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GMOワールド|宗谷 敏

英国のホットポテト〜BASF社のGMジャガイモ試験栽培が認可

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2006年12月4日

 英国におけるドイツBASF社による耐病性GMジャガイモ試験栽培に関しては、2006年8月21日に同社からの申請が行われた時点で詳しく書いたので、そちらも併せて参照願いたい。12月1日の英国内メディアは、この申請が認可されたという話題を軒並み掲げた。

参照記事1
TITLE: GM potato trials given go-ahead
SOURCE: BBC
DATE: Dec. 1, 2006

 添付記事は、標準的内容のBBCである。環境・食糧・農村地域省(DEFRA:The Department for Environment, Food and Rural Affairs)は、自ら主催した9〜10月の公開討論会や独立組織の環境放出に関する諮問委員会(ACRE :Advisory Committee on Releases to the Environment)によるリスク評価を踏まえて、2007年春(BASF社の予定では3〜4月)から5年にわたるこの試験栽培を認可した。

 ジャガイモ疫病(potato late blight)に抵抗性を持つGMジャガイモの試験栽培が行われるのは、ケンブリッジシャーの国立農業植物学研究所(NIAB:The National Institute of Agricultural Botany)の圃場とダービーシャーにBASF社が用意した圃場の2カ所であり、最大1ヘクタールずつに作付けられる。

 総計45万粒ほどの種子が捲かれ、英国の気候風土に適したGM導入ジャガイモ品種が選別されるが、商業化までは10年程度を見込み、これら試験栽培されたGMジャガイモは食用・飼料用とはならず全量廃棄処分される。

 土壌協会、Friends of the EarthやGeneWatchなどのGM反対組織は、ジャガイモ農作物に対する交雑の脅威があり、GMジャガイモには消費者ニーズがないから試験栽培は壮大なムダだなどと一斉に抗議の声を上げている。しかし、上掲のBBCにもある通り土壌協会は、科学者サイドから「投資を行っている有機農業の収益性に対する脅威となりうるため、一般的な農業の進歩に反対するのだ」と反撃を食らっている。

 ところでGMジャガイモといえば、この方からのコメントを聞きたいのは人情だろう。メディアもそのへんの機微は十分心得ている。GMジャガイモにまつわる古典的神話のヒーロー、Arpad Pusztai博士の登場である。

参照記事2
TITLE: Scientist warns over GM potato trials
SOURCE: Independent, by Louise Hosie, Scottish Press Association
DATE: Dec. 2, 2006

 しかし、期待された博士のコメントには、ほとんど見るべきものがない。「GMジャガイモの試験栽培認可が大規模に行われるなら、交雑を避けることはほとんど不可能に近い」も「我々は有毒な効果を生むかもしれない不安定なゲノムを扱っており、それが食物連鎖に入れば大惨事を起こすかもしれない」も、仮想リスクに基づく反対派のごくありきたりな一般論でしかない。

 「GMジャガイモを大衆は買わないだろう。人々がそれを望まないなら止めることができる」は、別に科学者ではなくても出せる汎用コメントであり、「政府が大衆の否定的態度を変える目的で試験栽培を認可したのだろう」という推測のみで独自性を主張しているのでは寂しい限りだ。残念ながら、科学的にネガティブな根拠を示せない博士は、もはや過去の人である。

 ところで、耐病性GMジャガイモの陰に隠れてしまったが、もう1本違うGMジャガイモに関する記事が目に止まった。こちらも同じBASF社のGMジャガイモだが、2007年には早くも商業栽培されるのではないかという観測記事である。

参照記事3
TITLE: GM spuds to be commercialized in 2007
SOURCE: EurekAlert
DATE: Dec. 1, 2006

 通常のジャガイモがデンプン質してアミロペクチン(最大80%)とアミロース(約20%)を含むのに対し、このAmfloraジャガイモは、GM技術によりアミロペクチンのみを含み、製紙と接着剤生産用途に特化されている。当然、食用や飼料用には利用されない。

 欧州食品安全庁(EFSA:European Food Safety Agency)は既に肯定的意見を出しており、このGMジャガイモの域内栽培に対する欧州委員会からの提案は、専門家委員会によって12月4日に検討される予定になっている。欧州委員会のデフォルト認可となる可能性も含めて、もし認可されれば98年以来8年ぶり、04年から施行されたGMO栽培新規制下の初の承認となり、成り行きが注目される。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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