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GMOワールド|宗谷 敏

1億ヘクタール、1000万人を超えたが?ISAAA年次報告の品格

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2007年1月22日

 初春吉例国際アグリバイオ事業団(ISAAA)から、世界のバイテク農作物商業栽培状況2006年調査結果が1月18日に公表された。プレスリリースとサマリーおよびハイライトの構成は毎年お馴染みのスタイルだ。

 「世界のバイテク農作物商業栽培面積は、1億200万ヘクタール(2億5200万エーカー)に達し、昨05年の9000万ヘクタール(2億2200万エーカー)から13%増加した。商業化元年の96年以来連続二桁台の伸びを維持し60倍に達するとともに、ついに1億万ヘクタール(2億4700万エーカー)を突破した。

 バイテク農作物商業栽培国は、昨年の21カ国からスロバキア(トウモロコシ)が加わり22カ国に増えた。国別の栽培面積では、米国の5460万ヘクタール(1億3490万エーカー、世界総面積の53.5%)を筆頭に、アルゼンチン(同17.6%)、ブラジル(同10.9%)、カナダ(同5.9%)までは不動だが、5位に毎年7位からインド(同3.7%)が躍進し、6位に後退した前年5位の中国(同3.4%)を抜いた。なお、前年6位はパラグアイで、今年は7位となった。国別の伸び率ではインドと南アフリカの約3倍、フィリピンの2倍が突出している。

 全バイテク農作物栽培面積1億200万ヘクタールに占める作物別の割合では、大豆が57%の5860万ヘクタール、トウモロコシが25%の2520万ヘクタール、ワタが13%の1340万ヘクタール、ナタネが5%の480万ヘクタールであった。トレイト別では、除草剤耐性68%の6990万ヘクタール、害虫抵抗性19%の6990万ヘクタールを占め、複数のトレイトを併せ持つスタックは、13%の1310万ヘクタール(成長率30%)と報告されている。

 バイテク農作物を作付けた農家は、22カ国1030万人(05年度は21カ国850万人)であったが、その90%に相当する930万人は、中国(680万人)やインド(230万人)に代表される発展途上国の農家であった。途上国グループはバイテク作物栽培面積の40%を占めるに至り、バイテク農作物導入の成長率でも21%と、先進工業国の9%を凌いでいる。」(ISAAA報告の概要終わり)

 ある程度業界誌的性格も負わされているISAAA報告は、常にブル(雄牛=強気)のコメントを出すが、第二期の10年である2015年までに、約40カ国で2000万人の農家が2億ヘクタールのバイテク農作物を栽培するだろうと予測する。もちろんアジア、アフリカ諸国が、インドや南アフリカ並みに順調に伸びれば、これらは達成できない数字ではないが、収まらないのはGM反対派である。

 イケイケドンドンのISAAA報告は、世界中で広くカバーされるのでGM反対派にとっては目の上のたんこぶ、なんとか貶めてやりたい。という訳で、昨年からThe Africa Centre for Biosafety(南アフリカ共和国)とFriends of the Earth(英国)が、ISAAAにぶつける形で反論的色彩のレポートを準備している。

 今年も、ISAAA公表に先立つ1月8日、Who benefits from GM cropsという報告書をFriends of the Earthが公表した。スタイルまでISAAAを真似て、反感を露わにしている。ISAAA報告は誇大宣伝であり、GM採用国は偏っており、より有用な「第二世代GM」も一向に実現せず、GM品種の長期見通しは暗い、ガッカリだよという恨み節だ。昨年の二番煎じということで、発表当初は若干拾ったメディアもあったが、「途上国には役立たずのGM作物」という攻め口だった昨年ほどカバーはされなかった。

 一方、Greenpeace Internationalも負けてはならじとLLRICE601事件をクローズアップして、The Global Status of Genetically Engineered (GE) Crops-10 years of continuing rejectionという反ISAAA報告をリリースした。しかし、やや作戦ミスか自信過剰気味でISAAAの公表日当日にリリースをぶつけてしまったため、こちらの方はISAAA報告に蹴散らされた形となり、殆どのメディアに取り上げてもらえていない。

 ところで、1月18日のISAAA報告報道の二大メディアが、カバー率から考えてAPとReutersであることは異論がないだろう。実は、この2社が判で押したように両論併記の形をとり、APはFriends of the Earthを、ReutersはGreenpeaceを、引用したりコメントを掲載したりしている。筆者はメディアの安易な両論併記を嫌うが、それでもこれは両NGOのポイントである。

 なぜ、こうなるのか。LLRICE601も影を落としてはいるのだろうが、おそらくISAAA報告の論調は謙虚さに欠けるのだ。いくらデータに客観性があっても、大本営発表的なあまりに完全無欠なサクセスストーリーには、メディアも鼻白む。100%のベネフィットも、リスクもない。総論と各論は交通整理し、客観的に事態を冷静に見つめ、失敗と成功を各々双方が認め合い、等身大のGM像を抽出し、そこから議論を再構築しない限りGM論争はいつまでも不毛でありおそらく進化もしない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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