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GMOワールド|宗谷 敏

欧米か?〜グリーンピース・ジャパンのNon-GMOダイズインク騒動に思う

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2006年12月25日

 今年の日本におけるGM食品反対運動を眺めると、Irina Ermakovaおばさんを連れてきて自爆した遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン(いらキャン)と、運動の限界を見極めてさっさっと撤退してしまったらしい商売上手な食品とくらしの安全(旧日本子孫基金)に代わって、グリーンピース・ジャパンがなかなか元気だ。9月に無料配布を開始した「トゥルーフード・ガイド」は、無邪気な朝日新聞などのお力添えもあって6万部以上さばけていると聞く。

 「トゥルーフード・ガイド」とは、国内の食品企業に対し、アンケートと称してGM原材料の取り扱いや使用の有無を答えさせ、リスト化したものだ。GM原料を使用していると回答した企業には使わないよう「お願い」してみましょうと読者に勧めている。企業側から見れば、一種オトナのイジメだが、大小イジメは社会のどこにでもある。しかし、自らの主義主張に拘泥するあまり、限度を越えてはいけない。

 アンケートを送りつけられた一部の企業は、パニックに陥り食品企業の総本山食品産業センターに相談が殺到したため、センターは9月21日ホームページにGM食品に対する見解を公表するというオマケもついた。GM不使用を徹底しているからという理由のグリーンピース・ジャパンによる企業表彰というお祭り騒ぎも経て、「トゥルーフード・ガイド」は発行の運びとなった。

 しかし、10月30日付で、グリーンピース・ジャパンから読者宛に一通の手紙が届く。初版の裏表紙に「大豆インキ(遺伝子組み換えでない)を使用」と謳っていたのが、実はNon-GMOダイズが使用されていることを保証できないことが明らかになった、というものだ。

 この手紙には、印刷会社とインク提供先会社から読者への詫び状が添えられている。しかし、グリーンピース・ジャパンの遺伝子組み換え問題担当者アキコ・フリッド氏の文面には、読者に対するお詫びの言葉は一言もない。自分たちに非は一切なく、確認したのに裏切られたのだと言わんばかりの権高な「お知らせ」と「言い訳」に終始している。さらにご丁寧なことに、インク提供先会社に読者から出せと、Non-GMOダイズインクを使えという「お願い」のハガキまで添えられているのだ。

 欧米か? この論理や情報発信法は、スウェーデンでなら通用するかもしれないが、ここは日本である。グリーンピース・ジャパンは、先ず読者に謝りなさい。そして、これらの対応を見て筆者は著しく違和感を覚えた。Non-GMOダイズインクと普通のダイズインクの安全性になんの違いがあるのか?

 使用した製品の安全性に違いはないとするなら、これは完全に趣味の問題である。Non-GMOダイズインクが使いたければ、グリーンピース・ジャパンは、それが存在するとかいうオーストラリアから、自ら割り増し商品代金や輸送コストをかけて購入すればいいだけの話だろう。

 なぜ、インク提供先会社に対し、読者まで動員してNon-GMOダイズインクを使えなどと要求するのか? 食品の場合からも考えて、Non-GMOダイズインクはおそらく割高になるだろう。ダイズインクそのものが一般の印刷用インクに比べれば、既にして高価なものである。インク提供先会社は、その調達コストの上昇を、誰に転嫁すればいいのか? 全量グリーンピース・ジャパンが引き取り保証でもしない限り、これも立派な企業イジメである。

 グリーンピース・ジャパンは、食品企業に対してGM原料の使用を控えるよう「お願い」をしている訳だが、仮にこれらの企業が、表示と異なる原料を使用していたことが明らかになったら、その企業は迷わず製品回収を行うだろう。たとえ、それがタダで配った景品であっても、である。

 その原料の製造者や供給者に責任転嫁して責めるだけで、自らは一言の詫びもなく消費者に対する信頼を維持できるなどと考える食品製造企業はおそらく1社もないし、日本の食品ビジネスはそれほど甘くはないからだ。

 グリーンピース・ジャパンがGMダイズ由来のインクを避け得なかったように、経済性をある程度まで度外視してNon-GMOマーケットを志向する場合を除き、一部の食品企業にとっても今やGM原材料を避けては通れないのが現状である。自分ができもしなかったことを、他者に対して要求すべきではない。

 日本消費者連盟(日消連)などがいらキャンを立ち上げた96年当時、グリーンピース・ジャパンはこの問題に対して沈黙を守っていた。Greenpeace自体が国際的に派手なGM反対運動を展開していたのにもかかわらず、である。筆者は当時のグリーンピース・ジャパン事務局にその理由を尋ねたことがある。

 回答は極めて明快かつ率直であった。「日本では既に日消連などが活動を開始している。グリーンピース・ジャパンとしては、ほかの活動目標に手一杯の現状にあり、GM食品問題を十分に研究してモノ申すためには、財政的及び人材的余裕がない。」これはこれで一つの立派な英断であると、その時筆者は思った。

 執行部が替わったからか、本部からバジェットがついたのかは知らないが、グリーンピース・ジャパンは遅れてGMO論争に参画してきた。日本で、GM論争が進化しない理由の一つは、ろくなGM反対運動が育ってこなかったからだと考えていた筆者には、ある意味この遅れてきた青年であるグリーンピース・ジャパンへの期待もあった。

 しかし、グリーンピース・ジャパンホームページの「『遺伝子組み換え』をもっとよく知りたい!!」に目を通した時、筆者の期待は裏切られた。GMOは健康に予測不可能な悪影響を与える可能性があるという主張が明記してあるのだが、ハッキリ言って根拠が粗雑なのだ。あるいは、あまり知見を持たない一般消費者なら、この程度脅かしておけば、ま、いいか、などと考えているのであれば、それはあまりに失礼な態度といえよう。

 粗雑な一例を上げれば、これはダイズインクに関連しても述べ立てていたが「遺伝子組み換えダイズには、多量の除草剤が残留しています」とグリーンピース・ジャパンは言い切っている。しかし、厚生労働省のモニタリング検査でも、業界や企業が実施している残留農薬自主管理分析においても、遺伝子組み換えダイズ導入後、米国産ダイズの農薬残留が以前と比べて著しく多量となったという傾向は示されていない。

 「『遺伝子組み換え』をもっとよく知りたい!!」が、科学的根拠やデータを欠く「『遺伝子組み換え』をもっと誤解したい??」では困る。同時に、アンケートとかで自分の意にそぐわない回答を寄せたからと、この国のコンプライアンスを満たしている特定の企業をイジメることは止めていただきたい。責める対象が違うのではないでしょうか? そして、Non-GMOダイズインク騒動に見られた、読者まで動員して責任の所在を自分から逸らすような対応は、決して一般消費者からの支持を得られないことも学習していただきたい。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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