が安ければGM食品の方を好むだろうと主張している。

 「食品があり余り人口も少ない富裕な国は、GM食品に疑いを抱くぜいたくが許されるし、有機農業も可能だ。しかし、有機農業の単位面積あたりの生産力はGMの約半分しかない。オランダなどとは違い、食べさせるべき13億人の人々を抱える中国では有機農業を国策に掲げる余裕はない。」

 以上3国それぞれではあるが、LLRICE601が浮き彫りにしたのは主食糧であるコメやコムギのGM商業化の難しさである。生産現場でのメリットは認められても、貿易段階でのハードルは依然高く、直接消費者への利益がある商品が本格的に登場するまでこの状況は変わらないのかもしれない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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