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GMOワールド|宗谷 敏

質的向上がないGM論争〜Egziabher 博士へ推進派から反論

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2006年11月20日

 途上国パワーを結集して米国を打ち破り、第27条「責任と救済」が現在論点となりつつあるバイオセーフティ(カルタヘナ)議定書を成立させた立て役者として、エチオピアのTewolde Berhan Gebre Egziabher博士はつとに名高い。博士は、最近米国に招かれて講演を行ったが、さすがにGMOの聖地、アウェーの米国ということで、Gmo AfricaのGMO推進派James Wachai氏から手痛く迎撃されている。

参照記事1
TITLE: An Ethiopian Scientist’s Take on Genetically Modified Crops
SOURCE: GMO Africa Blog
DATE: Nov. 12, 2006

 「先週二つのニュースの見出しが私の目を引いた。一つ目は、東部エチオピアの洪水で被害を受けた住民に食糧を空輸している米軍のキャンペーンに触れたAP通信の『米国は救助物資をエチオピアに送る』である。私はこの食糧援助物資は、すべて米国内で調達された調理用ダイズ油、豆乳、トウモロコシ粉、調理用トウモロコシ油であると思う。

 もう一つの見出しは、米国のCapital Pressで、『エチオピアの科学者が遺伝子工学を非難する』と叫んでいる。それは、エチオピアの科学者で遺伝子組み換え食品の厳しい批評家であるTewolde Berhan Gebre Egziabher博士へのインタビュー記事だった。

 Tewolde博士は、Ashton and Virginia O’Donnell Endowmentの後援で、米国に招かれ、ホイットマン大学とワシントン州立大学で講演を行った。私の意見を述べるためには、博士のインタビューのハイライトをここに記しておくことは重要だ。

・大規模な工業化された農場でうまく働く遺伝子工学のような農業技術は、途上国には適していない。

・遺伝子組み換え作物は伝統的農業を危険に陥れ、米国の商業農民の生活を脅かすかもしれない。

・遺伝子組み換え作物が栽培されれば、その土地の生物多様性を破壊する。

・遺伝子組み換え作物は、現在栽培されている農作物の非常に小さいパーセンテージを占めるに過ぎない。

 最初に、遺伝子組み換え作物に反対するTewolde博士の発言は、エチオピアの洪水被害者に対し米国政府が行いつつある食料援助の努力を念頭に置いた場合、不誠実な嘲笑だ。異常事態を除けば、米国国内法が全ての食料援助物資を米国農家から購入することを決めているのは公然の秘密であり、Tewolde博士もそれを知っている。

 故に、米軍が東部エチオピアに空輸しているすべてのトウモロコシとダイズは、米国農民が作り、たいていの米国人が口にしている遺伝子組み換えされたものだ。Tewolde博士は、遺伝子組み換え食品を批判しようと試みる一方で、彼自身の国で洪水被害者への食料援助を受け入れていることはちょっと不誠実である。人々は、Tewolde博士が、彼の国への米国からの食糧援助を全て拒絶することを期待しただろう。

 第二に、Tewolde博士がインタビューで、遺伝子組み換え食品の潜在的利益の可能性を正当に評価する人々をやりこめようと指摘した諸点は失敗している。Tewolde博士は農業遺伝子工学が工業国の大規模農家にしか適さないと主張する。彼は、今年8月に発表された南アフリカの小規模自作農家が、遺伝子組み換え作物から在来作物と同様の利益を得ているという研究調査結果に目を通すべきだ。

 Tewolde博士が述べる遺伝子組み換え作物が伝統的農業に脅威だという科学的調査は、どこにも存在しない。米国、カナダ、南アフリカ、アルゼンチン、中国もしくはスペインの農民が、遺伝子組み換え作物は有機農業を妨げなかったと、あなたに言うだろう。

 Tewolde博士は、自説の例証に大手バイオ工学企業からGMナタネの特許侵害で告訴されたカナダの農家Percy Schmeiserを挙げている。Schmeiser氏は、法定審理で特許侵害の有罪判決を受けている。だから、この例証は事実の徹底的なわい曲だ。

 Tewolde 博士が『遺伝子組み換え作物栽培は、現在世界の農作物の非常に小さいパーセンテージに過ぎない。」と主張することも同じく誤りだ。こいう過少な表現は、遺伝子組み換え作物の世界的な栽培面積を知らなかったとしか思えない。国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の最近の報告では、世界21カ国でおよそ2億エーカーの土地に遺伝子組み換え作物が栽培されている。

 Tewolde博士と彼の同調者は、遺伝子組み換え作物について真実を述べることを学ばなければならない。嘘は、それが何回繰り返されても、決して事実にはなりえない。」(記事の抄訳終わり)

 Egziabher博士側に不用意な発言内容があるのは事実だが、Wachai氏側にも多少強引さが目立つ。議論停滞の主因が反対派の古い情報への固執にあるのは事実だから、一歩後退はやむなしとして、もっと議論の質を上げなさい、である。反対派の歪曲も、対抗上なされる推進派の誇張も、もういい加減聞き飽きているのだから。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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